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推しのダンジョン配信者が妹になった義理の姉妹の話  作者: マグローK


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20/25

第20話 復活の義妹

 エスメラルダさんが部屋を出ていって、しばらく。


 何かをするより先に、朔ちゃんは迷いなく、あの円盤に手を伸ばした。


 起動された円盤から、ふわっとした雰囲気の中性的な子が映し出される。

 相変わらず、どこか夢の中みたいな、不思議な存在感だった。


「また別の子だ。はじめまして。ボクはアメノミヤ・ルツェ。キミはもう目的が決まっているみたいだね? うん、本来はそっちの手伝いのほうが得意なんだ」


「……初めまして。ワタシは不知火朔。目的は……心を強くすること。どんな状況でも、折れない心が、欲しい」


「なるほどね」


 ルツェちゃんはうんうんとうなずきながら腕を組み、片目だけ開けてわたしを見てきた。


 まるで何かを見抜いたように、ゆっくりと笑って、もう一度大きくうなずいた。


 でも、わたしには、その笑顔の意味がよくわからなかった。


「きっと、それ、必要ないと思うよ」


「でも、ワタシ……すぐに折れて、動けなくなっちゃうから」


「ううん、大丈夫。荒療治だったかもしれないけれど、ボクの出る幕じゃない」


「でも……何か、方法があるはずで――」


「ないない。うん、キミはもう“持ってる”んだよ。ただ、それに気づいてないだけ。……というより、ちょっと、ないがしろにしてるって感じかな」


「そんなこと……」


「じゃあ、自覚しよう。ボクより先に話すべき相手が、すぐ近くにいるんじゃないかな?」


 ――ハッ、と息を呑む音が部屋に響いた。


 朔ちゃんが、くるっと振り返る。

 わたしと、目が合った。


 驚いたようなその顔には、ほんのり血色が戻っていて――なんだかんだで、表情に出ちゃう朔ちゃんらしさに、思わず笑みがこぼれる。


 ああ、よかった。


 ふと気が緩んだのか、朔ちゃんの目が泳ぎはじめた。口をぱくぱくさせながら、何かを言おうとしてる。


 ああもう、かわいいなあ、ほんと。


「お、お義姉ちゃん……」


 恥ずかしそうに、もごもご口を動かしながら、指先をそわそわいじってる。


「なぁに? 朔ちゃん」


 できるだけやわらかく、優しく声をかける。


「ご、ごめんっ!」


 ポニーテールがぶんっと跳ねるほど、勢いよく頭を下げた。


 この一週間、わたしが毎日結んであげてたポニーテールだ。


「ワタシ、自分のことばっかりで……迷惑をかけてるってことしか考えてなかった。人の邪魔にならないようにって、そればっかりで。もし損害を出したら、誰かが離れていっちゃうって思ってた。でも、お義姉ちゃんは……何度だって言ってくれた。迷惑じゃない、って」


「うん。わたしは一度も、迷惑だなんて思ってないよ。エスメラルダさんも、配信を見てくれる人たちも、きっとそう。朔ちゃんはSakuで、わたしはファン。朔ちゃんは義妹で、わたしは義姉。――これは、配信でSakuを見つけた日から、家の前で声をかけたあの日から、ずっと変わってないよ」


 顔を上げた朔ちゃんの目に、ぽろりと光るものが浮かんだ。


 わたしはそっと指先で、それをぬぐってあげる。


 驚いたように見開かれた瞳が、また愛おしかった。


 ほんとに、臆病で、頑固で、でもまっすぐな子。


 わたしは震えている朔ちゃんの手を、しっかり握った。


「戻ってくるって、信じてたよ」


「……すっごい、待たせちゃった」


「ほんとにね」


 でも、うれしい。


 本当に、戻ってきてくれてよかった。


 心配してたのは、きっとわたしだけじゃない。

 みんな、ずっと気にしてた。


「なーんか、すーぐ忘れちゃうみたいだからさ。もう一回、はっきり言っておこうかな?」


「な、なにを……?」


 朔ちゃんが一歩引きかける。


 でも、もう手は握ってる。逃がさない。


 そのまま、わたしは朔ちゃんの目を見つめて、ゆっくり顔を近づける。


 ビクッと肩を震わせる朔ちゃんに、ちょっとだけ悪戯っぽく笑いかけて――


「わたしは、朔ちゃんのことが好き。大好き。迷惑だって、かけてほしいくらい」


「……あ、ありがとう。お義姉ちゃんのこと……ワタシも、す、好き……」


 顔を赤くしながら、ぎこちない笑顔を浮かべる朔ちゃん。


 その言葉は、たしかに――ちゃんと、届いたよ。


「迷惑……かけたくなるくらい」

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