恒例行事。
今日は、コウキの卒業式。そしてコウキと会う日。そしてそんな今日の学校はザワザワとしている。というのは、界英の卒業式に告白をしたり第二ボタンをもらいに行くのが、美玲の学校では恒例となっていて、午前中の授業を途中で抜け出して界英に出動するのである。これに関しては、学校もどこか黙認していて、この日に体調不良を理由に早退者が続出するが、先生たちも「どうぞ」と言わんばかりに早退を認めている。
今年も何人か、もらいに行く予定と思しきクラスメイト数名は朝から鏡ばかり見ている。どこかの席に集まってスタンドミラーをつき合わせてメイクのチェックをしているのだ。
「鏡なんか見てないで予習すればいいのに。」
そんなクラスメイトを尻目に美玲がポソっとつぶやく。美玲にしてみれば、この日にこぞって告白をしようとなどという心理が理解できないのだ。しかもチェックをするたびに手直しをしているので、どんどんメイクが濃くなっていくのが傍目からもわかる。はい、化粧オバケ、三名様完成でございます。界英の生徒は化粧オバケに告白されて嬉しいのかという点では、疑問である。
しかし同時に思い当たることがあった。
もしかして、里奈の言うように、コウキは今日、第二ボタンを渡そうとしているのかしら?
別れ話を受け入れてもらえなくて、苦し紛れに卒業式に再会しようと言っただけで、決してそういうつもりではないのだ。
「しまった…。」
「何が、しまったなの?」
気づくと里奈が目の前に椅子を後ろ向きにして座っていた。あちゃ。独り言、聞かれちゃったわ。
「ん。ちょっとね。」
「何ナニ?もしかして今日って約束の日じゃないの?」
ああ。覚えていたのね。これって話さないといけない感じ?
「そうよ。こないだ話した通りよ。今日の夕方に会うの。」
「うんうん。それで?」
里奈の目は、好奇心たっぷりの子犬のようにクルクル、キラキラとしている。他人の恋バナ系がそんなに楽しいものなの?
「なんとなく、卒業式の日に会うことにしちゃったけど、第二ボタンくれる話になっちゃってるのかしら、と思ってね。」
「言ったじゃな~い。第二ボタンくれるつもりに決まってるわよ!もちろん受け取るんでしょ?いやーん。素敵~!」
里奈が勝手に盛り上がっているし。
「ソレって受け取らないと、ダメ?」
「イヤなの?」
「イヤっていうか、とにかく会ってくれって言われたから会うわけで、そんなことまで考えてなかったんだもん。」
「十中八九、ボタンは渡されるわよ。もしかして、好きな人、いるの?」
「いないけど。」
「じゃあ、もう一回付き合ってみればいいじゃないの。難しく考えすぎよぉ~。」
「そういうものなの?」
「そうよぉー。」
う~む。卒業式の日に設定したのがまずかったわね。




