第三話 MCが必要らしい
「アンコール! アンコール!」
「帰れ帰れ帰れ!」
俺は広場の壇上――いつの間にか作られていた木箱の上で叫んでいた。
なんで壇上あるんだよ。
誰だ設営したの。
「兄ちゃん次は雷!」
「ドラゴン出せ!」
「服だけ燃やす魔法とかないのか!」
「どこの需要だ!」
村人たちのテンションが高すぎる。
しかも厄介なのが。
盛り上がれば盛り上がるほど、俺の能力も強化されることだ。
つまり今。
この状況。
かなり危険である。
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「落ち着け……まず整理だ……」
俺は深呼吸した。
現状わかっていること。
一つ。
拍手で能力が発動する。
二つ。
歓声が大きいほど威力が上がる。
三つ。
観客が“期待”していると勝手に演出が追加される。
危険すぎるだろ。
特に三つ目。
昨夜の【本日の演目】とか完全に意味不明である。
そして今も。
俺の頭上にはキラキラした文字で、【第二部 観客参加型イベント】 と表示されていた。
「だから勝手に進行するな!」
村人たちは大喜びだ。
「参加型だってよ!」
「祭りじゃん!」
「酒持ってこい!」
もう駄目だこの村。
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そのときだった。
広場の後方から、静かな声が響いた。
「――随分と派手な魔力ですね」
村人たちが振り返る。
そこにはローブ姿の美女が立っていた。
銀髪。
整った顔立ち。
そして胸元には、見覚えのない紋章。
「王国魔術師団だ」
誰かが呟く。
空気が少し変わった。
魔術師団。
つまり国家所属のエリートだ。
銀髪の女は、俺をじっと見つめた。
「先ほど山を吹き飛ばしたのは、あなたですか?」
「ちょっと削っただけです」
「山頂が消えていましたが?」
「盛り上がりすぎたんです」
「意味が分かりません」
ですよね。
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女は壇上へ近づいてきた。
「私は王国魔術師団所属、リシア・エルフェルト」
「どうも」
「あなたの魔法を確認したい」
「嫌な予感しかしない」
リシアは真顔だった。
「先ほどの規模は国家級です。危険性の確認は必要でしょう」
「いやでも、観客がいないとそこまで――」
「では実験を」
リシアが指を鳴らす。
後ろの馬車から、老魔術師と兵士たちが出てきた。
そして。
どこからか椅子まで並べ始めた。
「なんで観覧席作ってんの!?」
「実験には見学環境が必要です」
「お前ら絶対楽しんでるだろ!」
村人たちも移動を始める。
「お、第二ラウンドか?」
「魔術師団vs兄ちゃん!?」
「賭けるか?」
「賭博を始めるな!」
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十分後。
広場には妙に整った観覧席が完成していた。
おかしい。
設営速度がおかしい。
しかも。
【特別公演 王国魔術師団共同監修】
という文字まで空中に浮かんでいる。
「だから誰が出してるんだよそれ!」
リシアが真顔で聞く。
「……あれ、あなたが出しているのでは?」
「俺も知らん!」
すると観客席から声が飛んだ。
「兄ちゃーん!」
「前説まだー?」
「え?」
「始まる前に喋るやつ!」
「なんで求められてるの!?」
だが、その瞬間。
ピコン、と頭上に文字が浮かぶ。
【観客満足度が不足しています】
「システムメッセージ!?」
【MCを実行してください】
「嫌だよ!」
【能力出力、現在12%】
「露骨に弱体化した!?」
指先の火が、チャッカマン以下になっていた。
リシアが引いている。
「……何ですかその魔法体系」
「俺が知りたい」
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観客たちがザワつき始める。
「なんだー?」
「喋らないのか?」
「空気冷えたな」
すると頭上表示が変わった。
【観客テンション低下中】
【出力8%】
「下がるの早ぇな!?」
ヤバい。
このままだと本当に何も出なくなる。
俺は覚悟を決めた。
「……えー」
観客が静かになる。
なんでこんな注目されてるんだ。
「本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます」
パチパチ。
うわ、反応返ってきた。
「本日の公演は!」
なんで俺こんなことしてるんだろう。
「王国魔術師団全面協力のもと!」
リシアが
「してませんが?」
みたいな顔をした。
「安全第一でお送りいたします!」
その瞬間。
ドォォォン!!
空に巨大な花火が打ち上がった。
「安全第一とは!?」
観客が爆笑した。
パチパチパチパチ!!
歓声。
熱気。
そして。
体の奥から、とんでもない力が湧き上がる。
リシアが目を見開いた。
「魔力反応、急上昇……!?」
俺はゆっくり理解した。
この能力。
戦闘じゃない。
ライブだ。
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