第19話 飛び地復興の始まり〜合理的にやってるだけよ〜
「オークションの売り上げはこんな感じかな」
「あら、凄いわね」
騎馬大会から数日後、半分ほどオークションが終わったらしく私はリグに呼び出されていた。
「金貨5000箱に聖金貨1000枚以上、大龍金貨まででてくるなんてね……」
「貴方の商会に金庫の空きがあってよかったわ」
「それはそうだけど……もう少し驚いたらどうだい?」
金額は大きいが飛び地の復興に必要だから集めているだけであってそこに驚きと言われても何にいくら必要かが気になるだけなのだ。
「商会は金貨の計量や落札品の配送、その他もろもろ手続きで大忙しだよ。ありがたいことだけどね」
「トライスからフェリグ商会にも必要品のリストが届いているはずよ。王城とも連携して上手く用意してほしいわ」
「ああ。それなら少し前からもうやっているよ。オークションの利益が確定してなかったけど陛下が構わないって」
「それは助かるわ」
なるべく早く届けなくてはならない物もある。聞けば明日にでも飛び地へ向けて出発できるだけの最低限の準備があるらしい。
「それじゃあ私は失礼するわ。準備もしないといけないし」
「ああ。引き続きオークションは任せてくれ」
行こう。多少は急げるといいのだけど。
――翌日
「アリーシャさん、気をつけて行ってきて下さいね」
「ええ。大丈夫よ」
「私たちも後で合流しますから!」
翌朝の王都正門前、私はアヤとメア、ロイドに見送られて飛び地へ行こうとしていた。
「ごめんなさいね。どうしても急ぎだから一緒にいけなくて」
「いいんです! 早く領民さんたちに必要な物を届けてあげて下さい」
「馬車だと時間がかかりますもんね」
ロイドたちには悪いが、今回は急ぎだ。のんびり行くわけにもいかない。だから私だけ単騎で行く。で、その馬というのは……
「我が主よ! いつでも出発できます!」
「ニールもごめんなさいね。鞍と鐙は間に合ったのだけど」
「問題ありません! 飛び地まで全速力でお運びいたしましょう!」
ニールの足なら他の馬より圧倒的に速い。この脚力なら悪路も難なく走れるだろう。
「アリーシャさん!! 飛び地の領民の救済、慈悲深い御心のなせる業と思います!」
「その御業のとなりで再び我々に指南をつけて頂けること、大変ありがたく存じます!」
上官に接するかのように私に声をかけるのはなんとあの三馬鹿のグレイドとジェイスである。何か悪い物でも食べたのかと思わんばかりの態度の変わりようだ。
「すまない、アリーシャ。王家として飛び地の領民の救済に直接手を出せなかったこと、心苦しく思う。どうか、頼んだ」
「そんな、代官として当然のことをするだけですよ」
ウィル王子も2人の様になっていないとはいえ変わり方が変わり方だ。どうしたんだろうか。
まあいいか。人の心の変わりようなんて分からないし。
「ニール、荷物が多いけど大丈夫かしら」
「問題ありません! 万一にも遅くなるなどないでしょう」
ニールには大きめのトランクケース型マジックバッグを数個つけている。私自身も大型のマジックバッグを背負っているから重量はかなりのものだ。
しかしどうしても、領民に配る物資の最低限の分として必要だったから仕方ない。
「行きましょうか、ニール」
「はい! しっかり掴まっていて下さい!」
ニールが大地を蹴り始めると、すぐに見送りが遥か彼方になっていく。やはり速いな、ニール。これならすぐに着くだろう。
――翌日、昼
「いやぁ、驚くほど早いね」
「ええ、ニールのおかげよ」
飛び地についた私は代官の屋敷でトライスを拾い、彼の提案で口調を崩した。今は領地の村々を駆け巡っている。
食料や薬などは急ぎで届けるべきだと思ったし、そうしなければ村々の人口は減り、再建は遅くなる。
食べる物もくれないような代官では信用してくれないだろうとも思うのだ。
「村民には遅くなったと頭を下げたけど納得してもらえたかしらね?」
「アリーシャさんのその姿勢と誠実さ、優しさは十分に伝わっていると思いますよ」
「別に代官であれば当然のことをしているだけだと思うけど」
代官は税の徴収をしなくてはならない。そのためには税を納める村民が必要だ。
その村民が弱れば税は少なくなるし、搾り取れば枯れてしまう。
前の代官は取るばかりで肥料を与えないから村民は弱り、税収も苦しくなっただけである。
「その当然ができる代官がどれだけいることか……」
「やらなきゃ回らないわよ。私は飛び地の代官として、村民に納める物を納めて欲しいから効率的に基盤を整備しているに過ぎないわ」
この飛び地の代官になったのも、自分があのダンジョンを自由に使いたいからだし、税率を下げたのも使える資金の確保のためだ。
資金に関してはオークションで現状では別段税に頼らなくてもよくなったがそれは結果論でしかない。
「当面の間、税は取らないなんて言える代官はそういないですよ」
「……貴方ね、枯れた川から水が引けるとでも思ってるの?」
「いやまぁ、そうなんですが……」
いずれにせよ、税収は必要だ。それが今は別に何とかなるというだけの話で。
「世の代官っていうのは非効率な存在なのね。代理の貴方がそうでないことを願ってはいるけど」
「は、はい……これじゃあどっちが教えられる側か分からないな……」
トライスが何か言っているようだが最後の方はよく聞こえなかった。
それより次の村だ。
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