第六章 嫁姑親睦会
ソファの隣で床に正座をし、上から峰子の刺すような視線を浴びせられる。冬司は気にせず、何か飲むかい?と声をかけてくれる。
「……あ、じゃあコーヒーでも戴こうかな……」
「コーヒーだね!了解!」
鼻歌を歌いながらインスタントのコーヒーを作り、両手にコップを携え戻ってきてから、あれ、君誠一の新しいお嫁さんじゃん!と言われた。どうやら今頃気づいたらしい。
「名前なんだっけ?」
「立希です」
「タヌキ?」
「タツキです」
前回と同じようなやり取りの後、黙って正座し続ける立希に向かって峰子は嫌味たっぷりに、
「狸でももう少し上手に家に入ってくるもんやけどなぁ。言葉発せへんてことは、ほんまに狸に化かされてるんやろか」
「か、勝手に入って申し訳ございませんでしたー!」
土下座する勢いで謝り倒す。いつもより峰子が怒っているように感じるため、怖くて顔があげられない。さっきのは見られたくなかったのか。
「いいじゃない峰子ちゃん。これから家族になる娘でしょう?もっと見てもらおうよ!」
「貴方は黙っておくれやす。ほんま、人の家にズカズカ入ってきて覗き見とはどんな神経しとるんやろか。……まぁ、念のため、一応聞いとくけどな。何か見たか?」
「え?」
「何か見たんかって訊いとるんや。見てへんな?」
凄む峰子。立希は馬鹿正直に、
「お二人が仲睦まじく抱き合っておられるのを……」
峰子の両目がキィィッと吊り上がり、顔を真っ赤にさせ忘れよし!!と叫んだ。立希は怯みながらも、
「そんなに恥ずかしいですか?私は素敵だと思いますよ」そう言うと冬司も、
「ホラこう言ってくれてる。僕はもっとラブラブしたいのに峰子ちゃんは人前では嫌やって言ってなかなかさせてくれないんだもん。寂しいよ」
「あんさんらがおかしいだけです!!あんな醜態、藤龍の女将の威厳っちゅうもんがなぁ……」
くどくどと話し出すが立希の耳にはもう入ってこない。今まで見たことのなかった人間味のある峰子の姿に、思わず笑みが溢れる。
「何が可笑しいんや」
ビシッと背筋を伸ばし、いえ、すみませんとすぐ謝った。その様子を見て冬司が、
「峰子ちゃん、立希ちゃんと仲悪いのかい?」
「……そんなことないです。仲良うしたいと思てます」
オホホ、と口に手を添え笑う峰子。
「ただ、女の子とどんな風に接したらええのかわからんのです。うちは男の子の一人っ子やったし。立希さんは、お母さんとどんな風に過ごしてきたん?」
そう訊かれ、答えに窮する。内心焦りながら、
「ショッピングとか……?ランチしたり、恋バナを少々。なんちゃって」
「いいじゃない!二人で行ってきたらいいさ!これを機に、親睦が深まるといいね!」
冬司は爽やかな笑顔で言い、峰子は嫌そうな目を崩さず口元のみで笑みを見せる。冬司の言うことには逆らわないのか、提案を否定しない。
そんなわけで、あれよあれよといううちに峰子とのランチショッピングが2日後に開催されることとなった。




