第五章 禁断の密会
立希は歩きながら考える。これで、彩さんとの結婚に関するわだかまりは解消された。最初に、この計画は『在るべき場所に戻すこと』、『奪われないようにすること』と言っていた。あれは、元々両想いの彩さんと六郎さんを結びつける、という意味での在るべき場所へ戻す、ということだったのだ。
そして奪われないようにする、というのは、峰子さん率いる西園寺家に次の藤龍院の当主としての座を奪われないようにする、ということなんだろう。───こちらは、これから解決に向かうのだろうか?
峰子を訪れるも旅館にはおらず、居住しているという誠一の実家の方へ足を運ぶ。実は伺うのは初めてで、場所は把握しているものの、見たことはない。
訪れてみると家は豪邸という表現がぴったりな伝統的な日本家屋で、旅館に比べれば小さいけれど汚れのない塀とピカピカな門扉が出迎えてくれた。峰子に頼まれていた和菓子を手にベルを鳴らすも、誰も出ない。しかたない出直すかと思ったが、門扉が開いていることに気づき、玄関まで進んでみると今度は話し声が聞こえた。
縁側から覗く部屋の中。窓は開いており、そこに立つ二つの影───、男と女は抱き合い、満ち足りた幸せな空気を纏っている。
立希は見間違いかと思った。見たものが信じられず、目が離せないままその場から動けなくなってしまった。何故なら、その男女は、峰子と冬司氏だったから───。
別人かと見紛う程に幸せそうな笑顔で笑いかける峰子。二人は誰もいないと思ってか、臆面もなく抱き合いこちらに気がついていない。
───まずいところに出くわした。バレないうちにここから立ち去らなくちゃ。
こっそりと足を忍ばせ、回れ右をしたとき、立希の背後から声が上がった。
「ヘイ!何か用かな?君も混ざるかい?」
陽気に笑う冬司。凍りつく立希。黙って走り去るわけにもいかず、恐る恐る振り返る。
顔をこわばらせ鬼の様な形相でこちらを睨む峰子の姿が目に飛び込んできて、今日が命日かな、と漠然と思った。




