さて、そろそろ。
「そろそろ〆ようぜ。酔いも醒まさないとな。」
大樹が切り出した。そうだぞ。俺はもう大丈夫だけど、他の奴らはすっかり出来上がってしまっている。いくらなんでも制服姿の酔っ払いはマズいってもんだろう。推薦での入学が決まっている奴は特にマズい。
数分後に人数分のウーロン茶とアイスが運ばれてきた。大樹がオーダーしたらしい。しかもフルーツが添えられてミニパフェみたいになっている。これも江川家だからこそのサービスである。大樹と来ると、〆のアイスはいつもこうだ。そしてアイスの種類がすごい。みんなの好き嫌いが把握されている。抹茶の好きな奴の前には抹茶。シャーベット派の奴の前にはシャーベット。バニラしか食わない奴の前にはバニラ。付き合いが長かったとはいえ、よく把握しているな。大樹のこの機転は、いつも感心せずにはいられない。親の会社の跡取りである大樹だが、会社の前途も期待できそうだ。もし就職に困ったら大樹のところに…。いやいや、まだ大学生活が始まる前だっつーの。
「じゃあまたな。」
「おう。」
そこそこにほろ酔いになったところだったが、慣れているだけに、みんなウーロン茶とアイスですっかり酔いを醒ましていた。このメンバーは少なくとも、大学生になっていきなり酒に飲まれることだけはないだろう。
会計を済ませて店の出口でワイワイやっているとスマホが鳴った。
『今から学校を出る。』
美玲からのメッセージだ。もうこんな時間になっていたのか。まあ、数時間の間、気がまぎれて助かったな。
「そろそろか?報告しろよ?」
「ああ。なるべく報告するよ。」
大樹がこそっと耳打ちをして自転車のロックを解除した。俺も自転車の鍵を取り出しながら返事をする。みんなに聞こえないようにこそっと気遣ってくれるところがありがたい。
あの場所で待っていると返信をして自転車を漕ぎ出す。いよいよだな。
神様。欲張りでごめんなさい。受験の合格も欲しいけど、美玲からの良い返事も欲しいです。今日が最後になりませんように。
左手をハンドルから胸元に持っていき、第2ボタンに触れる。
これを受け取ってもらえますように。




