第三十話 「動き出す者達 中編」
「走り屋よ円を描くように移動してくれ。そして、頼むから静かに移動してくれ。決して地面の上を走るな。お前の巨体では全てをなぎ倒しかねん。」
わしは【気配探知】【空間認識強化】【視力強化】【自動地図】を使いながら村の周りを走り屋に乗って移動している。魔物達も走り屋をみると逃げていくので順調に地図が作成されていく。
わしが一人で走り屋に乗っているのは、ラルチェとアリスに各区の代表者達に明日の午後にわしの館へ来るようにと連絡してもらっているからじゃ。午前中が良いのだが皆朝から昼までは忙しいので会議は午後集まる事にしている。
途中傭兵達を見たが今は気にしないでおく。
そろそろ良いじゃろう。大体半径100kmの地図が完成した。
「走り屋よ。そろそろ戻るぞ。お疲れ様。」
「てやんでえ、べらぼうめ。何言ってやがる。こんなちんたら走っていたら逆に疲れちまう。
タケル。仕事が終わったんだろ、じゃ付き合え。ほら背中から前に移動しな、落ちねぇように抱えてやるよ。」
「待て、待つのじゃ走り屋。わしは地図を書かねばならん。まだしごぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
言い終わる前に走り屋はわしを片手で抱えてスピードを上げていく。【平衡感覚強化】も追加したがいつまで持つのじゃろう。
限界に近づいた時に走り屋が急に停止した。止まるのは有り難いがその衝撃でわしは胃の中の物を全て出してしまった。
「あぁぁ。ばっちいなぁぁ。しっかりしろよタケル。ホラ擦ってやっからよ。
おっ。そうだ。言い忘れていたが心友の証を装備すれば大分違うぞ。」
わしの背中を擦りながら走り屋が大事なことをサラッと言いおった。そういうことは早く言わんかい。
再生魔術で回復した後、ルル様とアルタの心友の証を装備した。走り屋についた汚れはいつの間にか消えていた。自然に汚れが落ちるのか、便利な体をしておる。
再度、走り屋に抱えられて走りにつき合わされた。
ふむ。今度は大分楽になった。余裕が出来るとある事に気付いた。どうやらわしは胸の谷間に挟まれながら抱えられているらしい。左右からの柔らかい弾力を楽しめる。時々、揺れて左右の胸に移動するが頂きには突起が無かった。
これは、研究せねばなるまい。人は目の前に謎が有れば解決せねば気が済まない生き物じゃ。
次の移動のタイミングに合わせて向きを変えてしっかり掴まった。頂には少しづれたが、それならば移動するだけじゃ。一心不乱に頂を目指して移動した。時間がかかったが何とか頂に到着する。
それでは調査開始じゃ。
まずは、美しい毛を退けて地肌を見るとそこには他の肌と違う色をした肌が合った。
やはりあったか。かなりの恥ずかしがり屋なのじゃな。可愛い奴め。
ピンク色した肌に【愛の伝道師】を使う。中々強情な奴よのぉ。
これは気合を入れねば、【龍の飛翔】を使い位置を調節しながらあらゆる角度で攻め立てた。
頭が出れば後は早かった、完全に姿を現しご対面をした。
ここは礼儀正しく挨拶をせねばならん。挨拶は人付き合いの基本じゃ。
時には優雅にやさしく接し、時には欧米人のようにスキンシップを激しくしていると急停止した。
今度はそれほどキツくなかったので周りの景色を見る余裕ができる。
周りを見ると木々が生い茂る森の中じゃった。
「はぁはぁはぁ。・・・・・タケル。責任取ってもらうぜ」
瞳を潤ませた走り屋は人型になるとわしに襲い掛かって来た。
抵抗できるわけもなく、わしは何度も攻められたり、攻め返したたりと時間を忘れて繰り広げた。
全身ツヤツヤした走り屋に乗り屋敷に戻るとラルチェとアリスは満面の笑みを浮かべて迎えてくれた。
「ただいま。ラルチェとアリス。代表者達はどうじゃ。」
「おかえりなさい~。タケル様~。ご飯の前にお風呂です~」
「おかえりなさい。タケル様。皆さん大丈夫です。」
わしは笑顔のラルチェとアリスに左右の腕を取られて風呂場へ連行された。
あれ。怒っている? まさかバレたのか。ちゃんと生活魔法で綺麗にしたぞ。
風呂場に着くと服を破るように脱がされて二人掛りで乱暴に洗われる。
「痛いぞ。二人とも。もっと優しくしてくれ。」
「あらあら。節操なしの殿方にはこれぐらいでもまだ優しいですわ。ねぇ、ラルチェ。」
「はいです~。私たちをのけ者にして~。楽しかったですか~。タケル様~。」
笑顔なのに目が笑っていない。これは、怒った顔よりも怖いかもしれん。ものすごい威圧感がある。
ここは威厳を示さねばなるまい。彼女達の足腰が立たぬまで威厳を示し続けた。
わしらは風呂を出ると冷めた夕飯を食べて、疲れた体を癒すためにベッドに入るとアルタがいた。
最悪時に限って神々が来るのは何でだろうと思いながらもアルタが甘えて来たのでわしは戦った。
わしとアルタの壮絶な戦いに感化されたのかラルチェとアリスも参戦したので気が付くと夜が明けていた。
昨日調べた地図は代表者達が訪問する前に書き終えんじゃろう。
これから忙しくなるのは予想される。完成するのはギルド問題が解決した後じゃろうな。
【自動地図】は本人しか見えず他の者との共有が出来ない。共有するには地図を書かなければいけない。この世界には【自動地図】を元に自動で書く魔道具は無いので全て手書きらしい。書く者のセンスが問われるので完璧な地図は少なく、完璧な地図は国で管理している。
結局、昨日は歪ながらも半径500km位の広範囲の地図がわしの中で出来ていたのでかなりの時間がかかるじゃろう。
疲れた体に再生魔術で無理やり回復してから皆にも再生魔術をかけて起こした。
全員でベッドを出るとアルタの眷属に風呂へ案内された。
風呂は大きく、10人位は入れるので4人ではまだまだ余裕がある。その間にアルタの眷属達が朝食を作ってくれた。
アルタは疲れ知らずで風呂の中でも始めようとしたのがさすがに諌めた。
風呂を出ると眷属達と一緒にみんなで朝食を食べ、少しだけ雑談するとアルタ達は帰って行った。
アルタは聞き分けがあって助かる。ルル様とたまもちゃんではこうはいかんじゃろう。
午後になると各区の代表者達が来たので会議を始める。
そこで驚いたのは殆んどの者がギルドを知らなかった事じゃ。
考えてみれば開拓してから200年、村にギルドが無ければ知らない者が居てもおかしくはない。
わしは1からギルドの説明をしてからこれからの村について議論を進めた。
議論は激しさを増して最終的に3つに割れた。
村の発展を喜ぶ賛成派、治安の悪化や環境の変化を嫌う反対派。どちらでも良い中立派の3つじゃ。わしが勝手に決めても良いのじゃが村人が決めるのが一番良いじゃろう。
夕方になったのでそろそろ会議を終わらせることにした。
「皆の者。落ち着け。今日は終わりにしよう。何名かはもう少し頭を冷やせ。
皆は各区の村人たちに今回の事を説明して3日後の午後までに意見を纏めてから続きをするぞ。
4日後の午後は村人全員で湖に来てもらう。大人も子供も関係ない全員じゃ。
そこで賛成と反対の多数決を取って決めるぞ。どちらでも良いはダメじゃ。
わしも明日からは村を回り村人たちには説明するが皆もなるべく多くの者に説明をしてくれ。
それでは解散じゃ。」
館を出ると皆走って帰って行った。今晩から酒場で様々な議論が交わされるじゃろう。
どんな結果になっても村人達には良い刺激になる。
5日後が楽しみじゃ。
翌日の朝からわしは、ラルチェとアリスを連れて村を回った。村人に出合うたびに質問を受けた。
「村が乗っ取られるのですか」「金持ちに成れるのですか」「平和は保たれればどうでもいい」など様々な意見が聞けた。
中には「どうしたら美人をはべらかせるのですか」などモテる秘訣を聞かれたので「全ては努力じゃ」と答えた。皆「おぉぉ。」「なるほど」と感心していたが、中には「あんた。もっと努力をして私と子供たちを幸せにしな」と嫁に手綱をひられる男もいた。
わしの気分を害したのは、「ラルチェさんの牛乳を直に飲みたい」「ラルチェさん・アリスさん頼むから今度の祭りの時に相手をしてくれ」と土下座をして頼む男達にじゃ。その数があまりにも多かったのにはびっくりした。杖に突いている老人までアリスに土下座していたのを見ると流石は夜の魔女だけある。
当然、土下座した者達は土魔法を使い穴を掘って落としてやった。埋もれないだけ有り難いと思え。
必死に這い上がる男たちを奥さんや恋人なのかわからんが女達が上から土や石を投げている。
「死ぬ。浮気者。」
「あんた。何考えてるの。恥知らず!!」
「バカ。いてぇだろ。止めろ。それ石だぞ。やめてくれぇぇ。」
「い~か~ん。本当に~死んで~しまう~。」
人の女に手を出した罰じゃ。ざまぁみろと思っているとラルチェとアリスがわしの腕に絡めてきた。
「フフ。タケル様。わたしとラルチェって結構モテるんですよ。」
「ヤキモチをやく~。タケル様~。かわいいです~。」
左右の腕に絡められて逃げられないので黙って歩くことにした。今は何を言ってもからかわれるだけじゃ。ここは黙って時間が過ぎるのを待つしかあるまい。
勝ち誇っている二人は後で覚えておれ。その笑みを別の笑みに変えてやるわい。
2日後の夕方、屋敷に戻る時に傭兵達に出合った。傭兵達は村の外から戻るところで偶然を装っていた。
わしは【気配探知】で村の外をウロウロしている団体に気付いていたので偶然ではない事は知っている。
顔に出すのはまだ早いので、知らぬ顔で対応した。
「これは、タケル様。今お戻りですか。俺達も今、外から戻ってきた処です。
タケル様は領主様ではなくまとめ役だそうで、村人に聞いたら酒場にも顔を出すと聞いています。
俺達はこれから飲みに行こうかと思っていたので良かったらタケル様もご一緒にどうですか。
治癒のお礼もありますので支払いはこちらでと言いたいのですが・・・・ギルドが無いので手持ちの金も少なく高い酒は難しいですがいかがでしようか。」
「うむ。誘いは有り難いが、今晩は予定があるので明日の午前中に館で話そうではないか。
そちらも積もる話があるのじゃろう。色々と面白い話が聞けるのを楽しみにしているぞ。」
わしの言葉に何人かは一瞬だけ眉をひそめたが笑顔で別れを告げて宿に帰って行った。
「タケル様。よろしいのですか?」
「大丈夫ですか?」
「うむ。二人とも安心しろ。館の中では何もできまい。それに商業ギルドの思惑も知りたい。
二人とも明日の朝は早く起きて貰うぞ。」
「はい。かしこまりました。でも、今晩は控えめにでも可愛がってくださいね。」
「任せて下さい~。タケル様~。朝でも問題ないですよ~。」
ラルチェはムリじゃな。いつもより起こすのに苦労するじゃろう。今日は早く寝るとするか。
夕食を済ませると早々に風呂に入り、寝室に向かった。
寝室に入ると・・・・・七色に輝く美女が・・・・・居た。
なんで・・・居るのじゃ。
本当に最悪なタイミングで神々がいるのはなんでじゃろうと唄いたくなる。
無駄と思うが事情を話して早く寝ることをお願いした。
「話は分かりました。ラルチェとアリスは外してもらいますよ。タケルいらっしゃい。」
全然判ってないぞ!ルル様。ラルチェとアリスを外すとは、これは本気じゃな。
傭兵達か来るまでに満足すれば良いが、うむ、時間が足りん初めから全力で行かねばなるまい。
わしは意を決してルル様に向けて空中ダイブをした。
ルル様に到着するタイミングに合わせたかのように扉が閉まった。何たる連携じゃ、ラルチェとアリスは部屋出て行く間が素晴らしい。
ラルチェとアリスは朝食を食べ終わった頃、傭兵達が訊ねて来た。
もう少しで満足するルル様が邪魔された事に怒り、わしを抱えながら玄関に向かった。
怒りをあらわにしたルル様が玄関を開けると全員を睨みつけて額の宝石が輝いた。
輝きが止むと傭兵達は目の色が失わせて微動出せず固まっていた。
傭兵達も玄関を開けると全裸のわしを抱えたやはり全裸のルル様が居たのでさぞ驚いたであろう。
一瞬で宝石が輝いたので記憶に残っているかは怪しいが。
ルル様は眷属を呼んで傭兵達を応接間に運ばせて、自分はわしを抱えて寝室へ帰って行った。
寝室に極級時魔法を部屋にかけてから入った。
これで外の時間は一瞬なのに中の時間は1年は過ごせる。しかも肉体は時間が止まったように老化しなければ疲れもしないので寿命や過労で死ぬ事はない。傷でHP0にならない限り死ぬ事はない。どこかの戦闘民族が聞いたら生唾物じゃろう。神級になれば数百年から数千年も過ごせるらしい。
ちなみにこの魔法に気付いたアルタ・たまもちゃんやその他の女神達が次々に乱入して来て、何十柱もお相手した。
幼女から老女の腹が膨らむ姿を見て壮観と思えるほどわしは変態ではない。
幼女の容姿をしていても何億年も生きているのでロリではないのじゃが心が痛む。
老女と言っても100歳位の容姿なので151歳のわしからしたら50歳も若い。何も問題ないくお相手できる。
壮絶な戦いの後、扉を出るとラルチェ、アリスとルル様の眷属達が待っていた。
「どうしたのですか。タケル様。お疲れの様ですが。」
「大丈夫ですか~。タケル様~。そんなに頑張ったのですか~。」
ラルチェとアリスには判るまい、壮絶な1年じゃったのはわしの心に留めておこう。
決意をしていると後ろからルル様に抱き着かれた。
「それではタケル。わたしは帰ります。
先程の者達は1~2時間くらいで元に戻りますので安心して下さい。
今の状態なら嘘を付けないのと宝石の輝きから元に戻るまでの記憶もありません。
では、さようなら。タケル。」
ルル様は濃厚なキスを残して眷属と共に消えて行った。
わしは、二人を連れて応接間に入った。
誰も返事をしなかったが傭兵達は顔だけは向けている。
相変わらず、目には力がなく硬直しながら座っている。
こやつらに・・ロボットダンスさせたらうまいかもしれん。
下らない事を考える前にこやつ等の正体を聞かねば。
わしは、傭兵達に様々な質問して目的や考えを聞いてまわった。




