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異世界で最強の能力を得た俺、ただし発動条件が“拍手喝采”  作者: フィッシュよりビーフが好き


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第二十二話 観客ゼロの戦闘は、空気が重い


「北部街道へ向かう」


 団長が言った。

 王都の空気が少し変わる。

 昨日までの祭り感はない。

 兵士たちも真面目だった。


「魔王軍が動いている以上、放置はできん」


「まあ、それはそうだけど……」


 俺は自分の指先を見る。

 ポッ。

 小さい火。

 悲しくなるくらい小さい。

________________________________________

 すると。

 リシアが真顔で資料を広げた。

【観客数と出力変動】


「データ化してる……」


「重要ですので」


 グラフまで描かれていた。


「ゼロ人時、あなたは一般魔術師未満です」


「ハッキリ言うなよ!」


「ですが十人を超えると急激に上昇します」


「株価みたいに説明するな」


________________________________________

 シエラが腕を組む。


「合理的だ」


「え?」


「真面目派なら、当然そこを突く」


 彼女は淡々としていた。


「人気が力になるなら、孤立させればいい」


「ライブ対策を戦術として語るなよ……」


 そのとき。

 リシアが小声で呟く。


「……つまり、客席破壊ですね」


「言い方ぁ!!」


________________________________________

 一時間後。

 北部街道。

 王都から離れた場所。

 静かだった。

 風の音しかしない。

 誰もいない。

 歓声も。

 拍手も。

 アンコール棒も。


「……嫌な静けさだな」


 すると。

 ピコン。

【現在の観客数:0】


「表示が追い打ちなんだよ」


________________________________________

 団長が周囲を見る。


「気をつけろ」


 兵士たちが武器を構える。

 空気が張り詰める。

 そのときだった。

 ズドォォォン!!

 前方で爆発。


「うおっ!?」


 煙の向こうから、

 黒い鎧の魔族たちが現れる。

 統率された動き。

 無駄がない。

 完全に軍隊だった。

 中央には、

 長身の男。

 銀髪。

 鋭い目。

 黒い軍服。

 いかにも“真面目な強敵”である。

________________________________________

 男は俺を見た。


「……災害級術者か」


「そう呼ばれてるだけで納得はしてない」


「報告通りだな」


 淡々とした声。

 シエラが顔をしかめる。


「ガルド将軍……」


「知り合い?」


「真面目派のトップ」


「うわ絶対面倒だ」


________________________________________

 ガルドは静かに言った。


「観客がいなければ脅威ではない」


「うっ」


 図星だった。

 しかも。

 誰も歓声を上げない。

 静か。

 怖いくらい静か。

【出力補正:最低値】


「システムまで静かなんだよ……」


________________________________________

 ガルドが剣を抜く。


「終わらせる」


 その瞬間。

 空気が変わった。

 殺気。

 圧力。

 本物の戦場だった。

 昨日までと違う。

 これ。

 普通に怖いやつだ。

________________________________________

 俺は慌てて炎を出そうとする。

 ボッ。


「ショボっ!?」


 火球がリンゴサイズしかない。

 ガルドが眉一つ動かさない。


「弱いな」


「ぐっ……」


 そのとき。

 リシアが氷壁を展開した。

 ガギィィン!!

 敵の斬撃を防ぐ。


「下がってください!」


「ごめん頼りねぇ!!」


________________________________________

 兵士たちも戦っている。

 だが押されていた。

 魔王軍、強い。

 真面目に強い。


「うわっ!」


 敵魔族の攻撃が飛ぶ。

 俺は慌てて避けた。

 怖い。

 しかも。

 静かだ。

 誰も盛り上がらない。

 誰も拍手しない。

 誰も期待してない。

________________________________________

 そのときだった。

 ガルドが低く言う。


「理解したか」


「……何を」


「お前は“空気”に依存している」


 ズキッとした。


「熱狂がなければ何もできない」


「…………」


「脅威ではある。だが、欠陥だ」


 俺は言い返せなかった。

________________________________________

 その瞬間。

 ドォォォォォン!!


「え?」


 全員が振り向く。

 遠く。

 丘の上。

 黒マント。

 爆発。


「来たぁぁぁ……」


 ヴァルガだった。

________________________________________

 ヴァルガは腕を広げた。

 ドォォォォン!!


「毎回うるせぇな!?」


「フッ……」


 バァァァン!!


「会話SEやめろ!」


 ヴァルガは満足そうに頷いた。


「やはり戦場には“華”が必要だな」


「来る場所間違えてるだろお前!!」


________________________________________

 ガルドが頭を押さえた。


「……なぜ来た」


「観客がいないと聞いてな」


 ヴァルガが笑う。

 ドォォォォン!!


「嫌な予感しかしねぇ!!」


 ヴァルガは俺を見た。


「ならば作ればいい」


「……は?」


 次の瞬間。

 彼は杖を掲げた。

 ゴゴゴゴゴ……。

 空に巨大文字。

【緊急路上公演 開催中】


「戦場で何始めてんだぁぁぁ!!」


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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