第二十七話 「日常の一コマ」
わしの1日はアリスのキスから始まる。
「おはよう。アリス。愛しているぞ。」
「おはようございます。タケル様。私もです。」
アリスが1番早く起きて朝食の準備が出来るとわしを起こす。
成人前はわしが1番じゃったが、成人後はわしより遅く起きるのは恥と思っているのか、早く起きるように努力していた。
その事を察したわしは早く起きても2度寝するようにしてアリスのプライドを刺激しないようにした。
わしの為に努力してくれる女は大切にしないといかん。
ラルチェは相変わらず朝が弱い。
仕方がないのでわしとアリスがラルチェを毎朝起こしている。
わしはラルチェの頭から、アリスは下からラルチェを起こそうとする。
うまい。やはり、目覚めの一杯はラルチェの牛乳にかぎるな。
わしとアリスが夢中になって吸っているとラルチェが起きだす。
「おはよう。ラルチェ。」
「おはよう。お寝坊さんのラルチェ。」
「おはよう~ございます~。ダメですよ~。力が入りません~。」
わしらは、一汗かいたので生活魔法を使い体を綺麗にしてから下に降りた。
朝食はアリスが担当している。夜はラルチェがメインでアリスがサポートで作る。
この世界は1日2食で1食がとても多く朝でもガッツリ肉を食べる。
アリスも慣れたモノで朝食が冷めない様に火を調節してからわしらを起こすので下に降りるとすぐに食事が食べられた。
もし、鍋があふれて火がついてもゴーレムがすぐ消火するので館が火事になる事はないじゃろう。
ゴーレムと言えば、レシピがあれば料理も作れる。
二人を楽にさせようとラルチェ&アリスに料理のレシピを聞いたら、断られた。
「結構です。タケル様の食事は私たちが作ります。それとも私たちの料理が不満ですか。」
「ダメ~です~。ご飯はわたしとアリスちゃんで作るです~。」
アリスに逆ギレされて、ラルチェは何故かわしの頭を掴み自分の牛乳を吸わせようとする。
力はラルチェが格段に強いので抗えずに赤ちゃんが母親におっぱいを貰うように抱きかかえられてわしはラルチェの牛乳を直接飲んだ。
それを見たアリスは怒りが収まったのか笑顔でわしの頭を撫でている。
なにこれ・・・・・恥ずかしい・・・。
あいかわらずラルチェの行動は読めん・・・いい加減、離してほしいが口が塞がっているので声が出ない。うぅぅぅぅ・・・・死にたい。
今日の食事はラルチェの牛乳、野菜と肉がたっぷり入ったスープ、焼きたての白パンじゃ。
野菜は村人たちが持って来てくれて、肉は祭りの残りを使用している。
この世界には冷蔵庫が無いので大きい家の地下に倉庫がある。祭りで残った食料はそこに仕舞っている。
領主だけあって小麦が保存されていて、白パンが食べられた。
村人が普段食べるのは、黒っぽい色をしている黒パンで祭りの時だけ白パンが食べられるらしい。
3人で雑談をしながらうまい食事を終えるとわし以外は席を立った。
わしは裁判者のゴーレム達を呼び、報告を受ける。
「問題ありません。」と簡潔に報告をして屋敷の掃除に戻っていった。
窓の外を見ると井戸の近くでアリスが食器を洗い、ラルチェは洗濯をしていた。
この世界にブラが無いので下着と言えばカボチャパンツなのだが、干されている下着は七色に輝くフンドシだった。わしのも含めて3枚干されている。フンドシの長さはかなり短いのでトイレが楽だと女性陣もするようになった。
洗い物と洗濯が終わるのを待ってわしらは村の外へ向かった。
途中、村人に会うと皆手を止めて頭を下げてくる。
「手を止めなくても良い」と言ってもわしらが通り過ぎるまで頭を上げなかった。
どうやら村人達はわしの事を開拓者の英雄の再来として見られているのかもしれんな。
村から2時間位の所に草原があるので特訓の準備を始める。
訓練の前に【気配探知】を使い魔物がいない事を確認してから始めた。
最初は、魔法無しで戦うことにした。
タケル&アリス VS ラルチェ
わしはハリセンと盾を構えた。
装備は、消音と回復力アップが付いたフルアーマーなので静かに動ける。
昔、九尾鞭でラルチェを縛ったら逆に引っ張られてカウンターを受けたことがあるので今回はハリセンにした。ラルチェの力を侮ると痛い目にあう。
アリスは刃物付魔法杖を両手で構えている。刃の部分は片刃で少しそっている。
まるで薙刀じゃな。力が弱いアリスにうってつけの武器じゃ。
装備は、如何にも魔女のイメージがある黒い三角帽子。全体的に黒くで胸元が大きく開きているドレス。胸元だけ白のレースをふんだんに使用していて、両サイドには深いスリットが入っている。
スリットから見えるガーターベルトは網目模様のストッキングを押さえていた。
足にフィットしているブーツは膝まで伸びていた。
ラルチェは大楯と複合槍を装備している。
複合槍とは、複数の武器を付けた槍の事じゃ。取り付けた武器が増える程、戦略が広がるが総重量も増すので力自慢の者しか使えない。
ラルチェが持つのは、その中でも最も重い組み合わなのだが片手で軽々と扱ってしまう。
切っ先はランスのようは円錐型をしている。右側は肉叩きを大きくした様な大槌が左側は肉厚の大斧が付いている。
装備は、ビキニアーマーとブーツとマントだけじゃった。
元々、女性部分以外は硬いが滑らかな肌をしているので下手な鎧よりも防御力がある。
防御が弱い部分だけ装備すると自然とビキニアーマーになる。
お互い5m位距離を置いた所で戦いが始まった。
わしらは一斉にラルチェに向かって走った。
リーチが長い分懐に入ればこちらが有利じゃ。
わしらを迎え撃つラルチェは複合槍をブルブルと回しながら構えている。
回るたびに大きな音と草が飛びちっている。
はっきり言って怖い、巨大な扇風機の中に入る様な錯覚に陥る。
いかん、意識をしっかりせねば、走りながら光属性をハリセンに貯めて行く。
アリスは作戦通り、距離をおいて走っているのを確認出来たので速度を上げる。
ラルチェの武器の攻撃範囲のギリギリで自分の盾の表面をハリセンで叩いた。
爽快な音と共に閃光が辺りを埋め尽くした。
閃光は一瞬で終わり、ラルチェを見ると盾で顔を隠していた。
読まれていたようで、わしは盾を構えながら懐に入ろうとした。
ラルチェは迎え撃つ為、大槌の部分をわしに向けて複合槍を横に振った。
【危険察知】が危険を告げたので咄嗟に前転をした、わしの頭の上を轟音と共に大槌が通過した。
これで懐に入れたと思いながら前転からスピードを殺さずに立ち上がると目の前には大楯が迫っていた。
盾同士の激突・・・・勝ったのはラルチェだった。
わしは吹き飛ばされたがその勢いを利用して後転しながら素早く立ち上がり距離を取った。
一瞬遅くわしが居た場所には大槌の部分が大地に埋まっていた。
ふぅ。危なかったわい。いくらスピードを加えてもラルチェの筋力には勝てなかった。
体重ではないぞ・・昔、ボソッと重いと言ったらラルチェに聞かれて一晩中泣かれてしまったのでこういった場合は、体重ではなく筋肉が凄い事にしている。
「キャー~。痛いです~。参りました~。」
「ラルチェごめんね。タケル様、ラルチェに再生魔術をお願いします。」
どうやら作戦がうまく行ったようじゃな。
閃光に包まれた時にアリスは繁みに隠れてスキをうかがっていた。
ラルチェもわしを吹っ飛ばしてから周りを警戒すればよかったのじゃが、
まずは一番脅威のわしを倒したかったのじゃろう、追い打ちをかけてしまった。
そこを背後からアリスに襲われて負けてしまった。
しかし、魔法なしだとラルチェを相手にするのは二人がかりになる。
強くなったのは嬉しいがわしの威厳が下がるのは避けねばなるまい。
ラルチェの傷を癒しながら今回の戦いの反省会をした。
それから4回戦い、3勝2敗で何とか勝ち越した。
・・ふぅ。正直危なかったわい。最後はギリギリじゃった。
次は、魔法魔法を使用しての訓練じゃが、休憩をすることにした。
わしはラルチェに生活魔法で綺麗にしてからビキニを外して鍋に搾った。
「タケル様~。いっぱい絞ってください~。張ってしまうと動きずらいので~。」
アリスも加わり絞っているが、わしよりも力を入れていて目がすこし怖かった。
鍋を温めながら固形の蜜を入れる。
温まった所でコップに注いで皆で飲んだ。
うむ。うまい。疲れた後の甘いものはありがたい。
皆で雑談していると【気配探知】に魔物が現れた。
魔物の数は、1体で高速でこちらに向かっている。
後30分くらいで到着するじゃう。
その事を二人に伝えて戦いの準備を始める。
わしとアリスは地面に魔法陣を書いて、いつでも攻撃できるように準備をした。
わしは、基本の6属性と無属性を中級まで書き、アリスは闇・水・時の上級を複数書いた。発動は全てアリスが出来るようにした。
ラルチェはストレッチをしていた。
準備が出来た頃、魔物が肉眼でも確認できるようになった。
【視力強化】を使い、看破&鑑定をした。
ーーー看破&鑑定ーーー
魔物 種族:魔鳥族 種:人鳥魔鳥 属性:地・水・風
Lv.62
HP:4800
MP:4500
SP:4300
【能力】【陸海空潜水】Lv.60
【物理攻撃耐性】Lv.55 【魔法攻撃耐性】Lv.55
【アイテム】人鳥魔鳥の卵
ーーーーーーーーーーー
巨大なペンギンが空を飛んでいる。イヤ、【能力】で空中を泳いでいるのじゃろう。
それにしても早い、土の中も同じスピードで動かれると厄介じゃな。
なんじゃと卵を持っているのかそれはまずいぞ。
人鳥魔鳥は卵を産むと抱えてこみ、雛が生まれるので泳ぎ続けるのじゃったな。
しかも、集団で泳ぐので間違って攻撃すると数百羽~数千羽に襲われる。
瞬殺したいが耐性を持っているので倒すのも時間がかかる。
【気配探知】を最大限にして群れかはぐれかを確認した。
反応がなかったので、はぐれの様じゃ。これで安心して倒せる。
人鳥魔鳥はわしらに気付き、アリスに向かって襲い掛かった。
ラルチェが【筋力強化】【移動速度強化】【物理攻撃耐性】を使い大楯を構えて、アリスの前に出る。
わしはラルチェに中級光魔法を使い身体能力を上げた。
アリスは魔法陣を起動させて攻撃をした。
魔法陣からの魔法は次々に命中したが人鳥魔鳥のスピードが減速するだけで落ちなかった。
ラルチェは複合槍をスパイクの様に地面に固定して迎え撃つ。
人鳥魔鳥とラルチェがぶつかり合い、力比べになった。
複合槍は嘴の下の所に刺さっているだけで奥まで届いていない。
ラルチェは複合槍を離して大楯に集中した。
お互いが押し合い、力が拮抗している。
わしはその隙に人鳥魔鳥を九尾鞭で縛り上げる。
【龍の威嚇】も使ったが効果がなかった。
両方の翼が縛られてやっと地面に落ちた。
アリスは上級時魔法を何度も使って人鳥魔鳥の動きを遅くする。
わしは解かれないようにする為、ラルチェを呼び鞭を持たせた。
ハリセンに火属性を込めて何度も何度も人鳥魔鳥の額を叩く。
暫らくするとアリスが上級空間魔法を使い人鳥魔鳥を閉じ込めることに成功した。
それにより、ラルチェが攻撃に加わり、大槌と大斧を交互に頭に叩きつけている。
ラルチェが攻撃をするたびに明らかに弱まっているのがわかる。
このままではわしだけ活躍していない様にみられてしまう。
焦ったわしは、人鳥魔鳥の額に両手を押し付けて、中級火魔法を高めていく、イメージはドリルじゃ。
「わしのドリルは全てを貫くドリルじゃゃゃゃゃ!!」
大声を上げて炎のドリルを出すと額を削っていく、わしはさらに魔力を込めて出力を上げていった。
甲高い音が響き渡っている。
どれ位経ったかわからんが甲高い音が止んだ。
「ラルチェ!アリス!離れろ!!」
わしの声に瞬時に反応して人鳥魔鳥から離れると同時に人鳥魔鳥は内側から燃やされていく。
熱いのを我慢して炎のドリルに魔力を込め続けた。
人鳥魔鳥も火の中泳げない様で、火の鳥になり・・・・そして・・・焼き鳥になって死んでいった。
わしらは剥ぎ取る前に休憩することにした。
幸い、アリスの時魔法と空間魔法のお蔭でしばらく消えることがない。
先程の休憩で残った蜜入り牛乳をみんなで飲んで疲労を回復させた。
剥ぎ取りが出来たのは嘴と卵だけだった。それ以外は焦げがひどくボロボロで使い物にならなかった。
いかん、やり過ぎてしまった。
空間魔法で閉じ込めのだから、いくらでもやりようがあったはずなのに・・・。
落ち込んでいるとラルチェとアリスが近づいてきて。
「流石はタケル様です。人鳥魔鳥を丸焼きにするなんて普通は出来ませんよ。」
「すごいです~。魔法攻撃耐性の魔物を燃やすなんて~」
「・・・・・二人ともありがとう。」
わしは感謝の気持ちを込めて今晩はサービスをすることを心に誓った。
装飾品よりも体で返すのが一番じゃ。
今宵のわしは一味違うぞ!覚悟しろラルチェ&アリス。
ちなみに巨大な卵はいつの間にか現れた運び屋が運びたそうにしていたので館まで運ばせた。




