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剣を探そうー1 目覚めし勇者

 俺は目が覚める。

 何か大事な夢を見ていたような……思い出せん。

 う~むと呻きながら天井を眺めていると、太ももに何か乗ってることに気がつく。

 何が乗っているのか確認するために体を起こすとフェリスが俺に乗っかっていた。まぁ重さ的にそうだろうとは思っていたが……。

 そしてベッドの端にはリスティが顔をベッドに乗せて寝ている。まるで病人を看病していたかのようだ。一体なんなんだろうか?

 というか俺は戦場にいたはずじゃ?

 俺はリスティを揺する。


「起きろ、リスティ。おい」

「ん~、もうちょっと……」


 俺はリスティの頬をつねる。


「いた、痛いです!」


 目覚めたリスティが頬を摩りながら俺を見て目を丸くする。


「ゆーくん! 起きたのですか!!」

「お、おう……」

「!! やったぁぁぁ!」

「大声出すなよ」


 リスティの大声にフェリスが起き、


「ゆーくん起きたのん!」


 力強く俺の腹に抱きつく。

 一体何なんだ? この状況は――

 俺は困惑しながら、それでもフェリスやリスティの喜びざまに「まぁいいか」と思った。


「お前らここで何やってんだ?」

「ゆーくん何も覚えてないん?」


 フェリスの言葉に俺はフェリス、リスティを交互に見つつ考える――が特に覚えていることはない。


「うん、全く覚えてないや……」

「そんな……あんな事があったのに?」

「覚えてないものは知らん。それより飯が食いたいな」

「……そうですね。朝食でも食べながら説明しましょうか」


 俺は相槌をうちベッドから出る。

 下半身はズボンを履いているが、こんなズボン俺は持ってない。誰のだろうか? そして上半身は裸だが包帯がグルグル巻きにされている。 俺は頭をポリポリと掻くがどうやら頭部にも包帯が巻いてあるらしい。


「邪魔だな」


 俺は包帯を外し地面に捨てる。外を見ると青空だ。テーブルの上に乗っている水差しからコップへと水を張りそれを飲み干す。

 そしていつもベッド横に置いてある聖剣を、慎重に振り返りながら見て体が硬直する。

 何があったかわからないがこんなことは初めてだ。聖剣から嫌な雰囲気を感じ手に取ることを体が拒絶している感じだ。

 俺は聖剣から目を外しもう一度水を飲み干す。


「なんだかなぁ……」


 仕方なく俺は何も持たずに食堂へと行く。聖剣を持つと何か嫌なことが起こりそうだからだ。




 食堂へ着くともうすでにみんな集まっておりまーちゃんはすでに食べ終わっていた。

 そして何故か古い顔――セバスともう一人怪しい格好の人物がいる。


「セバス?」


 俺は座りながらセバスを見つめる。

 セバスはまーちゃんの後ろ斜めに立ちつつ優雅に紅茶を飲みながら、


「勇者様、久しぶりです。それと――」

「勇者、久しぶりでござるな」


 えっ誰? セバスは知ってるけどこんな怪しい人物に心当たりがない。そんな顔をしていたのか怪しい人物がすぐに答える。


「わ、私でござる! 盗賊(ローグ)でござるよ!」

「いやいや、盗賊(ローグ)の兄貴はもう死んでるだろう。もしかして子孫か?」

「本人でござる! この声を忘れたでござるか!」

「声とか言われてもなぁ……しかも語尾に「ござる」言ってるし……」


 四百年前の知り合いの声なんてすでに忘れている。言われた言葉なら覚えているが……。セバスに視線を移すとただ目を閉じ頷く。


「えーと……盗賊の兄貴だったら……俺に投げナイフのやり方を教えてくれた時に言ったこと覚えてますか?」

「お前は勇者だ。もし私が死んでもみんなを守れるように私の技を覚えておけ……でござるか?」

「ふむ。それを覚えてるのは盗賊の兄貴だけだな。本物なのはわかったがどうやって延命を?」

「私は人間じゃないでござる。だから長寿なのでござる」

「ふむ、魔族だったのか?」

「違うでござる!! その話は今度するでござる。それより今は……」


 盗賊の兄貴が視線をルナへと向ける。

 それに気づきルナが「ふぇ?」と変な声を上げる。


「この女は女神のようでござろうが?」


 その言葉にルナが硬直し一瞬の静寂が訪れる。


「まぁなんだ。俺に聖剣を渡した女神だがそれが何か問題か?」

「その女神がなぜ今勇者と共にいるのでござる? これ以上勇者に過酷な運命をもたらす気でござろうか?」

「い……いえ、そんな事は……」

「何か隠しているでござるな? それに勇者が暴走していたのはなぜでござる?」

「暴走? 俺は暴走していたのか?」

「ふむ、勇者は覚えていないのでござるか……姫君、説明を頼むでござる」


 急に振られリスティが戸惑いながらも、


「ええと……ゆーくんが大技を繰り出した後その場に倒れこみ黒い靄がゆーくんを包んで……そのまま敵味方関係なく襲ったんです」

「ほぉ……」

「それでまーちゃんとリンさんが必死に止めていたらセバスさん達が急に現れて……光が……その……」


 急に歯切れが悪くなったリスティにかわりセバスが一歩前に出る。


「神を宿した人間の少女が勇者様を助けたのです」

「神を宿した? 言っている意味が分からん」


 俺の頭の上にはてなマークでもついていたのか補足説明をしてくれる。

 元の世界で何があったのか。そしてなぜここにセバスと盗賊の兄貴がいるのかも。


「それで? その少女――マリアとかいう子供はどこにいるんだ?」

「今は部屋で眠っています。どうやら実験の後遺症か……それとも神の力を人間の体で行使した代償か……今だ目覚めません」

「ふむ、その子はそのまま休ませるとして……聖剣は折れたんだな?」

「……ええ」


 重苦しい声でルナが俯く。


「聖剣じゃなくて魔剣――いや、邪剣じゃねぇか!!」


 俺がボソリと呟くとルナの体がビクリと反応する。


「それよりも……戦争はどうなった?」

「戦争は中止されました。今までにない事態でしたので……」

「もしかして……負傷者の医療費を俺は賠償しないといけないとか?」


 実際聖剣もきになるが今はこっちの方が気になる所だ。


「いえ、その件に関しては両国で負担して最強魔王の情報も中央国に知らせてあります」

「おし、俺は負担しなくていいんだな?」


 一応念押ししておく。


「はい。それは確かです」

「盾はどうなるんだ?」

「もちろん貰えませんよ?」


 当たり前じゃないですか的な顔をするリスティ。まぁ仕方ないか……。


「ですが……今回は私が王女の権限でなんとかしてみせます」

「まじ?」

「はい」

「何か……裏とかある?」

「!! ありませんよ! 失礼な!」

「う……うん、まぁありがとな」

「ふふっ、今回は本当に大変な目にあわされました」

「それにしても暴走とはな……聖剣も使えないし――」

「それなら今日はこのまま休んで明日王城に行きましょう。宝物庫にドワーフ産の剣があったはずです」

「おお、至れり尽くせりだな」

「私ができることはこれくらいですから」


 そう言いながらリスティが微笑む。俺はそれを見ながら朝食を食べ終えリンゴ酒を飲み干す。

 ――今日は一日静養するか。

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