透と陽夏
「私にヒーちゃんの隣にいる資格なんて無い。まだ、分からないの?」
——私はとってもずるい人間。ヒーちゃんに嫌われる事が怖かったんじゃ無い。本当は自分がどんな人間か思い知らされるのが怖かったんでしょ? 他でも無いヒーちゃんから。
「な、何を……?」
透は目を細めて夢の中の自分自身に一歩詰め寄る。
——だから、先に自分を卑下して、バレる前に払暁から逃げたかった。
「ち、近寄らないで、」
息遣いが感じ取れるほど間合いを詰めると、透は夢の中の自分を抱きしめた。
——でも、それで良かったんだ。ヒーちゃんはそんな私を受け入れてくれた。
「そんな虫のいい話が……」
——分かってる。この戦いを終わらせたら、私は罪を償う。例えそれで死んでしまうとしても、もう何も怖く無い。ずっと何処までもヒーちゃんが私と一緒にいてくれるから。
透は目を閉じ、そして、瞼を持ち上げる。瞬い陽光が少女の目を灼いた。
「殺したいんだろ? この俺様を」
——そうだ。陽夏はお前を殺したい。
「くっくっく、いいぞ。なら……」
——でも、お前を殺したいのは陽夏だけじゃ無い。陽夏はお前や召喚士を殺したい人達の代表なんだ。だから、失敗しない為に最善の方法でお前を殺す。
鬼はつまならそうに嘆息した。闇だけが消え、依然として眼前には肩を揺らす鬼がいた。




