誰かと比べる
専業主婦だった私は、ホームウェアをパジャマにし、起きてからも着替えず、そのまま家事と育児をこなしていた。
髪は、邪魔にならないよう一つに縛り、垂れる前髪はピンで押さえる。
コンタクトもつけず、メガネで過ごす。
夏は、首にタオルを掛け、汗を拭きながら過ごす。
化粧などしない。
出産後は、自分に時間をかけることはしなかった。
夫は、私の見た目が好きだった。
私を連れまわし、人に紹介する自慢の妻。
結婚前は、私の職場の飲み会には、必ず迎えに来る。
ショッピングで私が服を試着し、どちらを買おうか悩めば、どちらも買ってくれる。
結婚してからも、出かける前は、化粧をし、髪を巻き、オシャレをする私の写真を撮る。
夫が家に戻った時、テーブルにカップが2つ並んでいるだけで、浮気を疑うようなヤキモチ焼きでもあった。
綺麗な私をこよなく愛していた。
「太った?」
夫が、私の見た目を指摘することが増えた。
私は産後、体重を戻せないでいた。
その言葉は、日増しにキツさを帯びていった。
買い物で、夫の運転する車の助手席に座った私の太ももの産毛を
「気持ち悪い。」
と、言った。
子供を産むまでは、爪の先まで、オシャレに余念のなかった私が、女性としての意識持たなくなり、幻滅する夫、その言葉は、私をひどく傷つけた。
それは、浮気をし始めた頃からだったと、後にわかった。
浮気相手と比べて、蔑まれて《さげすまれて》いた。
今、思い出しても腹が立つ。
私が、女性として常にキレイにしていたら、こんな言葉を浴びることはなかったのだろうか。
夫はただ、私の見た目だけを愛したにすぎなかったのだろうか。
「紗羅、もし旦那が、見た目を貶す《けなす》ことを言ってきたら、誰かと比べられてるのかもしれない。
旦那の前で、女であることを忘れないで。
常に、見られることを意識して、美しい笑顔を忘れないで。
浮気相手は、新鮮だからよく見えるだけ、そのうち、飽きるから。」




