パティスリーへ。
待ち合わせの街路樹の下で自転車を停めた。
LINEをもらってから時間に余裕があったので、コンビニで時間をつぶすことも考えたが、先に来て待つことにした。もし今日が最後かもしれないのなら、美玲を待つ時間も少しでも味わっておきたかったから。
スマホを見るわけでもなく手にしてボーっとしていると後ろから声をかけられた。
「お待たせ。」
声のした方を振り返ると美玲が立っていた。良かった。ちゃんと来てくれた。微笑むでもない、かと言って無表情というほどでもないが、そんなに嬉しいという感じとは言いがたい表情の美玲が懐かしい。思えば、最初に待ち合わせた時もこんな表情をしていたんだった。
「さて、行こうか。乗って。」
「うん。」
自転車に2人乗りして先日のパティスリーへ向かう。さりげなく腰に回した手が嬉しい。本当にイヤだったらこうして自転車に乗ってくれないだろうし、最初から来ないだろう。
「ねえ。どんなお店なの?」
「ケーキバイキングができる店。」
「バイキング?やった!」
珍しく感情のある声にハンドルが危うくなった。ああ、びっくりした。
「うわー。どれにしよう?」
パティスリーに入ってテーブルにつくと、渡されたメニューを見て目をキラキラさせている。ケーキが絡むとこんなに感情が出せるものなのだろうか?
「コウキは来たことあるの?」
「ああ。少し前に一度だけ。」
「どれが美味しかった?」
「ん?全部。」
「全部って。まさか全種類食べたとか?」
「いや、さすがにそれはない。食ったモノはどれでも美味かったって意味。」
俺の言葉に美玲が笑う。
あれ?普通に会話できてるな。こないだのマックの時とはえらい違いだ。ケーキはそんなに感情を引き出すシロモノだったのか?
「コウキは何にするの?」
「ん〜。そうだな。」
言いながらメニューを見る。そうだ。これにしよう。
「モンブランとブレンド。」
智也の『お互いのバランス』という講釈を思い出して、モンブランに決めた。ここまで来て、尚も願掛けしてしまう俺。
「私もモンブランにしよーっと。あと、チーズケーキ。飲み物は紅茶。店員さん、呼んでいい?」
「ああ。いいよ。」
返事をするが早いか美玲は店員さんを呼び、オーダーバイキングの一回目のオーダーをした。
「何個食べられるかなあ?」
オーダーが終わるとウキウキと俺に話す。口数の多い美玲は珍しい。
「予想は何個なの?」
「6個くらいいけそう。」
少食だと思っていたが、意外。別腹ってやつか?




