第二十一話 祭りの後、めちゃくちゃ静か
翌朝。
王都は静かだった。
「……静かすぎない?」
俺は宿の窓から外を見た。
昨日まで。
•花火
•爆発
•歓声
•団長飛行
で地獄みたいに盛り上がっていた王都が、今日は普通に朝だった。
パン屋。
通勤。
馬車。
平和。
「なんか逆に怖いな……」
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宿の食堂へ降りる。
すると。
リシアが机に突っ伏していた。
「死んでる?」
「……魔力酔いです」
「フェス疲れじゃねぇか」
しかも。
髪ボサボサ。
目の下クマ。
完全に徹夜明けである。
「昨日、演出構成を考え直していたら朝になりました」
「ライブスタッフみたいなことするなよ……」
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一方。
団長はもっと酷かった。
「……胃が痛い」
机に突っ伏している。
その横では、
財務大臣が元気だった。
「素晴らしい結果でした!」
「お前だけ元気だな!?」
「経済効果は過去最大級です!」
「フェス運営の総括なんだよ!」
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そのとき。
ピコン。
【現在の観客数:0】
「うわっ」
数字だけでちょっと傷ついた。
昨日は一万八千とかだったのに。
ゼロ。
完全ゼロ。
【出力補正:なし】
ポッ。
俺の指先に、小さな火が出る。
線香花火レベル。
「……弱っ」
静か。
悲しいくらい静か。
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リシアが顔を上げた。
「やはり、観客依存が大きいですね」
「昨日あんなに暴れてたのにな……」
「大規模観客による精神高揚もあったのでしょう」
「言い方がライブ後なんだよ」
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すると。
宿屋の扉が開いた。
「失礼します」
入ってきたのはシエラだった。
黒髪。
軍服。
いつもの無表情。
だが今日は少し疲れている。
「お前、まだいたの?」
「……帰れなかった」
「なんで?」
「ヴァルガが“打ち上げ”に参加した」
「魔王軍にも打ち上げあるの!?」
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シエラは死んだ目だった。
「夜通し“演出論”を語っていた」
「うわぁ……」
リシアが少し反応する。
「……ちなみに、どのような?」
「食いつくな」
シエラは遠い目をした。
「“爆発は感情の余韻だ”とか言ってた」
「何そのポエム」
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そのとき。
コンコン。
ノック。
兵士が入ってくる。
「団長」
「……何だ」
「魔王軍の動きが確認されました」
空気が変わる。
団長の目が細くなる。
「場所は?」
「北部街道です」
「目的は?」
「不明。ただし――」
兵士は一瞬言葉を止めた。
「……観客を避けるように移動しています」
シエラが顔を上げた。
「っ」
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団長が低く言った。
「なるほど」
リシアも静かに頷く。
「対策してきましたね」
「え?」
シエラが苦い顔をする。
「……真面目派だ」
「何派?」
「“ライブ空間を作るな”って考える連中」
「ライブ空間って単語が戦略会議に出てるの終わってるだろ」
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団長は立ち上がった。
「つまり敵は」
「観客がいない場所へ誘導する気です」
リシアが続ける。
「そして、あなたを弱体化させる」
静寂。
俺は指先を見る。
小さい火。
昨日とは比べ物にならない。
「……あー」
今さら実感した。
俺。
マジで観客いないと弱いんだ。
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