第二十二話 観客ゼロの戦闘は、空気が重い
「北部街道へ向かう」
団長が言った。
王都の空気が少し変わる。
昨日までの祭り感はない。
兵士たちも真面目だった。
「魔王軍が動いている以上、放置はできん」
「まあ、それはそうだけど……」
俺は自分の指先を見る。
ポッ。
小さい火。
悲しくなるくらい小さい。
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すると。
リシアが真顔で資料を広げた。
【観客数と出力変動】
「データ化してる……」
「重要ですので」
グラフまで描かれていた。
「ゼロ人時、あなたは一般魔術師未満です」
「ハッキリ言うなよ!」
「ですが十人を超えると急激に上昇します」
「株価みたいに説明するな」
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シエラが腕を組む。
「合理的だ」
「え?」
「真面目派なら、当然そこを突く」
彼女は淡々としていた。
「人気が力になるなら、孤立させればいい」
「ライブ対策を戦術として語るなよ……」
そのとき。
リシアが小声で呟く。
「……つまり、客席破壊ですね」
「言い方ぁ!!」
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一時間後。
北部街道。
王都から離れた場所。
静かだった。
風の音しかしない。
誰もいない。
歓声も。
拍手も。
アンコール棒も。
「……嫌な静けさだな」
すると。
ピコン。
【現在の観客数:0】
「表示が追い打ちなんだよ」
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団長が周囲を見る。
「気をつけろ」
兵士たちが武器を構える。
空気が張り詰める。
そのときだった。
ズドォォォン!!
前方で爆発。
「うおっ!?」
煙の向こうから、
黒い鎧の魔族たちが現れる。
統率された動き。
無駄がない。
完全に軍隊だった。
中央には、
長身の男。
銀髪。
鋭い目。
黒い軍服。
いかにも“真面目な強敵”である。
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男は俺を見た。
「……災害級術者か」
「そう呼ばれてるだけで納得はしてない」
「報告通りだな」
淡々とした声。
シエラが顔をしかめる。
「ガルド将軍……」
「知り合い?」
「真面目派のトップ」
「うわ絶対面倒だ」
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ガルドは静かに言った。
「観客がいなければ脅威ではない」
「うっ」
図星だった。
しかも。
誰も歓声を上げない。
静か。
怖いくらい静か。
【出力補正:最低値】
「システムまで静かなんだよ……」
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ガルドが剣を抜く。
「終わらせる」
その瞬間。
空気が変わった。
殺気。
圧力。
本物の戦場だった。
昨日までと違う。
これ。
普通に怖いやつだ。
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俺は慌てて炎を出そうとする。
ボッ。
「ショボっ!?」
火球がリンゴサイズしかない。
ガルドが眉一つ動かさない。
「弱いな」
「ぐっ……」
そのとき。
リシアが氷壁を展開した。
ガギィィン!!
敵の斬撃を防ぐ。
「下がってください!」
「ごめん頼りねぇ!!」
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兵士たちも戦っている。
だが押されていた。
魔王軍、強い。
真面目に強い。
「うわっ!」
敵魔族の攻撃が飛ぶ。
俺は慌てて避けた。
怖い。
しかも。
静かだ。
誰も盛り上がらない。
誰も拍手しない。
誰も期待してない。
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そのときだった。
ガルドが低く言う。
「理解したか」
「……何を」
「お前は“空気”に依存している」
ズキッとした。
「熱狂がなければ何もできない」
「…………」
「脅威ではある。だが、欠陥だ」
俺は言い返せなかった。
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その瞬間。
ドォォォォォン!!
「え?」
全員が振り向く。
遠く。
丘の上。
黒マント。
爆発。
「来たぁぁぁ……」
ヴァルガだった。
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ヴァルガは腕を広げた。
ドォォォォン!!
「毎回うるせぇな!?」
「フッ……」
バァァァン!!
「会話SEやめろ!」
ヴァルガは満足そうに頷いた。
「やはり戦場には“華”が必要だな」
「来る場所間違えてるだろお前!!」
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ガルドが頭を押さえた。
「……なぜ来た」
「観客がいないと聞いてな」
ヴァルガが笑う。
ドォォォォン!!
「嫌な予感しかしねぇ!!」
ヴァルガは俺を見た。
「ならば作ればいい」
「……は?」
次の瞬間。
彼は杖を掲げた。
ゴゴゴゴゴ……。
空に巨大文字。
【緊急路上公演 開催中】
「戦場で何始めてんだぁぁぁ!!」
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