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異世界で最強の能力を得た俺、ただし発動条件が“拍手喝采”  作者: フィッシュよりビーフが好き


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第十六話 クール系、だいたい観客に負ける


『新キャラだー!!』

『かっけぇぇぇ!!』

『クール系だ!!』

 パチパチパチパチ!!


「…………」


 シエラは固まっていた。

 なぜなら。

 潜入任務中だからである。

 本来なら。

 目立たず。

 静かに。

 情報収集を行う予定だった。

 なのに。

【観客人気 上昇中】

【“ミステリアス感”が好評です】


「何だその評価」


________________________________________

 俺は頭を抱えた。


「また変なの増えたぁ……」


 リシアが興味深そうにシエラを見る。


「なるほど」


「何が」


「観客は“強そうな雰囲気”にも反応するようです」


「分析するな!」


 シエラは眉をひそめた。


「……何なんだこの空間は」


 すると。

『喋ったぁぁぁ!!』

『声低っ!』

『いい……』


「何が“いい”んだ」


________________________________________

 シエラは一歩下がった。

 まずい。

 このままでは目立つ。

 潜入任務として致命的だ。

 なので。

 撤退しようとした。

 だが。

『帰るの!?』

『もっと見たいー!!』

『無愛想なの助かる!!』


「助かるとは」


 パチパチパチ!!

【塩対応ボーナスを確認】


「ボーナス!?」


________________________________________

 シエラのこめかみに青筋が浮かぶ。


「……黙れ」


『きゃあああああ!!』

 歓声、爆発。


「何でだ!!」


 俺が叫ぶ。


「お前、そのタイプ一番危ないぞ!」


「どういう意味だ!」


「嫌がるほど人気出るタイプだよ!!」


「最悪だ!」


________________________________________

 そのとき。

 リシアが真顔で近づいてきた。


「あなた」


「……何だ」


「今の“間”は良かったですね」


「何の評価だ!」


「台詞のあと、一拍置いたことで歓声が増えています」


「ライブ講評をするな!!」


________________________________________

 すると。

 観客席の子供が叫んだ。

『笑わないの!?』


「笑わん」


『うおおおおお!!』


「何で盛り上がる!」


【クール属性が観客需要と一致】


「需要分析やめろ!!」


________________________________________

 シエラは深呼吸した。

 落ち着け。

 これは任務だ。

 まずは情報収集。

 それだけ。

 彼女は俺を見る。


「……お前が災害級術者か」


「そう呼ばれてるけど納得してない」


「貴様を観察する」


「おっ、ようやく潜入っぽく――」


「きゃー!!」


『ライバル会話だー!!』


「観客がうるせぇ!!」


________________________________________

 パチパチパチ!!

【“因縁っぽさ”を検出】


「検出するな!」


【観客はライバル展開を期待しています】


「勝手に物語を作るな!!」


 すると。

 シエラの背後に、ブワッと黒い魔力が漏れた。

 観客がどよめく。

『おおおお……』

『敵っぽい!!』

『最高!!』


「最高じゃない!!」


________________________________________

 シエラがハッとした。


(しまった)


 感情が漏れた。

 潜入任務として失態である。

 だが。

 観客はさらに盛り上がる。

『戦うの!?』

『ライバルだ!!』

『バチバチだぁ!!』

 ピコン。

【おすすめ演出:対峙】


「提案するな!!」


________________________________________

 その瞬間。

 俺とシエラの立ち位置が、

 勝手にズザザッ!!と離れた。


「うわっ!?」


「なっ!?」


 中央に風が吹く。

 マントが揺れる。

 観客、大歓声。

『おおおおおおお!!』


「自動で構図作るな!!」


________________________________________

 しかも。

 どこからともなくBGMっぽい音まで流れ始めた。


「BGMあるの!?」


 リシアが真剣に頷く。


「因縁演出ですね」


「知ってるのかよ!」


「観客期待値が高いので」


「ライブ用語で全部説明できると思うな!!」


________________________________________

 シエラは完全に混乱していた。


「な、何なんだこの国は……!」


 そのとき。

 観客席から誰かが叫んだ。

『ライバルなら名乗れー!!』


「乗るなぁぁぁ!!」


 だが。

 空気が期待に満ちる。

 パチパチパチ!!

【自己紹介演出を推奨】


「推奨するな!」


 シエラの背後で、

 ドォォォォン!!と謎の黒煙が爆発した。


「勝手に演出足すなぁぁぁ!!」


 観客、総立ち。

『おおおおおおおお!!』

 そして。

 シエラは半ギレで叫んだ。


「……魔王軍諜報部所属、シエラだ!!」


 一瞬の静寂。

 次の瞬間。

『うおおおおおおおおお!!』


「正体バラしたぁぁぁ!!」


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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