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推しのダンジョン配信者が妹になった義理の姉妹の話  作者: マグローK


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13/21

第13話 もっと甘えて義妹ちゃん

 最近、朔ちゃんの元気がない。


 配信のときはいつも通り――いや、むしろ前より堂々として見えるくらい。

 でも、その裏で配信が終わると、ほとんど話してくれない。


 ……なんか、ちょっとだけ、避けられてるような気さえする。


 あの日、エスメラルダさんに会ったあの日から――朔ちゃんの様子は、どこか変わってしまった。


「……」


 今日は久しぶりに、リビングでふたりきり。


 夜は今でも一緒のベッドで寝てるけど、何か話す前に朔ちゃんは寝ちゃって、こっちはずっと気を張ってる感じ。


 まるで、わたしだけが意識してるみたいで、ちょっと切ない。


 オタクの一方的な感情って言われたら、それまでなんだけど。

 でも、初日は――あんなに近かったのに。


「……」


 前みたいにアニメも見ず、テレビは無機質なニュース番組。


 クーラーの風が、今日はやけに冷たく感じる。


「朔ちゃんさ。なにかあったの?」


 唐突に切り出すと、朔ちゃんの肩がピクッと跳ねた。


 大げさに手を振りながら、無理やり笑顔を作って振り返ってくる。


「う、ううんっ! 別に、なんにもないよ? お義姉ちゃん変なこと言うなぁ」


 明らかに不自然なテンション。


 挙動も不審すぎるし、目も合わない。


 ……短い期間だけど、わたしだって姉をやってきた。

 朔ちゃんが何かを隠してることくらい、わかる。


「急になんともないのに聞いてくるから、びっくりしたよ」


 その割には饒舌すぎる言い訳。


 わたしはじっと黙って、続きの言葉を待つ。


 すると、朔ちゃんは困ったように目を泳がせて、微妙な苦笑いを浮かべた。


「……ワタシって、そんなにわかりやすい?」


「朔ちゃんって、普段はけっこうわかりやすいよ?」


「やっぱり、お義姉ちゃんは人をよく見てるんだね」


「朔ちゃんだから目を離さないようにしてるの。みんなにはしてないよ?」


 その言葉に、朔ちゃんはくちびるをぎゅっと結び、手をきゅっと握りしめた。


 そして――ふっと、ため息をつく。


「……そんなふうに言われるから、勘違いしちゃうんだよ」


「なんて?」


「ううん」


 朔ちゃんは首を横に振る。


 でも、ぽつりとこぼれた言葉が、胸に引っかかる。


「ワタシが、お義姉ちゃんと一緒にいるのって……お義姉ちゃんにとって、迷惑なんじゃないかなって」


「え? なにそれ? どうして? 普通逆じゃん!」


「だって……ワタシ、ダンジョンの外じゃ無力だし。いつも頼ってばっかで……」


 朔ちゃんは視線を落とし、小さな声で自分を責めるように言った。


 その姿は、あのクールでかっこいい、最強無比のSakuじゃない。

 そして、ビビリで臆病な朔ちゃんでもない。


 まるで、弱った子猫みたいに――か細くて、心細くて。


 だけど、ようやく見えてきた。

 朔ちゃんの“本音”。


「……なぁんだ。そんなことで避けてたの?」


「避けてたっていうか……うん」


「じゃあ、そんなの気にする必要ないよ!」


 わたしは朔ちゃんの手を取った。


 ひんやりとした手。

 ダンジョンでは強いのに、こんなにも冷たくて柔らかい。


 ビクッと震えるのが伝わってきて、朔ちゃんがようやく顔を上げる。


 大きく目を見開いて、迷うような、困ったような瞳で、わたしを見つめてきた。


「……でも、それって甘えだし、弱さでしょ?」


「うん。だから――甘えてよ。弱さも見せてよ。朔ちゃんは、人間なんだから」


 わたしの想いは、ただの押しつけかもしれない。


 でも、今だけは言わなきゃいけないって、思った。


「わたしは、朔ちゃんのお姉ちゃんで――Sakuのファンなんだよ? 迷惑とか、考えたこともないよ」


「でも……」


「朔ちゃんのこと、好きなんだよ」


 朔ちゃんの瞳を、まっすぐ見つめる。


「わたしは、朔ちゃんが好き。Sakuが好き。だから――もっと、わたしに迷惑かけて?」


「……いいの?」


「いいの。だって、わたしも迷惑かけてるし。お互いさま、でしょ?」


 にっこり微笑むと――朔ちゃんも、困ったような笑顔を浮かべてくれた。

 久しぶりに見る、安心した顔。


「……また、甘えちゃったな」


 上目づかいで、ぽつりとつぶやいたその言葉に。


 ――思わず、胸がドキッとした。

 やっぱり朔ちゃんはこうでなくっちゃ。

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