第6話 怪談でビビる義妹
季節は、がっつり夏本番。
――っていうか、最近ずっと夏って感じなんだけど……。
「あつ〜〜い……」
「暑いねぇ、お義姉ちゃん……」
クーラーの効いたリビングで、ふたり並んでダラけながら外を眺める。
うん、セミすら鳴いてない。暑すぎてバグってる。
なんかもう、冬が終わったと思ったら、ずっと夏みたい。
そんなテンション上がらない今日この頃。
わたしたち義姉妹は、なんとなくつけっぱなしのテレビから流れる音声を聞き流していた。
時期が時期だからか、テレビは怪談特集をやっている。
ホラーは別に苦手でもないので、こうしてテレビを見られるくらいには朔ちゃんと打ち解けてきたかな、なんて、関係のないことを考えていたちょうどその時。
『……そこに、いたのは――』
「ひゃああああああーっ!!」
「えっ!? ちょ、朔ちゃん!?」
突然、甲高い悲鳴とともに朔ちゃんが飛びついてきた。
突然のことに思考が追いつかず、わたしの方まで体がこわばってしまう。
「…………」
「………………」
ホラーでは上がらなかった心拍が一気に急上昇し、今ではお互いの心音まで聞こえてきそうな状況。
おそるおそる朔ちゃんを見下ろしてみれば、画面すら見られてないらしく、ぎゅーっと小さくなって震えてる。
その様子はまるで、怯えきった小動物。
「……やっぱ、ビビリじゃん」
「び、ビビリじゃないっ……」
即座に否定されたけど、そのぷるぷる具合がもう完全にアウト。
かわいすぎか?
「でも涙目だよ?」
「これは……ビビリな、だけだから!」
観念したのか、ぽつりと小声で認めた。
涙目になったその目元をわたしの服でそっと拭ってくる。
って、え? 何やってんのこの子……。
しかも、そのままオロオロと距離を取ろうとしては戻ってきて……なんか、親離れできない子どもみたいなんだけど。
「ずっと気になってたんだけどさ。配信とプライベートのギャップって――」
「ダンジョンは怖くないからっ! 起こることしか起こらないしっ!」
急に元気になった朔ちゃんが、勢いよく早口でまくし立ててきた。
「そもそも、ダンジョンってそこまで危険じゃないの。ちゃんと準備して対策すれば、命の危険なんてほとんどないし。それなのに、一部の人が何も考えずに突っ込むから、危ない場所って誤解されてるんだよっ!」
鼻息荒く語る朔ちゃん。顔もちょっと蒸気してて、熱弁モード。
「そ、そう? でもわたしから見れば、ダンジョンのほうがよっぽど『ありえないこと』起きてる感じだけどなぁ」
そう返すと、朔ちゃんは首をブンブン振る。
「そんなことないの! ダンジョンの外のほうが意味わかんないよ!? 人は何考えてるか点でわからないし、トレンドは毎日変わるし、お義姉ちゃんは、不意打ちしてくるし……!」
「うっ……」
それ言われると、ちょっと弱い。
でもでも。あのときは朔ちゃんから誘っているように見えちゃったから……つい、ね?
視線を戻すと、じっとりとにらみつける朔ちゃんが、口を尖らせて抗議中。
……いや、だからその顔かわいいんだってば。
「ごめんごめん。ちょっと、からかいたくなっちゃってさ」
「……なんですかそれ。でもまあ、お義姉ちゃんだから、許してあげます」
ぷいっとそっぽを向く朔ちゃん。
うわー、なんかほんとごめん……。
「ま、これはこれで。配信で見るSakuと違って、こういう朔ちゃんも好きなんだけどね」
「――っ!?」
ビクッと肩を震わせて、わたしを振り返る朔ちゃん。
いつにも増して、焦ったみたいな顔。
冷や汗まで垂らしてて、なんか、やばいスイッチ押しちゃった……?
「ど、どしたの?」
「……ワタシの、本気も。そろそろ、見せる必要がありそうだなって思っただけ……!」




