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第20話 ウィル一行のお手伝い〜殿下も人が変わったわね〜

――翌日

「おお……お代官様、ありがとうございます……」

「いいのよ、これくらい。食べる物がないと何もできないでしょう?」


 トライスと村々を回り、色々と物資を届けてきた。飛び地といえどそれなりに広いこの地では一つ一つ回るだけでもなかなかに時間がかかる。


「リグさんといらしたときは我々が失礼な発言を……」

「窮していればそうもなるわ。別に気にしていないから」


 そんなことを気にする必要はない。領民が窮していた、だから強めの発言が出た。それだけのことだ。気にするくらいなら領民の生活の改善策を考えた方が合理的である。


「防御柵なども修繕して下さり、ありがとうございます……」

「あれは応急処置よ。騎士団かフェリグ商会の人が資材を持ってくるからそれで作り直しなさい。2週間くらいかかるだろうけどそれくらいはもつわ」


 この村ならそれくらいでなんとかなるはずだ。間に合わなければまた私とニールで運べばいい。


「さて、ここはしばらくなんとかなりそうね。トライスさん、行きましょう」

「はい。一度屋敷に戻りますか?」

「そうね。今からだと暗くなり過ぎて他の村は回れないわ。戻りましょう」


 光魔法の照明があれば作業自体はできないこともないのだが、領民にも負担をかけるし、そもそもフィリーネくらいの光魔法でないと明るさが足りない。

 今は屋敷に戻ろう。



――3日後

「アリーシャさん!! お勤めご苦労さまです!!」

「我々も急ぎで参りました!!」

「え、ええ……早いのね」


 村々を飛び回り、ある程度までは物資を運んだ頃、朝の早い時間に三馬鹿が突如現れた。

 聞けば、飛び地の復興に居ても立ってもいられないとなり、三馬鹿だけで馬に乗ってやってきたそうだ。


「ウィル殿下、護衛もつけずに大丈夫だったのですか?」

「僕もレベル43だ。それなりには自衛できる。グレイドとジェイスもいるし問題はない」


 王子が言うには、グレイドとジェイス、そして自分自身を復興の人員として使って欲しいとのことだ。

 その上で、レベリング指南もして欲しい、と。


「なるほど。ではこうしましょう。レベリング指南は1日おきにします。その間で復興の手伝いをして下さい」

「分かった。それで頼む」

「私の馬と御三方の馬では速さが違いすぎるので別行動になります。地図に示した村に行き、トライスの指示で復興のお手伝いをお願いします」

「了解した。すまない、押しかける形になったのは許してくれ」

「構いません。少々は驚きましたが人手があるのはありがたいので」


 王子やエリートを部下の部下のように使う形になるが三馬鹿がそれを望むなら別にいいだろう。

 少し、復興が早くなりそうだ。

 しばらくしたら次の村に出発しよう。



――昼間、ウィル一行

「グレイド、その板はもう少し右で頼む!」

「はいよ! ウィル」

「ジェイス、そっちの溝の強化はどうだ?」

「できているよ、この調子なら全ていけそうだ」


 アリーシャ嬢と別れ、僕たち3人とトライスはアリーシャ嬢が応急処置をした村に防御柵などを作るためにやってきた。

 当然だが、正体は隠している。


「よっ、と。しかし、アリーシャさんが壊れかけた防御柵に組み込んでいた魔力回路、私に分かる範囲でも凄まじいものでしたね……」

「正直、俺はあのままでもいいんじゃ、とは思ったがな」

「長くはもたないから早めに変えてほしい、とのことだったが……」


 壊れかけた防御柵に組み込まれていた魔力回路はジェイスも解読できないほど高度なものだった。

 だが、アリーシャ嬢曰く、基礎が腐った防壁に鉄板を雑に打ち込んだだけ、とのことで早急に交換したかったのだそうだ。


「防御柵の設置自体はジェイスの魔法と村人の人手があるから今日中にはほとんど終わりそうだな」

「村人への必要物資の聞き込みはトライスさんがやってくれていますし、私たちは作業に集中しましょう」

「そうだな。僕もなるべく全員に分かりやすいように指示を伝えるよ」


 防御柵がなくては村人も不安になる。とにかく僕たちにできることは早急な建設だ。夕方までには完成させたい。


「御三方、村の復興をお手伝い下さり感謝いたしますじゃ」

「おっと、村長さんか」

「お体の方は大丈夫なのですか?」

「確か、肺の病にかかっている、と聞いたが……」


 不意に村長が声をかけてきた。アリーシャ嬢によると、最初に会った時は寝込んでいたらしいが。


「お代官様から万病の霊薬を頂きましてな。すっかり元気ですじゃ。なんと感謝すればよいやら……」

「ま、万病の霊薬だってぇ!?」

「調薬の素材も調薬そのものも難しいとされるものなのですが……」

「アリーシャ嬢ならどちらもやり遂げそうだ……」


 聞けばアリーシャ嬢、この村の病人全てにその薬を使ったらしい。本当にとんでもない人だ。

 合理的だからという理由でこんなことをしているのだろうが、思いついても普通はできない。


「そうじゃ、御三方にお願いが。村の周りの魔物を倒して欲しいんですじゃ」

「あー、やっぱり出るのか」

「アリーシャさんが間引いたとは言っていましたが」

「流石にまた湧いてきたのだろうな。行こうか、二人とも」

「おうよ!」

「お任せを」


 剣や魔法を使える人員は僕たち以外にほぼいない。トライスの聞き込みもそろそろ終わるだろうし、建設の指示を彼に任せて魔物を退治するとしよう。



――夜、アリーシャの屋敷

「特に不調はなさそうね。外装を戻して……」


 よし、今日の義肢の手入れは終わりだ。酷使はしていないが、やはり手入れはこまめにしておかないといけない。

 今日回った村の周辺でも魔物の討伐を求められ、それなりには狩ったのもある。


「三馬鹿は上手くやったようね」


 トライスからの報告で、三馬鹿が村の復興にかなり役立ったと聞いた。

 グレイドのパワーもジェイスの魔法もそこらの騎士や魔導士より良いらしい。ウィルの現場指揮も冴えていたようだ。


「夜は……静かな時間ね」


 自室のソファに腰掛け、ある意味で当然のことをつぶやく。少し暗くした魔導ランプの光が少し、眠気を誘う。そこまで疲れている感覚ではないのだが。


「そろそろ寝るのがよさそうね……ん?」


――コンコン

 窓ガラスを叩く音がする。誰だろうか? 夜もずいぶんと深まってきたように思えるが……


――ガチャ

「あら、ウィル殿下。どうされたのですか?」

「夜分にすまない。だが話したいことがあってな」


 窓の外にいたのはウィル殿下だった。しかもなにやら深刻そうな面持ちだ。どうしたのだろう?


「中に入られますか?」

「いや、いい。すぐに終わらせるつもりだ」


 聞けば、ウィル殿下は悪魔召喚のことやそれに付随する魔物との大規模戦闘を国王から聞かされて危惧していたそうだ。

 

 自らが強くならなくてはと思う反面、鍛えても鍛えても強くなった気がしないことに焦りを覚えているらしい。

 どうりで、最初のレベリング指南の時に態度が違ったわけだ。


「グレイドやジェイスの無礼は俺の責任でもある。許してくれとは言わない。だが教えてほしい。どうやったらそこまで強くなれる?」

「レベルを上げたら強くなりますよ。今やっているじゃないですか。ウィル殿下はさんば……いえ御三方の中でも特に伸びていますし」

「それはそうだが……そうじゃないんだ。何かこう、心持ちというか」

「心持ちと言われましても。私はどこか壊れた化け物みたいなものですし、真っ当な人間のウィル殿下の参考にはなりませんよ」

「そんなこと……いや、俺の口から言えたことじゃないな。だが忘れないでほしい、アリーシャ嬢もまたこの国の、馬鹿な王子の大切な臣下なんだ」

「はぁ」

「話したいことというのはこれだけだ。失礼する。時間を取らせてすまなかった」


 ウィル殿下はそのまま足早に去っていた。思うことは色々あるのだろうが、私は王族ではない。だからよく分からないというのも事実だ。


 今日はもう寝よう。明日のレベリング指南もある。

 少し効率を上げよう。そうすればウィル殿下の不安も少しはマシになるはずだ。



――――

――王都、ダグライル伯爵屋敷

「クソッ、アリーシャのやつめ、なぜこれ程までに……!」


 飛び地の厄介事をアリーシャに解決させようとした後から、王国の監視が日に日に強くなり、私はほとんど身動きの取れない状態が続いていた。


「フェリグ商会との繋がりに陛下と王妃主催のオークションまで……アリーシャがなぜあれ程までの品を……!」


 アリーシャは一体あれをどこから持ち出したというのだ。税さえ取れれば私の懐に入った物を……!


「飛び地の復興とやらに手を出しているのもマズい。このままでは飛び地管理の件も全て露見して……」


 ダメだ、全てが後手だ。

 こうなったら、かくなる上はアレしかない……!


「10年前の再現だ。生贄は……そうだ、やつらを使おう!」


――――

お読みいただきありがとうございます!

物語もついにクライマックスです!

明日も18:30に更新予定です!

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