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推しのダンジョン配信者が妹になった義理の姉妹の話  作者: マグローK


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第24話 炎上大戦

 火球が連続して三発飛んでくる。


 それでも、背後で輪を描く炎は消えなかった。

 次々と放たれる火の玉を、朔ちゃんはハエでも払うように軽々と斬り落としていく。


 背後の壁が震え、灰が舞う。

 炎が飛び、それを切り払う。


 ドラゴンのブレスすらものともしない彼女にとって、人間の攻撃なんて、まるで問題にならなかった。


 距離は――まばたき一つで詰まる。


「舐めるなよ!」


 篝もまた、簡単には倒れない。


 血のように赤い短剣を引き抜き、朔ちゃんの剣を真正面から受け止める。


 金属がぶつかり合う、高い音。


 衝突の余波で、二人は距離を取った。


「いいよなぁ。人気配信者様は。なんでも持っててさ。地位も、名声も、権力も」


「全部なんて持ってない」


「育ちがよかったんだろ? やりたいことやれて、誰にも邪魔されず、ぬくぬく育って」


「そんなことない。ワタシもお義姉ちゃんも、片親だった。やりたいことを自由にやる余裕なんてなかったよ」


「ヘドが出る。家族思いなんて美しいね。……全部ぶち壊してやりたくなるくらいに」


 吐き捨てるようにそう言った篝の目が、ぎらりと見開かれる。


 血走ったその瞳が光を帯び、背後の火輪が二重に――熱を増していく。


「お義姉ちゃん!」


 わたしは即座に飛んできた火球を斬る。


 グッと、サムズアップ。


 視界の外からの攻撃なんて、させない。

 私はもう、ただの観客じゃない。


「くっ……美しい姉妹愛ってか? こざかしい……。どうせ親に何も制限されなかったんだろ? 口出しもされずにさ!」


「お金はなかったし、人付き合いも得意じゃない。でも、克服したくて配信を始めた。探索は得意だったから」


「“得意だった”? ナメた口ききやがってぇ!」


 ギリッと歯を噛み締めた篝の頭上に、新たな火輪が描かれ始める。

 目は赤く染まり、肌の色まで火照ったように変わっていく。

 浅く荒い呼吸。魔力の流れは単調で、手に取るように分かる。

 肩で息をしてるその姿は、まるで運動後の子どもみたい。


 ――スキだらけ。


 朔ちゃんも気づいたのだろう。剣を大上段に構え、大きく振り下ろした。


 その剣圧が、すべての炎を薙ぎ払う。


 篝は数歩、よろけるように後退した。

 けれど、まだ敵意を向けるのをやめない。


 剣を下ろした朔ちゃんが、ゆっくりと一歩、踏み出した。


「他の人と同じじゃないよ。『自分が可哀想』って思いすぎなんじゃない?」


「だまれ」


「みんな、自分を正当化するために他人を傷つけたりしない。あなただけだよ」


「黙れ」


「過去の自分を肯定したいからって、他人を否定していい理由にはならない。それって……おかしくないですか?」


「黙れ黙れ黙れぇッ!!」


 地団駄を踏み、短剣を構え直す。


 その目は短剣と同じように鋭く光っていた。


 でも――もう、炎は出ない。


「くそっ……クソがッ! どうして……!」


 頭をかきむしり、何かを振り払うように呻く篝。


 わたしは、そんな彼女を歩きながら見つめていた。


「……魔力切れですよ」


「そんなわけない! アタシが……そんなヘマをするはずが!」


 責任を他人に押しつけようとする姿は、どこか動物的だった。


 そしてその瞬間。

 乱暴に振り回された髪が、わたしの剣で――スッと、切れ落ちる。


「え……?」


 見開かれた目で、篝がこちらを見た。


 次の瞬間、勢いよく振り上げられた腕に、私は条件反射で身をすくめたけれど――その腕は、力なく下ろされた。


 そして、篝の顔に浮かぶのは……かすかな、乾いた笑みだった。


「……つくづく、周りが見えてなかった。力が落ちたな。ひよっこに背後を取られるなんてさ。それ以前に……自分が感情に支配されてるなんて」


 短くなった髪を指でつまみ、地面に落ちた髪に視線を落とす。

 その背は、思ったよりも小さく見えた。


「……何してたんだろうな、《《私》》……」

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