剣を探そうー6 風呂場でゆっくり話そうよ
風呂場――湯船にて。
我思ふ、有限の彼方、遠ひ遠ひ昔の仲間に思い馳せ我の記憶と今目の前にいる人物。
胸ふくらみ一物を失いし者、それは――――女!?
まさか盗賊の兄貴が姉御だったとは……。
「俺とセバス以外にこのこと知ってるのは?」
「賢者のじいさんと女戦士くらいか……あと女プリーストも薄々気づいていたとは思うでござるよ」
「ほぉ、ぶっちゃけ知らないのは俺だけってわけね」
「性別など私には大したことではないでござるに」
「そうなのか?」
「むしろ人ではない故そちらのほうが……」
「あーなんか昼間も言ってたな。姉御は何者なんだ?」
「確かに興味ありますね。強さも普通の人間より格段に強いですし」
「ううむ……向こうに行ってから話そうと思っていたでござるが……一応こう見えても天使でござる」
俺は急に姉御がうさん臭く見えてきた。
「天使……ねぇ、セバスどう思う?」
「魔族の私に聞かれましても……むしろ神から勇者とみなされた勇者様はどうお思いで?」
「実際女神とあったが使えないの一言だった。何か証拠とかないの? 姉御」
「証拠……でござるか……ううむ……では一つお話を……」
「ほぉ」
「勇者は半分人間ではなく対魔王用に人工的に作られ――」
「ストップ」
「勇者様! 今いいところではございませんか! なぜにストップなのですか!」
「……これは俺のプライバシーに関わる」
俺は急に胃痛がしてきたことに不快感を覚える。
なぜなら俺の出生に関わることだからだ。これを知っているのは王国の一部と王様と側近くらいだ。ただの冒険者である盗賊の姉御が知るはずもない。知っているとすれば――神界の関係者だろう。それだけで証拠としては十分だ。
「姉御が天使なのはわかった。それで目的は?」
「もちろん勇者のサポートでござるよ」
「でも天使っぽいこと全然してなかったじゃん」
「一応下界に下りれば力は封印されてしまうので仕方ないのでござる」
「それで盗賊になりすましてたのか?」
「まぁ下界の姿がもともと盗賊なのでそのまま王国の国王にお願いしていれてもらったでござる」
「ふむ」
「勇者様、仲間との出会いは旅の道中で仲間にされたのではないのですか?」
「ん……セバスはしらなかったか」
「はい、お聞きしておりませんので」
「出会いは基本王国からの紹介だな」
「ほぉ」
「元々親の顔も知らず温室育ちで十六歳まで徹底的に剣技やら座学、軍隊の指揮とかいろいろと教わった後に王国推薦の冒険者の中から剣鬼が見て「ほれ、仲間だ」って言って出会わされた。それから冒険で死んだ仲間の枠は剣鬼がまた見繕って補充の繰り返しかな」
「そうだったのですか。てっきり王国を出た後で仲間にしたのかと」
「基本王国近隣から冒険して徐々に行動域を広げていったな。賢者のじいさんの教えもあったからな」
「さすが賢者様、堅実ですね。冒険に出たことのない人間がいきなり魔王城というのも無謀な話ですし時には近道より遠回りを選ぶことで結果最短ルートを通っているということもあります。賢者様の性格から考えておそらく魔王城で魔王様と対峙した時には勇者様にとって最短ルートだったのでしょう」
「まぁ冒険で鍛えられつつ現実も知りながら魔王城には到達したことは間違いない」
「それにしても天使が仲間にいたとは誤算ではないですか? たった一人で魔王様と戦ったのは……」
「ううむ……その時は知らなかったしなぁ。ただ一人のほうが全力を出せると思って無鉄砲に突っ込んだだけだし」
「私も女戦士もすぐに追いかけようとしたでござるが賢者殿が制止なされたのでござる」
「じいさんが?」
「うむ。「勇者様なら一人でも大丈夫、三日経って帰ってこぬなら王国の兵士全員連れて魔王城を攻め落とす」と言って王国に帰還したでござる」
「それで神がでてきて止めたと」
「うむ。まさか女プリーストが結婚するとはおもわな――いや、あの女は尻軽と私は最初から見抜いていたのでさもありなんと思ったでござる」
姉御がローブ越しにニタリと笑う。
何か怨恨でもあったのか?
「なんで尻軽だとおもったんだ? 結局は尻軽だったが」
「それはいつもいつも私が獲った獲物を「私が調理して勇者様に食べてもらうわ!」とか言っていつも勇者の隣を陣取りまるで全ての功績を自分のものにしようとする悪女でござったからな!」
「えっ姉御も「あーん」したかったってこと?」
「い、いや! そんなことはないでごごごござるに!」
「まぁ確かにいつも見てる風景では姉御が獲ってきて爺さんが火を焚いて女戦士が毛を毟ったり内臓をとったり……そして最後にはプリーストが調理してたっけ……俺だけ何もしてないなぁ」
「ゆーくんは何もすることはないでござる! 戦いにさえ専念すればいいでござる!」
「センキュ」
俺はありったけの真心を込めて呟く。




