表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しのダンジョン配信者が妹になった義理の姉妹の話  作者: マグローK


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/24

第21話 Saku復帰配信

:よく配信できるな

:Sakuってメンタル鋼でできてんのかwww

:失踪したかと思ったのにな笑


 待機中のコメントすら、皮肉混じりのものばかり。

 なのに――朔ちゃん、いや、Sakuは、静かにカメラの前に立っていた。


 配信者として、またこの場所に戻ってくるまで、どれほどの葛藤があったんだろう。


 わたしにはわからない。

 でも、これからは――その痛みの一部を、共有させてほしいと思った。


「いける?」


「……うん」


 短くて、でもちゃんと芯のある返事。

 Sakuは落ち着いていた。迷いは、ない。


 カメラのランプが点き、配信画面が切り替わる。

 Sakuが、ゆっくりと目を開いた。


「お久しぶりです。Sakuです」


:逃げてんじゃねぇ!

:さっさと辞めろ

:戻ってくんなって


 ……きつい。

 コメント欄を見たSakuの瞳が、ほんの少しだけ揺れる。


 ――まずい。


 すかさず、わたしはグータッチの構えを見せた。


 Sakuの口元がふっと緩んだ。

 そしてまた、カメラへと目線を戻す。


 ……よかった。


「色々ありました。ご心配も、ご迷惑もおかけしました。でも、ワタシは元気です。なので、攻略を再開していこうと思います」


 “待ってました”。

 口パクでそう伝えると、Sakuの表情は一瞬、微笑んだ。


 でも次の瞬間には――

 もう、あのクールなSakuに戻っていた。


「今回は盛大に巨獣です。巨獣って、絵的に映えるじゃないですか? なので、調べてきました。みなさん、ドラゴンって好きですか?」


 そう、Sakuと言えば、竜殺し(ドラゴンスレイヤー)


 ここ最近の配信はどれも、それ絡みで話題になっていた。

 本来なら、複数人で挑むような相手なのに――Sakuは、ひとりで討伐してみせる。


 その姿に、わたしは何度も胸を打たれた。


 でも……これまでのドラゴンも、けっこうデカかったよね……?


「もしかしたら、これまでのドラゴンでも十分大きかった。そう感じているかもしれません」


 ――心を読まれた!?


「でも、今回はきっと想像よりも大きいですよ。説明するより、見てもらった方が早いですね。……行きましょうか」


 *


 目当ての場所は床の装飾からして違っていた。


 今までは自然の洞窟や平原が多かったけど、ここはまるで別世界。

 床も壁も、レンガ造り。

 どこかクラシカルで重厚なつくり。

 鉄製の大きな扉には――ドラゴンのレリーフまで彫り込まれていた。


 ファンタジーRPGに出てくる、いかにもボス部屋って感じ。


「この中です」


 Sakuが扉に手をかけ、ぐっと力を込めて押し開く。


 ――その先は、まるで玉座の間。


 いや、違う。

 宝物庫だった。


 黄金が天井から壁まで反射して、あたり一面がまばゆく光っている。


 そして、その中央。

 トラックなんかじゃ運べない。

 ビルが何棟も横倒しになったような巨大な影が、赤い喉をゆっくりと光らせながら、わたしたちを見下ろしていた。


「――クリムゾンレッドドラゴン」


 その名前が呟かれた瞬間。

 コメント欄が一瞬、静まりかえった。


 ……絵として見ても圧倒的。

 画面越しでも、視線が釘付けになる。


 伝説の存在。

 けれど、目の前のドラゴンは容赦なく、こちらを値踏みするような目で見下ろしてくる。


 喉元の赤い輝きが、次第に黄金を照らし出す。


 そして――


「来るっ!」


 咆哮と同時に、口から真紅の熱線が一直線に放たれた。


 ――だが、Sakuはすでに動いていた。


 一歩、二歩。

 避けるのではなく、切り裂きながら、前へ。


 火線の端を駆け抜け、竜の顔面へ肉薄。

 剣を一閃、ブレスの中を割ってその口の端を切り裂いた。


「グギャアアアオオオオオ!!」


 怒声のような悲鳴を上げ、ドラゴンが頭を暴れさせる。

 熱が暴発し、口から赤い血が滴り落ちていく。


 苦悶のあまり、竜が首を振り回す。


 その隙をついて、Sakuは――すでに空へ跳んでいた。


 天井を蹴り、落下。

 流星のごとく剣を振り下ろし、眼球を一突き。


 ドシュッ、と音を立てて竜の目から血が噴き出す。


 一瞬で、動きが止まった。


「やる前から諦めるなんて、それっておかしいですよね」


:やっぱSakuしか勝たん

:引退しろとか言ってすまん

:見ててスカッとしたわマジで


 コメント欄が、今度は高速で称賛の嵐に切り替わっていく。


 わたしがサムズアップを送ると、

 Sakuはウインクで返してきた。


 ――……ちょっと。

 そんな大胆なこと、今までなかったのに……。


 ……なんだろう、この気持ち。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ