剣を探そうー2 静養の一日
「それじゃ俺部屋に戻るわ」
そう言いながら俺は食事を終え席を立つ。
俺が部屋に帰ろうとすると後ろからリスティが、
「あの、後でお部屋に行ってもいいですか?」
俺は振り返り当然の如く答える。
「ん、別にいいよ」
それを見て盗賊の兄貴もこちらをじっと見て、
「わ、私も行ってもいいでござるか? その……色々と話したいこともあるでござるに」
「ああ、そうだな。盗賊の兄貴とは久々に会ったし色々と積もる話もあるしな」
「ああ、そうでござる!」
「それでは私も後で勇者様に紅茶をご馳走しに行きますかな」
「セバスの紅茶か……懐かしい。ありがたいよ」
「ふふっ、ご期待にお答えしますよ」
セバスが顎髭を撫でながら自慢げに言い放つ。
俺はそれを背に部屋へと戻る。
部屋に戻り机の横の床に無造作に散らばっている本を一つ取りベッドへとダイブする。
そして食堂からちょこんと当然の如くついてきている小動物――フェリスに声をかける。
「フェリスもどれか本一冊とって横に来ていいぞ」
「うい!」
床に無造作に置かれた本を色々と見つめながら読む本を決めかねているフェリスを横目に俺は「王国恋愛物語」を読み始める。
庶民の女が上級貴族に見初められ夜な夜な逢引を繰り返し困難を乗り越え最後には王国を出て冒険者として生計を立てるという物語だ。
これがなかなかに面白く俺ははまっていた。
今は四巻目で冒険者となった上級貴族が違う国で庶民の生活に戸惑う姿がおもしろい。
「ゆーくんのおすすめはなんなん?」
「もちろん「王国恋愛物語」だ」
「うちも読むん!」
「そこらに埋まってるから探せ」
「うい!」
バタバタと本を探す音を聞きながら俺は本のページをめくる。
数ページめくった頃、俺の横にボフリとフェリスがベッドに乗り込む。そして本を一緒に読みだす。
一時間程経っただろうか?
部屋のドアを誰かがノックする。
「あいてるぞ」
ギィと音を立てて部屋の扉が開かれる。
「あの……よろしいでしょうか?」
「ん……」
扉の方向に目をやるとリスティが扉を開け佇んでいた。
「まぁベッドに座れよ」
「は、はい」
トコトコと歩いてきてリスティが俺のベッドに座る。
「何の話だ?」
「あの……武器の件なんですけど……」
「……ああ、折れちまってるからな」
「そ、それでですね。私にいい案があるのですよ」
「話してみ」
「朝に話した通り王国の宝物庫にドワーフ製の剣があるんです。そして今回の戦争の報酬の盾で冒険者として復帰という事になりませんか?」
「うーん……そんな簡単にいくかなぁ」
俺は本を読みながら半分聞き流しつつ答える。
「で、でも剣と盾さえあれば冒険はできます!」
「そういうことじゃなくてさ……俺の体暴走したじゃん?」
「は、はい……」
「どこかおかしい所とかないか調べてからでも遅くないとおもうんだ」
「た、確かに……」
「ちょっと一週間程休暇がほしいな……」
「一週間!? 長すぎます! 明日王城に行きましょう!」
「明日? ちと早くない? どう思うフェリス」
「今集中してるのん」
「は、早くないですよ! 行きましょう!」
「うーん……まぁ気がのればかな……」
「どうしたらゆーくんの気がのるのですか?」
「夕食に高級酒とワイバーンプリン。主食にはちょっと値段の張るおいしいお肉がいいな」
「わかりました! すぐさま手配します!」
「あ……」
やっぱもう少し待って……と言おうとしたが既に時遅し。リスティが一目散に走っていった。
どうして俺をそう冒険に連れまわしたいのか……はぁ、もうちょいゆっくりのんびりしたいよ。
一時間程して扉からコンコンと軽いノック音が聞こえる。
「あいてますよー」
音もなく扉が開く気配を感じ目線をやると珍しい組み合わせがいた。
「盗賊の兄貴にセバスか。まぁ席にかけろよ」
さすがに大の大人を二人ベッドに座れという気は俺にはなかった。
盗賊の兄貴が席に座り、セバスは机に紅茶セットを準備している。
俺は胸元に本を開いたまま置き盗賊の兄貴に話しかける。
「盗賊の兄貴は四百年どうしてたんだ?」
「よくぞ聞いてくれたでござる! 勇者が旅立った後、王国で勇者の援軍の兵士を編成中にに神が現れ「手出し無用」と言ったことで勇者を助ける兵士の編成はなくなり仕方なく元仲間のプリーストの所に行ったら貴族の男と結婚してたでござる」
「それは賢者の爺さんに聞いた」
「賢者の所にも行ったでござるが家を作るのに手一杯とかいいだしたでござる……」
「あのじじぃ……」
「それで仕方なく女戦士の所にいったんでござるよ」
「ほぉ……あいつは元気にしてたか?」
「勇者を救うと一人で行こうとしてたので私もお供し二人で何回も魔王城を攻めたでござる……」
「おお、さすが仲間だ! それで?」
「このセバスに何回も追い払われたでござる!!」
「セバス! どういうこった! せめて面会くらいさせろよ!」
「神の命令でそれは出来ない事になっておりましたので……申し訳ございません」
「くっ! それで? 女戦士は諦めたのか?」
「いや、私と女戦士は何度もセバスに挑んだのでござるが……その……」
あー聞いても仕方ないか。セバスの強さや優秀さはすでに知ってるしな。
「女戦士はどうしたんだ? 諦めて子孫作ったか?」
「いや、あやつは私と共に東の国に渡りサムライなる職に就き修行したでござる。そして私もニンジャという職に就き修行したでござるよ」
賢者の爺さんの子供の漫画に出てきたっけ……「侍」と「忍者」というものが東の国にあるって……それで語尾が「ござる」か。少し納得。
「それで? 女戦士はどうなった? 寿命を終えたか?」
「いや……あれも人ではない故、生きているでござる。勇者が外に出ていることも知らなかった故、私も女戦士も修行していたのでござるが女戦士はちと野暮用で元の世界にはいない」
「生きているのか……つうか人間ですらないのかお前ら……。それに元の世界にはいない? どういうこった?」
「この話は今度するでござる。どのみち勇者も女戦士の所に行くことになると思うからそのときにでも……」
「ほぉ……それで盗賊の兄貴はなんでセバスと?」
「セバスの動向を探っていたら朝に話した実験体の少女に転移させられたでござる」
「意味が分からん」
セバスが紅茶をティーカップに入れ優雅にこちらに持ってくる。
「そこは私が説明します。まず紅茶で一服といきませんか?」
差し出された紅茶の横に一本の煙草とライター、そして小さい灰皿が置かれていた。
「そうだな。紅茶を飲みつつセバスの説明でも聞くか」
そこからはセバスが簡略的に、そしてわかりやすく説明してくれた。




