第四話 盛り上がり不足です
翌日。
村の広場には、なぜか長机が並んでいた。
屋台まである。
「焼き串一本二銅貨だよー!」
「席は前列が人気です!」
「なんで興行として完成しかけてるんだよ!?」
俺は頭を抱えた。
昨日までは普通の辺境村だったはずである。
それが今では。
【本日限定 災害級魔術ショー】
という看板まで立っていた。
「誰が書いたこれ!?」
「村長です」
隣でリシアが真顔で答えた。
「止めろよ!」
「村の経済効果を優先したそうです」
「判断が早い!」
________________________________________
広場は朝から満員だった。
「兄ちゃん今日も山吹っ飛ばすのか!?」
「リシア様ー!」
「きゃー!」
なんか黄色い声まで増えてる。
リシアは少しだけ咳払いした。
「……人気が出ていますね」
「お前、ちょっと嬉しそうだな?」
「研究対象として興味深いだけです」
そのわりに今日はローブが妙に整っていた。
髪まで少し巻いてる。
「なんでコンディション仕上げてきた?」
「戦闘準備ですが?」
「ライブ準備だろそれ!」
________________________________________
すると空中に文字が浮かんだ。
【観客数 127名】
【期待値 高】
【本日のおすすめ演出:開幕挨拶】
「だからなんなんだこのシステム!」
村人たちがワクワクし始める。
「挨拶! 挨拶!」
「前説! 前説!」
パチパチパチ!
すると俺の体の奥に力が集まり始めた。
「うわ、ほんとに強化される……」
リシアがメモを取っている。
「興味深いですね。観客の“待ってました感”に反応しています」
「ライブ分析やめろ」
________________________________________
「ほら兄ちゃん!」
「なんか喋れー!」
観客が完全に客席である。
俺は諦めて前に出た。
「えー、本日はご来場ありがとうございます」
パチパチパチ!
うわ、反応がいい。
「本日の公演は!」
【観客テンション上昇】
「実況まで出るな!」
「王国魔術師団全面協力のもと!」
リシアが小声で言った。
「してませんが?」
「今さら降りるな!」
「安全第一でお送りします!」
ドォォォン!!
空で花火が爆発した。
「安全第一とは!?」
観客が爆笑する。
パチパチパチパチ!!
するとさらに体が軽くなった。
「……これ、ウケるほど強くなるのか」
「ええ」
リシアが真顔で頷く。
「なので“掴み”は非常に重要です」
「お前もう完全にそっち側じゃねぇか」
________________________________________
「では次に、私が実演しましょう」
「え?」
リシアが前へ出る。
観客が沸いた。
「リシア様ー!!」
「きゃー!!」
リシアはスッと髪を払った。
「なんで今キメた?」
「演出ですが?」
「認めたな!?」
リシアは杖を構える。
「魔法とは、“魅せる”ことも重要です」
「言ってることは分かる」
「なので詠唱中、一度振り向きます」
「なんで!?」
「盛り上がるので」
「完全にライブ演出だろ!」
________________________________________
「では」
リシアが詠唱を始める。
「氷結魔術――」
空中に巨大な氷槍が出現する。
「おおおおお!!」
普通にすごい。
しかし次の瞬間。
リシアがターンした。
「ほんとに振り向いた!?」
しかも無駄に綺麗。
観客が悲鳴みたいな歓声を上げる。
「きゃあああ!!」
「リシア様ー!!」
パチパチパチ!!
リシアの頬が少し赤くなった。
「……悪くありませんね」
「ハマってる!!」
________________________________________
ドゴォォォン!!
氷槍が発射される。
遠くの岩が綺麗に吹き飛んだ。
「うおおおおお!!」
観客、大盛り上がり。
すると空中に文字。
【観客満足度 92%】
【アンコール可能】
「可能じゃないんだよ!」
「アンコール! アンコール!」
始まった。
リシアが静かに杖を構え直す。
「……求められているようですね」
「受け入れるな!」
「では追加で氷像演出を」
「サービス精神が強ぇんだよ!」
バキバキバキ!!
広場中央に巨大な氷像が現れる。
しかも。
妙にクオリティが高い。
「なんでそんな細かく作り込んだ!?」
「映えるので」
「“映え”を覚えるな!!」
________________________________________
一方その頃。
広場の隅では、老魔術師が震えていた。
「まずい……」
「どうしました?」
兵士が聞く。
「王国魔術師団のエースが……」
一拍置いて。
「辺境でファンサを覚え始めている……」
「そこ!?」
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
もし「続きが気になる!」「面白い!」と思っていただけましたら、
下にある**【ブックマークに追加】や、【☆☆☆☆☆】を★★★★★**にして応援していただけると、執筆の励みになります……!
ほんの少しの応援でも、作者にとっては嬉しいものです。
どうぞよろしくお願いいたします!




