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異世界で最強の能力を得た俺、ただし発動条件が“拍手喝采”  作者: フィッシュよりビーフが好き


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第三話 MCが必要らしい


「アンコール! アンコール!」


「帰れ帰れ帰れ!」


 俺は広場の壇上――いつの間にか作られていた木箱の上で叫んでいた。

 なんで壇上あるんだよ。

 誰だ設営したの。


「兄ちゃん次は雷!」


「ドラゴン出せ!」


「服だけ燃やす魔法とかないのか!」


「どこの需要だ!」


 村人たちのテンションが高すぎる。

 しかも厄介なのが。

 盛り上がれば盛り上がるほど、俺の能力も強化されることだ。

 つまり今。

 この状況。

 かなり危険である。


________________________________________


「落ち着け……まず整理だ……」


 俺は深呼吸した。

 現状わかっていること。

 一つ。

 拍手で能力が発動する。

 二つ。

 歓声が大きいほど威力が上がる。

 三つ。

 観客が“期待”していると勝手に演出が追加される。

 危険すぎるだろ。

 特に三つ目。

 昨夜の【本日の演目】とか完全に意味不明である。

 そして今も。

 俺の頭上にはキラキラした文字で、【第二部 観客参加型イベント】 と表示されていた。


「だから勝手に進行するな!」


 村人たちは大喜びだ。


「参加型だってよ!」


「祭りじゃん!」


「酒持ってこい!」


 もう駄目だこの村。


________________________________________


 そのときだった。

 広場の後方から、静かな声が響いた。


「――随分と派手な魔力ですね」


 村人たちが振り返る。

 そこにはローブ姿の美女が立っていた。

 銀髪。

 整った顔立ち。

 そして胸元には、見覚えのない紋章。


「王国魔術師団だ」


 誰かが呟く。

 空気が少し変わった。

 魔術師団。

 つまり国家所属のエリートだ。

 銀髪の女は、俺をじっと見つめた。


「先ほど山を吹き飛ばしたのは、あなたですか?」


「ちょっと削っただけです」


「山頂が消えていましたが?」


「盛り上がりすぎたんです」


「意味が分かりません」


 ですよね。


________________________________________


 女は壇上へ近づいてきた。


「私は王国魔術師団所属、リシア・エルフェルト」


「どうも」


「あなたの魔法を確認したい」


「嫌な予感しかしない」


 リシアは真顔だった。


「先ほどの規模は国家級です。危険性の確認は必要でしょう」


「いやでも、観客がいないとそこまで――」


「では実験を」


 リシアが指を鳴らす。

 後ろの馬車から、老魔術師と兵士たちが出てきた。

 そして。

 どこからか椅子まで並べ始めた。


「なんで観覧席作ってんの!?」


「実験には見学環境が必要です」


「お前ら絶対楽しんでるだろ!」


 村人たちも移動を始める。


「お、第二ラウンドか?」


「魔術師団vs兄ちゃん!?」


「賭けるか?」


「賭博を始めるな!」


________________________________________


 十分後。

 広場には妙に整った観覧席が完成していた。

 おかしい。

 設営速度がおかしい。

 しかも。

【特別公演 王国魔術師団共同監修】

 という文字まで空中に浮かんでいる。


「だから誰が出してるんだよそれ!」


 リシアが真顔で聞く。


「……あれ、あなたが出しているのでは?」


「俺も知らん!」


 すると観客席から声が飛んだ。


「兄ちゃーん!」


「前説まだー?」


「え?」


「始まる前に喋るやつ!」


「なんで求められてるの!?」


 だが、その瞬間。

 ピコン、と頭上に文字が浮かぶ。


【観客満足度が不足しています】


「システムメッセージ!?」


【MCを実行してください】


「嫌だよ!」


【能力出力、現在12%】


「露骨に弱体化した!?」


 指先の火が、チャッカマン以下になっていた。

 リシアが引いている。


「……何ですかその魔法体系」


「俺が知りたい」


________________________________________


 観客たちがザワつき始める。


「なんだー?」


「喋らないのか?」


「空気冷えたな」


 すると頭上表示が変わった。


【観客テンション低下中】

【出力8%】


「下がるの早ぇな!?」


 ヤバい。

 このままだと本当に何も出なくなる。

 俺は覚悟を決めた。


「……えー」


 観客が静かになる。

 なんでこんな注目されてるんだ。


「本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます」


 パチパチ。

 うわ、反応返ってきた。


「本日の公演は!」


 なんで俺こんなことしてるんだろう。


「王国魔術師団全面協力のもと!」


 リシアが

「してませんが?」

みたいな顔をした。


「安全第一でお送りいたします!」


 その瞬間。

 ドォォォン!!

 空に巨大な花火が打ち上がった。


「安全第一とは!?」


 観客が爆笑した。

 パチパチパチパチ!!

 歓声。

 熱気。

 そして。

 体の奥から、とんでもない力が湧き上がる。

 リシアが目を見開いた。


「魔力反応、急上昇……!?」


 俺はゆっくり理解した。

 この能力。

 戦闘じゃない。

 ライブだ。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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