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ペランケン・シュタギン三世

 それを見て透は悲しそうに目を伏せ、香織はハッと息を呑んだ。雅と凛は固く口を引き結んでいる。


 「……よろしい。次は凛だ」


 「ええ、アタクシの幻器は一角太刀。居合刀よ。下位スキルは飛閃(ひせん)。斬撃を飛ばす事が出来ると言うもの。上位スキルは天衣無縫(てんいむほう)、こ、こちらは纏う衣の数が少なければ少ない程、剣速が上昇すると言うもので……は、破廉恥よ! 何でアタクシの幻器だけこんな安いお色気キャラみたいなスキルなの!?」


 「それは、製作者に聞いてくれ。まぁ、と言っても、もう居ないがな」


 「うう、お亡くなりになった方を悪く言いたくはないけれど、アタクシの所信は極力、上位スキルを使わずに済ませる事よ」


 凛は怒りか、羞恥か顔を真っ赤に染め上げて項垂れた。


 「うむ、それは良い心がけだな。皆んなにも言っておくが幻器は肉体と同時に感情も強化する。元々正の感情が強ければ問題は無いが、負の感情が強いと、ますます制御が効かなくなる。そして、負の感情は幻獣とよく同調し、最悪の場合、体の主導権を幻獣に乗っ取られてしまう」


 既に粗方の説明を聞いていたのか新人四人の反応は薄かった。


 「そうでなくても同化は体力の消耗が激しい。同化の力は強大だが、それに頼った戦術を立てるつもりは無い」


 「それがお前の所信か? 菩提」


 雅が初めて私と目を合わせた。雅の黒い瞳は私を見透かそうとするかのように深く、引き絞られている。


 「いいや、今のは払暁全体としての基本方針だ。さて、最後に私の番だな。まず、私の幻器は獅子独楽と言う斧。下位スキルは分身(エゴ)、自分の肉体にだけ干渉出来る分身を生み出せる。そして、上位スキルは瞬間移動(テレポート)。座標や写真で大体の位置がイメージ出来れば、瞬時に移動できる。ただし使えるのは透と同じで三回までだ」


 私は五人の顔を見回した。


 「私の所信は二つ、この払暁を最強のチームに育て上げる事、そして、それまでにメンバーから一人として死人を出さない事だ」


 誰も死なず、死なせない。それは共通の望みの筈だ。雅を除いた四人の顔が緊張で強張った。


 「必ず、この代で戦いを終わらせてみせる。私からは以上だ」




 私が五人を引き連れて寮を出ると、丁度視界の外からクラクションが響いて来た。


 「おーい。こっちこっち」


 声のする方を見るとワゴン車の運転席から穿が身を乗り出してこちらに手を振っていた。


 「穿、運転出来るのか?」


 「うん、引退してから免許取ったんだ。公僕の特権って奴でね」


 「あ、先輩だ。ご無沙汰してます!」


 香織がワゴン車に駆け寄ると穿に向かってお辞儀をした。


 「や、後輩ちゃん。ニーベスベルグの調子はどう?」


 「はい! 良い感じです」


 「うんうん。ちょっとやそっとじゃ壊れたりしないからバンバン殴って、バンバン使ってね」


 穿は空を殴る様な仕草で片目を瞑って、ウィンクした。そんな二人を尻目に私達はワゴン車に続々と乗り込んで行く。


 「時間もない。班長、早く車を出して下さい」


 「なぁに? 雅、機嫌悪いの? あ、分かった! 半年振りに会った結が抱きついてくれなくて、拗ねてるんでしょ〜」


 「な!? 姉さ、班長! 冗談は程々にしてくれ」


 穿はバックミラーを整えながら雅をおちょくった。


 「え、先輩って雅さんのお姉さんなんですか?」


 「うん、そうよ〜。私が引退して戦闘班の班長に就任してからは、中々姉さんって呼んでくれなくなっちゃったけど」


 穿と香織の会話を聞きながら、私達は車に揺られてタイムマシンのある公立病院へ向かった。


 エントランスに入ると受付に呼ばれる者、見舞いに来た者など一般の利用者で溢れていた。この中の誰も、地下に研究施設があるなどとは思うまい。


 私達は一般人の目を盗み、七人だけでエレベーターに乗り込む。すると、穿が手慣れた手つきで操作板の上で指を走らせた。


 鉄の箱はガコンと揺れ、静かに下降し始める。操作板には地下二階までしか表示がないにも関わらず、エレベーターは二つの階層を跨ぎ、地下三階へと辿り着いた。


 「やぁ、諸君! よく来たのであ〜る」


 「な、何だ!? 誰もいないのに声がするぞ!」


 エレベーターの扉が開き、チーンと言うベルの音が到着を告げる。それとほぼ同時にやたらと渋い声に話しかけられ、陽夏が戸惑って辺りを見回した。


 「我輩はここだ。下を向くのである」


 「下……? わ、ペンギン!?」


 「久しぶりだな、三世」


 新人四人が喋るペンギンに愕然とする中で私は気安く声を掛けた。


 「おお、半年振りだな。菩提 結。貴公の齎してくれたデータは有効に活用させてもらっているのである」


 「それは良かった」


 「あ、あの〜、そろそろアタクシ達にも説明して貰えない?」


 凛が恐る恐ると言ったように手を挙げた。


 「おっと、我輩としたことが自己紹介が遅れてしまったのである。我輩の名はペランケン・シュタギン三世。長ければ好きに呼んでくれて構わないのである」

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