戦争終幕 この戦争はもう戦争ではない。アーサーって誰よ!!
私はまーちゃん。
暴走したゆーくんを縛り上げたら突然の空の光、そしてかつての従者セバスが現れただいま絶賛混乱中である。
「セバス! この先はどうすればいいの!!」
「はっ! このまま待てばよろしいかと――」
そんなこと言われてもゆーくんを縛るのにもマジックポイントがガンガン削られていくのがわかる。一体いつまでこの状態を続ければいいのか……ええい! なんでこんな事になってるの!
そんな事を考えていると――
「これが勇者? 穢らわしい……」
頭の中に声が響く。
「一体何!」
「あれは実験体で「マリア」というらしいです。どうやらあの少女の中に神が封じ込められていると思われます」
「は? 神を封じ込める?」
私はセバスの冗談めいた説明にすっとんきょうな声を上げてしまう。
どうやら私が説明を理解できたのを察したらしくセバスがかいつまんで説明してくれた。
「それで? あの実験体がゆーくんを助けるの? それとも殺すの?」
「おそらくは助けるはずです」
「根拠は?」
「ここまで勇者様を追ってきたことです」
私は唸りながら首をかしげる。当然ではなかろうか? いきなり登場してゆーくんを見て一言「穢らわしい」である。どう考えても好印象ではない。
「ふむ、暴走を止めて勇者を救えと……よかろう。慈悲の神であるこの私「エイル」の名に懸けて救ってやろう」
マリアという少女がゆーくんにむけて手を振るうと光りのカーテンのようなものがゆーくんに降り注ぐ。
そして――
「グゥォォォォォ」
効き目抜群らしくゆーくんが膝をつく。
「よし! このままゆーくんを弱らせて……」
「グゥゥゥ……」
突如私の背筋に悪寒が走る。
「ガガ……ギギ……ククッ」
ゆーくんの目の赤い光がさらに強く光っている気がするのは私だけ?
「アリガ……トウ……ヤ……ト……」
「喋った? ゆーくんなの?」
「待ってください、魔王様! まだ安心はできません!」
「アア……やっと喋れるようになった。力を圧縮、我が内へと戻れ」
ゆーくんの体の靄がどんどん消えていき人の形へと戻っていく。だが黒い靄は全部消えずまるで顔は狼の頭のような甲冑で顔が見えず目だけが赤く光り、体はどす黒い甲冑に変化し背中にはマントができあがっていた。
「ちょっと! あんた誰よ!」
「余か? ふふっ……何千年ぶりの現世か――余はアーサー。アーサー・ペンドラゴンである」
「あーさー? 誰よそれ!! それよりゆーくんどこやったの!!」
「む……まぁ違う世界の者だから仕方のない事か。君達が言っているゆーくんという少年は余の内にいる。それよりもまずはあの神を殺さねばならんな。くくっ」
笑いを堪える黒い甲冑の男がマリアという少女を見上げる。
「穢らわしい……なぜこのような者がこの世に存在しているのか――もうよい。消えよ」
マリアから強烈な光と共にアーサーに白い光が照らされる。
「おうおう、神の聖なる光か? あったかいねぇ」
「む……何故効かぬ?」
「ククッ、お前らは人間を舐めすぎた。知ってるか? 人間は神を――殺せる!」
そういうとアーサーがいとも簡単に私とセバスの捕縛魔術を引きちぎり剣をマリアへと振るう。ゆーくんの得意技「勇者スラッシュ」が飛び出しマリアへと向かう。
マリアがそれを片手で薙ぎ払う。しかしマリアの手から数滴の血が流れる。
「穢らわしい!! なんという穢らわしい存在か!! その闇一滴残らず消え去れ!!」
マリアからまたも光が増す。そして手を振るうと同時に斬撃らしきものがアーサーへと降り注ぐ。
「おい、ジャンヌ! ちったぁお前も手伝え!!」
アーサーが誰に対してか言うと同時に剣を持った手とは反対の手にいつの間にか旗のついた槍「旗槍」を持っていた。それを掲げると防御魔術のように障壁がマリアの斬撃を防ぐ。
「さすがジャンヌ、いい仕事をする。では次はこちらの番かな?」
アーサーが剣を構えまたもマリアへと斬撃――「勇者スラッシュ」を繰り出す。
「まずいですね――」
そう呟いたのはセバスだ。確かにまずい、私の存在が薄すぎる!!
「どうすればいいの! セバス!」
「ふーむ、マリアという少女に加担したいのですがどうやら慈悲の神「エイル」は勇者様を殺す気になっていますね……」
「それはまずいんじゃない? ゆーくん死んだら私も死ぬんですけど?」
「ええ……これはまずいですね」
こんな歯切れの悪いセバスは中々に見れない。珍しいものを見た。
「エイル様、勇者様の闇を封印なさってはどうでしょう? そうすればマリアという少女の願いも叶いましょう」
マリアが斬撃を手で防ぐが防ぎきれずまたも手から出血する。
そしてこちらをジロリと見て――
「こんな穢らわしいものを野放しにすると?」
「いえ、封印さえしてくれたらこちらであとは何とかします」
しばらく黙り込むマリア。
「ふん、余を封印すると? もうすでに賽は投げられた。無駄な事よ」
アーサーが剣をマリアへと掲げる。
「よかろう。封印してみよう――慈悲の神の名において神界に告げる。「神力開放要請!!」我が力をここに現出せん!!」
マリアの光が一瞬大きくなり天へと光の柱が立ち上る。
「ちっ、面倒な!」
アーサーが剣を構え振るおうとするが――
「神力封印術<アルカナ・シール>!!」
地中、そして何もない空間から光の鞭がアーサーへと巻き付いていた。
「なに!!」
「これで終わりです。眠りなさい穢らわしい者よ」
「ぐぁぁぁぁぁぁ!」
アーサーが悶絶し靄が消えていく。
「くくっ、余を封印しても所詮は抑え込むだけ。いずれまた相まみえるだろう。その時を楽しみにしておけ!! 傲慢なる神々よ!」
そう言い残し靄が完全に消え、ゆーくんがぼろぼろの姿のままその場に倒れこむ。
「ゆーくん!」
私はすぐさまゆーくんに駆け寄る。私が死んでいない以上ゆーくんも死んでいないがやはり心配ではある。
ゆーくんを抱きかかえ様子を見る。
「どうやら大丈夫そうですね」
セバスの言葉に私はホッと胸を撫でおろす。
ルーナやリスティも近づいてくる。
「「ゆーくん!」」
「大丈夫よ。死んでないわ」
二人も安どした様子でゆーくんの手を取る。
「それで? 戦争はどうなるの? リスティ」
「こんな事態で戦争なんてできませんよ……」
「それは残念ね。ゆーくんが欲しがっていた盾はお預けね」
「私が……王女権限で何とかします!」
こうして戦争は終焉を迎えた。




