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徹底抗戦

 

 「「制限解除(リミットオフ)!」」


 二人は息を深く吐くと声を揃えた。


 陽夏の腰から三本の尾が生え、凛の頭からはウサギの大きな耳と大きなツノが伸びた。


 二人の視線の先で今も尚、雅はバアルと対等に渡り合っている。体のあちこちから血を撒き散らして双戟旗を振り回しているが、それは全てスキルによって、もたらされた傷だった。


 「雅! 大丈夫か」


 「國領、お前、戻って来れたのか。お手柄だ二階堂」


 「礼には及ばないわ。さあ、ここからよ。私達は絶対に勝つ!」




 「二階堂、國領。聞いてくれ。奴の上位スキルは八岐大蛇が使っていたあらゆる攻撃の無効化だ。違いはスキルの発動が攻撃を自動で感知して行う受動的なものだという事」


 雅は双戟旗を瓦礫に叩きつけ、舞い散った礫をバアルに弾き出した。

 魔人の顔に礫が当たるも、傷一つ付かない。一方で背後に浮かぶ銅鏡にあしらわれた宝玉の内、一つから輝きが失われた。


 「発動にリスクは無く、連続の使用も可能。一見すれば隙はないように見えるが、制約はある」


 「制約?」


 陽夏は瓦礫を爆弾で割り、雅はバアルから加えられる剣戟を阻んだ。


 「まず、一度無効化すれば再使用までに時間を要する。些細な攻撃にも反応し、宝玉の数、つまり八度重なれば無効化は出来ない。宝玉が回復するまでの時間は無効化したダメージの大きさに比例し、それぞれが独立している」


 「独立。使用した時点から秒読みが始まって、それぞれに回復するという事ね? 飛閃!」


 「ああ、ただ最後に使用された宝玉が回復しないと、それ以前の宝玉も回復しない」


 凛の斬撃がバアルの足元を崩し、姿勢の乱れた魔人を雅が打ち払った。


 「って事は、七個宝玉を使わせて、回復する前にデッカいのをぶち込めば、無効化はあって無いようなモンって事だナ!」


 「そうだ、現状私たちにある最大火力は國領お前だけだ」


 飛ばされたバアルに追い縋り、雅がしつこく組み付きながら叫んだ。


 「國領さん、合わせるわ」


 「分かった!」


 陽夏は手近な瓦礫を爆弾に変え、それを構える。


 「凛、雅、いいぞ!」


 陽夏が声を上げた。雅は瞬時にバアルの背後を取り旗を魔人の顔に巻き付け、締め上げる。


 「飛閃!」


 七連撃が瞬く間に銅鏡の宝玉から光を奪う。


 「吹っ飛べナ!」


 陽夏は強化された腕力でバアルに瓦礫を投げつけた。雅は魔人を盾にして爆発を凌ぐと、拘束を解き背に双戟旗を突き刺す。


 「凛! やれ!」


 「シッ」


 バアルに肉薄すると凛は太刀を振り払った。斬撃が吸い込まれる様に魔人の首を狙う。


 「カァッ!」


 バアルは咆哮を上げ首を捻り、顎で居合を受け止める。柔らかな皮を引き裂き、硬質な骨が絶望的な感触を凛の右手に伝えた。


 「そん、な」


 バアルは無造作に直刀を振るう。凛の右肩が削ぎ落とされた。

 地面に落ちようとする太刀を左手で握り直し、振り向きざまにもう一度斬りつける。


 バアルは太刀筋を受け止め、直刀を絡めて上に弾き飛ばし、返す刀で振り下ろした。


 「凛!」


 陽夏は凛を突き飛ばし代わりに攻撃を受ける。背中に袈裟の刃創が深く刻まれドプリと血が溢れ出した。


 「っ、國領さん!?」


 「だ、大丈夫だ。分析(アナライズ)」


 陽夏が弱々しく呟くと、受けた傷が宙に溶ける様に消えて代わりにシールが具現化された。シールを手帳に貼ると、空白に文字が浮かび上がる。


 「これは……」


 「これで、龍神祭器の下位スキルが分かった。バアルは七つの並行世界を作り出し合計で八つの攻撃を同時に放ってる。その中で最もダメージの大きい攻撃を現実に反映させるんだ」


 「そ、そんな事より怪我は良い、の?」


 「陽夏は大丈夫だ。寧ろお前の方が重症だぞ」


 凛はダクダクと血が流れ出る傷口を左手で抑える。


 「二階堂、國領、平気か!」


 雅は依然としてバアルを相手取り背後に声を掛けた。その時、突然肩がガクンと落ちた。

 長時間の身体強化の使用がついに雅を戦闘不能の一歩手前まで追い詰めていた。


 雅は間一髪で手をつき、体を捻ってはずみをつけ、飛び退った。が、バアルの直刀が少女の右足を刈り取る。


 「クッ」


 痛みも疲れも感じないが、体が思う様に動かず雅は臍を噛んだ。


 「陽夏、こうなったら一か八か私の双戟旗を爆弾に変えてくれ」


 「ナ! 自爆するつもりか?」


 「馬鹿言うな。奴にこれを刺し込んだら私は逃げる。ただ足が片方しか無いから突撃と後退しか出来ない。援護を頼む」


 雅の返答に納得して頷くと、陽夏は回復したばかりの物質変化のシールを双戟旗に貼った。


 着実に重傷を負いながらも三人の目から闘志は消えていない。


 そして、雅達は最後の攻撃に身を投じた。


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