良かったな。
「マジか。良かったな。」
昨日の事の顛末を大樹と智也に報告と、二人とも笑顔でそう言った。
「それで、美味しいケーキ食べたいってことだったから、昨日のあの店に連れて行こうと。」
「なるほど。って智也!また男同士でケーキ食いに行ったのかよ?早く一緒に行ってくれる相手を見つけろよ〜。」
「ほっとけ!」
大樹のツッコミに笑う智也を見て思わず笑みがこぼれる。こいつらとこうして毎日ふざけあえるのもあと少しなんだな。
「ところで、会えるのはいいけど、本当にいいのか?」
「これでダメだったら仕方ないよ。」
そう。ダメなら今度こそあきらめなければいけない。やり直せないと言われたとしても、第2ボタンを受け取ってもらえなかったとしても。でも、一度だけは会ってもらえるんだから、ケジメをつける気になれるだろう。
「まあ、とにかく。ミルフィーユだけは食わせてやれ。」
ミルフィーユで恋愛成就するとでも言うのか?お前はケーキの神様かっ!いや、スイーツの神様かもしれない。
「どうしてミルフィーユなんだよ?」
「あれを食って落ちない女はいない。」
「お前、成功したことあるのかよ?」
「ない。しかし、俺が女なら絶対落ちる。」
「お前なあ…。」
確かにあのミルフィーユは旨かったが、それで落ちるという問題じゃないだろうが。
しかし美玲なら何を選ぶだろう?そういえば一緒にケーキを食ったこと、なかったな。いつもマックかミスドばかりだったんだよな。
ベリー系か?シックにショコラとかコーヒーのブラウン系か?はたまたモンブランなどの芋栗関係か?それとも爽やかにチーズケーキ?
「おい。悩んでねーで、ミルフィーユだぞ!」
「智也。お前の好みを押し付けんなよ。好きなものを食わせてやるのが一番だぞ!」
思いを巡らせていると智也がまたミルフィーユを薦め、大樹がツッコミを入れる。
最後のチャンスともいうべき卒業式の日に対する不安と、こいつらと過ごす時間もあと数日という寂しさの間で気持ちが行ったり来たりする。
いっそ、こうしてその日を思ったり、残りの時間を思いながら他愛ない会話をしている今の方が幸せな気がしてくる。




