第十六話 クール系、だいたい観客に負ける
『新キャラだー!!』
『かっけぇぇぇ!!』
『クール系だ!!』
パチパチパチパチ!!
「…………」
シエラは固まっていた。
なぜなら。
潜入任務中だからである。
本来なら。
目立たず。
静かに。
情報収集を行う予定だった。
なのに。
【観客人気 上昇中】
【“ミステリアス感”が好評です】
「何だその評価」
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俺は頭を抱えた。
「また変なの増えたぁ……」
リシアが興味深そうにシエラを見る。
「なるほど」
「何が」
「観客は“強そうな雰囲気”にも反応するようです」
「分析するな!」
シエラは眉をひそめた。
「……何なんだこの空間は」
すると。
『喋ったぁぁぁ!!』
『声低っ!』
『いい……』
「何が“いい”んだ」
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シエラは一歩下がった。
まずい。
このままでは目立つ。
潜入任務として致命的だ。
なので。
撤退しようとした。
だが。
『帰るの!?』
『もっと見たいー!!』
『無愛想なの助かる!!』
「助かるとは」
パチパチパチ!!
【塩対応ボーナスを確認】
「ボーナス!?」
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シエラのこめかみに青筋が浮かぶ。
「……黙れ」
『きゃあああああ!!』
歓声、爆発。
「何でだ!!」
俺が叫ぶ。
「お前、そのタイプ一番危ないぞ!」
「どういう意味だ!」
「嫌がるほど人気出るタイプだよ!!」
「最悪だ!」
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そのとき。
リシアが真顔で近づいてきた。
「あなた」
「……何だ」
「今の“間”は良かったですね」
「何の評価だ!」
「台詞のあと、一拍置いたことで歓声が増えています」
「ライブ講評をするな!!」
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すると。
観客席の子供が叫んだ。
『笑わないの!?』
「笑わん」
『うおおおおお!!』
「何で盛り上がる!」
【クール属性が観客需要と一致】
「需要分析やめろ!!」
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シエラは深呼吸した。
落ち着け。
これは任務だ。
まずは情報収集。
それだけ。
彼女は俺を見る。
「……お前が災害級術者か」
「そう呼ばれてるけど納得してない」
「貴様を観察する」
「おっ、ようやく潜入っぽく――」
「きゃー!!」
『ライバル会話だー!!』
「観客がうるせぇ!!」
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パチパチパチ!!
【“因縁っぽさ”を検出】
「検出するな!」
【観客はライバル展開を期待しています】
「勝手に物語を作るな!!」
すると。
シエラの背後に、ブワッと黒い魔力が漏れた。
観客がどよめく。
『おおおお……』
『敵っぽい!!』
『最高!!』
「最高じゃない!!」
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シエラがハッとした。
(しまった)
感情が漏れた。
潜入任務として失態である。
だが。
観客はさらに盛り上がる。
『戦うの!?』
『ライバルだ!!』
『バチバチだぁ!!』
ピコン。
【おすすめ演出:対峙】
「提案するな!!」
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その瞬間。
俺とシエラの立ち位置が、
勝手にズザザッ!!と離れた。
「うわっ!?」
「なっ!?」
中央に風が吹く。
マントが揺れる。
観客、大歓声。
『おおおおおおお!!』
「自動で構図作るな!!」
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しかも。
どこからともなくBGMっぽい音まで流れ始めた。
「BGMあるの!?」
リシアが真剣に頷く。
「因縁演出ですね」
「知ってるのかよ!」
「観客期待値が高いので」
「ライブ用語で全部説明できると思うな!!」
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シエラは完全に混乱していた。
「な、何なんだこの国は……!」
そのとき。
観客席から誰かが叫んだ。
『ライバルなら名乗れー!!』
「乗るなぁぁぁ!!」
だが。
空気が期待に満ちる。
パチパチパチ!!
【自己紹介演出を推奨】
「推奨するな!」
シエラの背後で、
ドォォォォン!!と謎の黒煙が爆発した。
「勝手に演出足すなぁぁぁ!!」
観客、総立ち。
『おおおおおおおお!!』
そして。
シエラは半ギレで叫んだ。
「……魔王軍諜報部所属、シエラだ!!」
一瞬の静寂。
次の瞬間。
『うおおおおおおおおお!!』
「正体バラしたぁぁぁ!!」
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