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異世界で最強の能力を得た俺、ただし発動条件が“拍手喝采”  作者: フィッシュよりビーフが好き


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21/30

第二十一話 祭りの後、めちゃくちゃ静か


 翌朝。

 王都は静かだった。


「……静かすぎない?」


 俺は宿の窓から外を見た。

 昨日まで。

•花火

•爆発

•歓声

•団長飛行

で地獄みたいに盛り上がっていた王都が、今日は普通に朝だった。

 パン屋。

 通勤。

 馬車。

 平和。


「なんか逆に怖いな……」


________________________________________

 宿の食堂へ降りる。

 すると。

 リシアが机に突っ伏していた。


「死んでる?」


「……魔力酔いです」


「フェス疲れじゃねぇか」


 しかも。

 髪ボサボサ。

 目の下クマ。

 完全に徹夜明けである。


「昨日、演出構成を考え直していたら朝になりました」


「ライブスタッフみたいなことするなよ……」


________________________________________

 一方。

 団長はもっと酷かった。


「……胃が痛い」


 机に突っ伏している。

 その横では、

 財務大臣が元気だった。


「素晴らしい結果でした!」


「お前だけ元気だな!?」


「経済効果は過去最大級です!」


「フェス運営の総括なんだよ!」


________________________________________

 そのとき。

 ピコン。

【現在の観客数:0】


「うわっ」


 数字だけでちょっと傷ついた。

 昨日は一万八千とかだったのに。

 ゼロ。

 完全ゼロ。

【出力補正:なし】

 ポッ。

 俺の指先に、小さな火が出る。

 線香花火レベル。


「……弱っ」


 静か。

 悲しいくらい静か。

________________________________________

 リシアが顔を上げた。


「やはり、観客依存が大きいですね」


「昨日あんなに暴れてたのにな……」


「大規模観客による精神高揚もあったのでしょう」


「言い方がライブ後なんだよ」


________________________________________

 すると。

 宿屋の扉が開いた。


「失礼します」


 入ってきたのはシエラだった。

 黒髪。

 軍服。

 いつもの無表情。

 だが今日は少し疲れている。


「お前、まだいたの?」


「……帰れなかった」


「なんで?」


「ヴァルガが“打ち上げ”に参加した」


「魔王軍にも打ち上げあるの!?」


________________________________________

 シエラは死んだ目だった。


「夜通し“演出論”を語っていた」


「うわぁ……」


 リシアが少し反応する。


「……ちなみに、どのような?」


「食いつくな」


 シエラは遠い目をした。


「“爆発は感情の余韻だ”とか言ってた」


「何そのポエム」


________________________________________

 そのとき。

 コンコン。

 ノック。

 兵士が入ってくる。


「団長」


「……何だ」


「魔王軍の動きが確認されました」


 空気が変わる。

 団長の目が細くなる。


「場所は?」


「北部街道です」


「目的は?」


「不明。ただし――」


 兵士は一瞬言葉を止めた。


「……観客を避けるように移動しています」


 シエラが顔を上げた。


「っ」


________________________________________

 団長が低く言った。


「なるほど」


 リシアも静かに頷く。


「対策してきましたね」


「え?」


 シエラが苦い顔をする。


「……真面目派だ」


「何派?」


「“ライブ空間を作るな”って考える連中」


「ライブ空間って単語が戦略会議に出てるの終わってるだろ」


________________________________________

 団長は立ち上がった。


「つまり敵は」


「観客がいない場所へ誘導する気です」


 リシアが続ける。


「そして、あなたを弱体化させる」


 静寂。

 俺は指先を見る。

 小さい火。

 昨日とは比べ物にならない。


「……あー」


 今さら実感した。

 俺。

 マジで観客いないと弱いんだ。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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