“ご成立”ゼロ。
肉を焼き始めたところで、大樹がスマホを手にする。LINEが入ったらしい。画面を見てから苦笑しながら耳に当てる。どこかに電話をかけているようだ。
「パーティ?今日は、ねえぞ。受験が残ってるんだぞ?」
大樹が電話の相手に発した言葉に俺は苦笑した。
誰だよ?パーティをアテにしてた奴。部内の誰かだとは思うけど。まあ、しょっちゅうパーティをやっているだけに、アテにしていたり、行きそびれるのはさみしい、などと思う気持ちもわかるが。
「今?カンナで焼肉食ってるぞ。」
大樹が話しながら俺に目配せをして、この電話の相手を呼んでも良いか?と聞いている。
俺が黙って頷くと大樹が続ける。やっぱり部活の誰かだろうな。
「来るか?コウキと二人。」
やっぱり部活の誰かだな。
「俺ら、捜されていたみたいだぞ。みんな来るらしい。」
電話を終えると大樹が言った。サッカー部の同級生8人全員がこれから来るらしい。まるで打ち上げだな。しかし、ボタンを渡した相手とそのまま、という奴もいるだろうと思っていたが、全員合流ってことは、“ご成立”ゼロかよ。そんなにサッカー部ってモテないのかよ?
「誰もボタンの相手と“ご成立”してねーのかよ?」
「みたいだぞ。サッカー部、モテねーな。」
「だな。」
大樹がスタッフさんを呼んで、あと8人やってくることを告げると、おしぼりや箸などがセッティングされていく。もともと二人では広すぎる個室なので、10人でちょうど良いくらいの広さだ。
「一杯しか飲まないのか?」
俺がタッチパネルでウーロン茶を注文しようとタップすると大樹が言った.
「さすがに酔っ払った状態では会えないよ。しかもケーキだし。」
「それもそうだな。」
そう言いながら大樹はビールを追加した。制服で酒を飲むのはサスペンス今日が最初で最後だろう。
追加したねウーロン茶とビールが届いた頃、ガヤガヤとした声とともにドアが開いた。
「お前ら、水臭いじゃねえかよ。二人だけでパーティかよー?」
「お前らこそ、お邪魔になると思って声をかけなかったんだぞ?」
「彼女いるヤツまでどうしてここにいるんだよ?」
そう。クリスマスのときに受験が終わったらホテルだか旅行だか行きたいと言っていた奴までいる。
「まあまあ。いいじゃねーかよ。」
などとワイワイとした会話が飛び交う中、次々とジョッキに入ったビールが運ばれてきた。
「まあまあ。モテないサッカー部に乾杯しようぜ。」
「カンパーイ!」
元気よく制服姿でジョッキを合わせる俺ら。いつまでも変わらないでいような。




