第五話 観客が辛口すぎる
翌日。
【第三回 辺境魔術ショー】
という横断幕が広場に飾られていた。
「回数重ね始めてる!?」
しかもその下には。
【本日の出演】
・災害級術者
(予定)
・王国魔術師団の美人魔術師
・なんか光る噴水
「噴水がレギュラー入りしてる!」
「昨日人気でしたので」
リシアが真顔で答えた。
「人気投票やったの!?」
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広場は昨日以上の人だった。
近隣の村からも来ているらしい。
「兄ちゃん今日何やるんだ!?」
「山消すのか!?」
「リシア様ー!!」
なんかもう完全にイベントである。
俺は頭を抱えた。
「なんでこうなった……」
「地域振興ですね」
リシアが頷く。
「お前、順応早すぎるだろ」
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すると。
【観客数 312名】
【期待値 非常に高い】
【リピーター率 71%】
「リピーター率出るの!?」
しかも。
【前回より派手さが求められています】
「急に続編プレッシャーかけるな!」
観客席から声が飛ぶ。
「今日は新技あるー!?」
「前回の火球もう一回!」
「あとリシア様のターン!」
「ターン固定化してる!?」
リシアが静かに言った。
「……期待されていますね」
「お前ちょっと嬉しそうだな?」
「研究者として当然です」
「どこの研究だよ」
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そのとき。
最前列にいた子供が言った。
「でもさー」
広場が少し静かになる。
「前回と同じじゃない?」
「「「…………」」」
空気が凍った。
俺とリシアが同時に固まる。
子供は容赦なかった。
「火球どーん、氷どーん、だけじゃん」
「お、おぉ……」
観客がざわつく。
「言われてみれば……」
「たしかに……」
すると。
【観客期待値 低下中】
【マンネリ警告】
「マンネリ警告!?」
リシアが青ざめた。
「まずいですね」
「いや知らんが!?」
「観客が慣れ始めています」
「ライブ運営みたいなこと言うな!」
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子供はさらに追撃した。
「もっとこう……意外性とかないの?」
「辛口評論家がいる!!」
「あと昨日、爆発長かった」
「感想がリアル!」
観客が微妙な空気になっていく。
【観客テンション 下降】
【出力補正 マイナス】
「下がる下がる!!」
指先の火が、線香花火みたいになった。
「露骨!!」
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リシアが真剣な顔になる。
「……仕方ありません」
「なんだその顔」
「予定を変更します」
「嫌な予感しかしない」
リシアはスッと杖を掲げた。
「観客参加型に移行します」
「何を言ってる?」
「あなた」
「はい」
「今から客席を煽ってください」
「無茶振りだろ!」
「観客との一体感が必要です」
「どこで覚えたその概念!?」
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「皆さん!」
リシアが突然、観客へ振り向く。
「盛り上がる準備はできていますか?」
「おおおおお!!」
歓声。
なんで乗るんだよ。
リシアがさらに続ける。
「声が小さいですね」
「煽り始めた!!」
「もっと!」
「うおおおおお!!」
観客、大盛り上がり。
【観客テンション急上昇】
【出力補正 回復】
「回復した!?」
俺の体に力が戻ってくる。
リシアがドヤ顔だった。
「これが“掴み”です」
「完全にライブ慣れしてる!」
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すると観客席から叫び声。
「兄ちゃんもなんか言えー!」
「えぇ……」
「掛け声!」
「コール!」
「なんで異世界にコール文化あるんだよ!」
【観客があなたを見ています】
「圧が強い!」
俺は半泣きになりながら叫んだ。
「も、盛り上がってるかー!?」
「うおおおおおお!!」
ドォォォォン!!
空に花火が百発くらい打ち上がった。
「過剰演出!!」
観客が大爆笑する。
パチパチパチパチ!!
リシアが満足そうに頷いた。
「成功ですね」
「基準がおかしい!」
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「王都へ緊急通信を送ります」
リシアが水晶を取り出す。
ブゥン、と光る。
すると空中に、中年男性の顔が映った。
威圧感のある顔。
いかにも偉い人である。
『何があった』
「辺境で災害級術者を確認しました」
『規模は?』
「山が少し消えました」
『は?』
団長の顔が引きつる。
だが、その瞬間。
後ろの観客席から大歓声が飛んだ。
『アンコール! アンコール!』
『リシア様ー!!』
『次は爆発系ー!!』
『…………』
団長が真顔になる。
『お前、何をしている?』
リシアは少し考えたあと、真面目な顔で答えた。
「……観客との一体感を検証中です」
「何を報告してるんだお前!!」
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