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推しのダンジョン配信者が妹になった義理の姉妹の話  作者: マグローK


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第8話 ソロ攻略の偉業

「どうも、Sakuです」


 カメラへ向けてあいさつをすると、自然にいつもの調子が戻ってくる。


 スイッチはいい。

 ワタシを配信モードへ変えてくれる。


 チラッとカメラ外にいるお義姉ちゃんへ目配せする。

 こんなひいきは本当はよくないのかもだけど、身近な人が優先されるのは、特別だからだ。


「今日はソロ攻略日記986日目。以前好評だったブラックドラゴンの討伐に続いて、プラチナムドラゴンを狩りに行こうと思います」


:さすがにSakuでもソロでプラチナムドラゴンは無理だろ


「さすがに無理。それっておかしくないですか?」


 躍起になったわけでなく、いつもの流れ。

 なんだか様式美みたいになってしまったコメントへのツッコミだ。


 これもまた、ワタシが配信してるんだと認識させてくれる。


「まだ誰もやってないだけで、できないことが証明されたわけではないでしょ……うっ!」


 なにやら興奮して地団駄を我慢しているお義姉ちゃん。


 カメラ外で面白い反応するのやめて! 笑っちゃうから。


「ん……ん。い、いえ」


 お義姉ちゃんにカメラを見ろと指さされ、ワタシは視線を元に戻した。


 コメント欄では「何かあった?」とざわめいている。


 いつもと違って締まらないワタシに、視聴者の方からツッコミが来ている。


 ただ、ここは見えなかった振りでスルーだ。

 触れたらボロが出てしまう。


 幸い、気づいていない人もいるみたいだし。


「ところで、プラチナムドラゴンがどこにいるか、みなさんはご存知ですか?」


 希少性の塊みたいなあの竜。


 ソロでの討伐報告がないのも、まず居場所がわからないからだ。


「……このダンジョン」


 お義姉ちゃんが小声で正解をつぶやく。


 もちろん正解。


「見つけ方は未解明です。でも、愚直にやれば見つけられるんですよ。――例えば、これとか」


 そう言って、懐から取り出したるは、ダンジョン内の薄明かりを反射する白銀のカケラ。


「これはアクセサリーじゃありません。プラチナムドラゴンのウロコ」


 察しのいいワタシの視聴者さんたちは、ここまでで今日の流れを完全に理解したらしい。


「さて、では早速本題に入りましょうか」


 壁を殴りつけようとするお義姉ちゃんを横目に、ワタシは豪胆に、大胆に、堂々と隣の壁を殴り壊した。


 そこに広がるのは大聖堂みたいな空間。

 そして、白銀の巨体が淡い光を反射し、静かに息づいていた。


 プラチナムドラゴンだ。


「調べはついていました」


 準備は万端――の、はずだった。


 抜いた剣が、竜のひと羽ばたきで吹き飛ぶ。


「しまっ――」


 老獪な眼差し。

 ワタシの手札を即座に封じてきた。これは知恵あるタイプだ。


「……」


 震える腕。

 緊張が背骨を駆け上がる。


 竜がトラック級の鉤爪を振り上げる。


 狙いはワタシじゃない。


「お義姉ちゃんっ!」


「え、わ、わわわ、わたし!?」


 ドシン!


 踏み潰さん勢いのストンプをワタシは無我夢中で受け止める。


「お義姉ちゃんに、手を出すな!」


 カウンターで竜を弾き、よろめいた隙に剣を回収。

 翼で体勢を立て直す前に、距離をゼロへ。


「……十分」


 突き上げる一閃――銀の首が宙を舞う。


 返り血をぬぐいながら、お義姉ちゃんへ手を差し伸べた。


「無事?」


 ぐいっと引かれ、よろめくワタシ。

 背中をさすってくれる優しい手に、胸が熱くなる。


「ほらね? Sakuなら余裕でしょ?」


 カメラの向こうで、チャットが歓声とスタンプの嵐。

 でも――今は配信より、この温度が大事。


 ワタシは小さく息を吐き、

 お義姉ちゃんのことをぎゅっと抱き返した。

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