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第22話 伯爵と告白〜そうね、ロイドになら見られてもいい〜

――数週間後、学園の工房

「それにしても私が伯爵なんて、ね」

「いいじゃないですか! アリーシャさんが頑張ったからですよ!」


 あの日からしばらくして、私は国王陛下から伯爵位を賜った。

 なぜなら、母親は死亡、父親は生きているか死んでいるか分からない状態で地下に幽閉となったからだ。それに悪魔召喚を未然に防いだ功績というのもあるらしい。


「あの時の記憶、あまり残っていないのよね……」

「それだけアリーシャさんが必死だったんじゃないかなと思います。あんなアリーシャさん初めて見ましたから」

「ごめんなさいね。みっともない姿を見せて」

「みっともなくなんてないですよ! あれは、アリーシャさんにとって大事な、大事な感情の1つのはずです」


 よく考えれば、恐らくあの時私は怒りというものに囚われていたのだろう。正直なところ初めてのことでよく分かっていなかった。


「まあ、それにしてもオリハルコンの欠片とハイミスリル銀が貰えたのは嬉しかったわね」

「あはは……アリーシャさんは伯爵位よりそっち派ですもんね」


 国王陛下からの褒美であるオリハルコンの欠片とハイミスリル銀で義手の強化をした。今回はロイドと一緒に。回路設計や構造も2人で考えた。


「魔力インクを既存の材料で強化できたのは大きな収穫だったわ。ロイドのおかげよ」

「いえ、そんな……でも力になれて嬉しいです!」


 義手の強化は手のひらに魔力を放出できる機構を組み込み、魔力防壁が滑らかに展開できるようにした。至近距離で撃ち込めば魔力の衝撃を与えることもできる優れものだ。


「魔力防壁の展開の問題はなんとかしたかったのよ。本当によかったわ」

「排熱効率も上がりましたもんね!」


 いいものができた。それもロイドと作ったからだろう。きっと一人ではできなかったはずだ。


「……あのね、アリーシャさん。こんな時に言うのもどうかなって思うんだけど、でも、言わなくちゃいけないことがあって」

「……なにかしら?」

「実はね……僕、初めてアリーシャさんに声をかけた時、あれは偶然じゃなかったんだ」

「あら……」

「僕、アリーシャさんの魔力鋼弾を初めて見た時、どうしてもその義手のことが知りたくて……だから、アリーシャさんの後をつけて図書館でそれっぽい本を持って近づいたんだ」

「なるほど」

「アリーシャさんは一緒に本を読んでくれたけど、もし、こんなことしてたのがバレたら嫌われる、って思ったらなかなか言えなくて」

「そう……」

「でも、この先も僕はアリーシャさんと一緒にいたいから、だから、正直に話そうって思って……」


 ロイドはうつむきながら少し小さな声でそう語った。なるほど、そういうことだったのか。


「いいのよ、ロイド。そんなこと、私は気にしないわ。別に害意があったわけでもないし、何より今、仲がいいならそれでいいじゃない?」

「アリーシャさん……! ありがとう……!」


 別に合理性も何もなかったが、それでも構わないと私は今、思えた。少なくともロイドなら、それでいいのだ。


「そうね、ロイドは素直に話してくれた。だったら、私もロイドに何かしないといけないわね」

「あ、アリーシャさん!? な、なにしてるんですか!?」


 私は鍵とレースカーテンが閉まっていることを確認して、上の服だけ脱いだ。

 今、私は胸のインナーだけの状態だ。


「わ、わわっ……!」

「ロイド、接続部、見せてあげるって約束したでしょう? 今は丁度義手が外れてるから、見ていいわよ」

「接続部……す、すごい……なんて精緻で綺麗な……」


 ロイドを少しこちらに寄せると、手が接続部に触れた。

 なんだろうか、何も感じないはずなのに、ロイドの熱のようなものを感じる気がする。

 

 ロイドになら、どれだけ触られても、見られても構わない気がする。せめて飾り気のあるインナーならもう少しマシだっただろうか?


「アリーシャさん、右腕とお腹が」

「ええ。悪魔にやられてね。醜い火傷の跡よ。さ、そろそろおしまい……」


 見られてもいい。けれど、やはり火傷の跡は醜いものだ。

 

――ぎゅっ

「醜くなんてない。アリーシャさんが必死に生きた証だよ。火傷だってなんだって、全部含めて僕はアリーシャさんが好きだ」

 

 不意にロイドの小さな手に抱きしめられてしまった。

 そうか、これが温もりなんだ。

 

「ありがとう、ロイド」

 

 そっと、彼の頭を撫でた。今はしばらく、こうしていよう。

ここまでお読みいただき本当にありがとうございました!

これにて、アリーシャの物語は一度終わりを迎えます。

最後に明日の18:30、エピローグを掲載します。

どうか、エピローグにもお付き合いいただければ、と思います。

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