捨てられたくない
私は、夫の浮気を疑うようになってから、彩華の助言通り、夫を疑う言動を抑え、家庭を居心地良くするよう心がけた。
ただ、彩華と私は違う。
彩華という名前は、歳の離れた彩華の兄がつけた名前。
その兄は、彩華を溺愛し、姫に忠誠を誓うナイトのように彩華に接していた。
彩華は、雨が降れば、兄の迎えを待つ。
彩華とショッピングの約束をすると、兄を伴った彩華が現れることもあった。
彩華と同じく、容姿の整った兄と彩華に振り返る人は多い。
彩華と彩華の兄と過ごす時間は、私もお姫様になったような気分だった。
食事に行けばイスを引いてくれ、車に乗る時は、ドアを開け、シートベルトをつけてくれる。
容姿だけでなく、ホントに素敵なナイトのような兄の元育った彩華。
そんな彩華は、雨が降れば、彼氏に迎えに来てもらい、デート中疲れれば、タクシーで家まで送らせる。
人に甘えることを躊躇なくできる。
愛されることが当たり前で、相手が自分のために動くことを当然と思い、相手のためにという考えは存在しない。
彩華の兄も、ボーイフレンドたちも、彩華にありったけの愛情を注ぐ。
彩華が結婚し、家に行った時も、彩華の夫は、お姫様につかえるナイトのようだった。
そして、彩華の夫が浮気した時、彩華は、最初から、離婚を視野に入れていた。
私は違う。
浮気相手に取られたくない。
夫に捨てられたくない。
いつも、愛されたいと願っていた。
彩華は、恋愛強者
私は、恋愛弱者
だから、浮気した彩華の夫の気持ちも少しわかる。
彩華は、専業主婦として、家事は行っていたが、相手に尽くすのとは少し違っていた。
離婚後の話しで、インテリアコーディネーターとして、家事や子育ての経験が欲しかっただけではないかと思ったこともある。
彩華は、本当に愛して夫と結婚したのだろうか。
彩華は人から愛される自信があるからこそ、愛される努力はしない、きっと彩華の夫は物足りなかったと思う。
彩華の夫は、常に彩華より下に感じた。
だからこそ、浮気をして初めて、彩華に強く出れるようになったと感じる。
「ねぇ彩華、私、彩華の夫が浮気した気持ち少しわかるんだ。
彩華に愛されてるか、不安だったんじゃないかな?
愛されて結婚した彩華と、愛して結婚した私の違い。
きっと、彩華には理解できないと思うけど、愛されることが当たり前じゃない人間は、常に不安なんだよ。
だから、誰かに思いっきり愛されたいと思う。
旦那と別れたいわけじゃないんだよ。
寂しさを埋めたいだけ。
私は、旦那が浮気したからって、責めることができない。
私のことが面倒くさくなって、浮気相手を選ぶのが怖いから。
離婚するって言われるのが怖いから。
捨てられたくないって、思ったことはある?」




