家を出る
浮気を認識した私は、夫と同じ部屋で過ごすことさえできなくなり、夫も修復の難しさを感じていたと思う。
私の中には、浮気した夫が気持ち悪いものとしか、認識できなくなっていた。
そして、家から夫を遠ざけ、その間に、引越しの準備を始める。
久しぶりに帰った夫は、引越しの段ボールの山に驚く。
「距離を置きたい。」
夫は、夫に拒否反応を起こす私の体調に、別居を受け入れるしかなかった。
私は、子供と共に実家に身を寄せた。
私の父は建築士、小さな頃から、海外旅行、国内旅行で、歴史的建造物を見る機会が多く、その構造の素晴らしさを父から聞いて育った。
その影響で、大学は建築系に進んだ。
大学卒業後、建築士として就職したものの、私は、色彩能力を認められ、壁・床・天井の仕上げ材や色のコーディネート、家具・カーテン・照明・収納などの選定と組合せを行うインテリアコーディネーターとしての仕事が主となった。
その頃、1級設計士の夫と知り合った。
男社会の建築業界の中、仕事よりも、女性としてみられることに私は、うんざりしていた。
私は、見た目がいい。
そのため、誘いが多い。
仕事関係の飲みに参加すれば、ホステスのように扱われる。
結婚をしたら、この煩わしさから逃れられるのかもしれないと考えていた頃の出会いだった。
夫は、私の意見を尊重し、私の思い描く内装を実現させてくれた。
他の現場では、見下されることが多く、私は、妥協しながら仕事するしかなかった。
そんな夫と、食事に行くようになり、交際し、結婚。
夫は、仕事で誘われることの多い私に、家庭に入ることを望んだ。
そして私は、結婚を機に、専業主婦となった。
なぜ、その時、仕事を続けることを選ばなかったのだろう。
私の母が、専業主婦であったため、私は、悩むことなく彼の希望を受け入れたこともあるが、若さゆえ、仕事上の付き合いや、客との関わりに疲れていたから、逃げたかったのかもしれない。
しかし、専業主婦となり、自分の世界を狭めてしまった。
結婚し、家族のために生きることだけの人生になっていた。
仕事は、自分に家庭以外の居場所を与えてくれる。
そして、自分を輝かせてくれる。
実家に戻った私は、ブランクを埋めるため、父の建築事務所の手伝いを始めることにした。
「紗羅、どういう結果になっても、仕事があれば、選択種は広がる。
自分の世界も、広げてくれる。
居場所がひとつじゃないって、心強い。
家でずっと、嫌なことをかんがえなくてもいい。
専業主婦は、時間に余裕があって楽だって思うかもしれないけど、夫にとっては、所有物に成り下がるの。
世界は限られるし、選択種も狭めるよ。
家族のためだけの自分ではいけない。」




