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実験体ー3 まさか――魔王様!?

 研究室最深部、そこに到達するまでに研究員や警備兵を盗賊(ローグ)様はこちらに気づかせる前に気絶させるのでとても楽に到達できました。

 そして最深部にあったのは地面から天井を貫通して縦に伸びるポッドだった。それも一つではなく複数個並んでいて中の液体は緑や青、透明から紫に至るまで様々だ。

 中には少年少女、年は十五にも満たないような子供たちが入れられている。


「こ……これは……一体……」

「なんでござるか!? これは!」


 私と盗賊様は驚き声が漏れる。それに反応した研究員が私たちを見て声を荒げる。


「何者だ! なぜ部外者がここにいる!」


 私はその言葉を発した人物へと目線を向ける。年は四十台前半くらいの白衣を纏った人間が睨んでくる。


「ここの責任者は誰ですか? まさかあなたですか?」

「それがなんだ! 貴様らは一体なんだ! 答えろ!」

「私はセバス。この名前だけでわかるでしょう?」

「ま……まさか、本当に来るとは……」


 私が来ることを察知していたらしい研究員が驚きの表情へと変わりハッとしたようにコンピューターへと視線を戻し何かを打ち込む。


「盗賊様! すぐにあの男を捕えてください!」

「わかっているでござる!」


 私が言うより早く男へと向かっていく盗賊様、速さと決断力だけならさすが――というところでしょうか。すぐさま男が取り押さえられるが男は不敵な笑みを浮かべる。


「ククッ、もう止まらないぞ! この研究はこれで終わるかもしれないが最後の研究結果を拝もうじゃないか!」

「一体何を――」


 ポッドからゴボリと音が立ちそちらを向くと色が一斉に変わっていく。そして途中少年少女の悲鳴と共に体が弾けポッド内が鮮血色になる。それを見た他の研究員たちは嗚咽をするものや涙を流す者もいた。


「何という事を――」


 私は顔をしかめる。このような非人道的な研究が野放しにされていること自体に腹を立てる。


「あなたは自分が何をしているのかわかっているのですか!?」

「ククッ、あんたにはわからないだろうさ! この崇高な研究はな!」

「このようなことが崇高!? あなたは気が狂っている!」

「そんなことはないさ。私はいたって正常、そして私の娘はやはり優秀というべきか――」


 男が視線を私から中央の一つのポッドへと向けられる。私も釣られてそちらへ目線を向けると唯一生き残っている少女がいた。そして悲鳴も上げず液体の色だけがいろんな色へと変わり振動が発生する。


「どうやら……どうやらやっと……成功したようだ。さぁ見せてくれマリア! 私に研究成果を!」


 その瞬間マリアと言われる少女から眩い光が発せられ私は一瞬目を閉じる。そしてガラスが割れる音がし、すぐさま目を開けると宙に浮く少女――マリアが光を発したまま目を開ける。


「我が名はエイル。「慈悲」を司る神である」


 少女は口を閉じている。だが脳内に直接声が届く。これは一体?


「クハ! 実験は成功だ! 出来た! 出来たぞ!! 人間に神を憑依させることが! 神を人間に閉じ込めることが!」


 男は高笑いを浮かべ「成功だ!」と連呼している。


「其方らにかける「慈悲」はない。この意味が分かるな?」


 そういうとマリアという少女が指をこちらへと向ける。そして――


「我が前から消えよ」


 そう言った途端研究員の一人がパン! と乾いた音を立てて弾ける。そして次々に研究員たちが弾け飛ぶ。最後に盗賊様が捕えていた研究員が高笑いをしながらはじけ飛ぶ。


「ここはあってはならない場所、これより消滅します」


 マリアという少女から発せられているであろう声が脳内に響く。そして光が増幅していく。とてもまずいですね、この状況――

 だが光が途中で止まりマリアが目を瞑る。


「ふむ……それが汝の願いか……我が汝の体に宿ったのも何かの縁。叶えてあげましょう。ですがこの施設だけは破壊します。いいですね?」


 そんな独り言を私の脳内に流し光が再び増幅する。もはやこれまでか――私は覚悟を決め目を瞑る。

 数秒経った頃に目を開けるとそこは先程までいた場所とは違いどこかの戦場でした。


「む……ここは?」

「あ……あんたは……セバス!?」


 私は瞬時に声のした方向へと振り返る。懐かしい声――そして私が何よりも求めた声。その主へと目線を動かす。

 そこにはやはりというべきか、かつての主である魔王様が立っておられました。


「む……あなた様は……まさか魔王様?」

「セバス!! 丁度いいわ! この状況を何とかしなさい!」

「はっ!! 畏かしこまりました。しばしお待ちを――」


 私はすぐさま魔王様の期待に応えるべく周囲を見回す。

 黒い靄のかかった人型の「何か」、そして折れてはいるが聖剣であろうものを片手に持っている。

 周囲をみるとどこかの戦場――魔王様はいるが勇者様がいない。そして魔王様が必死にその黒い靄を「殺さず」に拘束をしている。

 ここから予測するべきもの。それは黒い靄の正体が勇者様であることは明らかである。

 折れた聖剣に黒い靄から察するに何かの暴走でしょうか? そして上空にはマリアがいまだにいる。「慈悲」の神がこの現状を見過ごすか? 否である。


「ああ……なるほど。魔王様――何もしなくても大丈夫です」

「はぁ!? どういうことよ!」

「そのまま黒い靄……勇者様を拘束していてくださいませ」

「どういう事?」

「すぐにわかります。私が魔王様のお役に立てなかった事がありますか?」

「……わかったわ。このまま拘束しましょう」

「ただ保険として――<セバス流捕縛術・春龍>」


 私は黒い靄へと拘束術式を発動させる。


「これで準備万端です。あとはあの光――実験体に任せましょう」

「実験体?」

「魔王様、説明は後日」

「……わかったわ」


 魔王様の声を聞き少しでも魔王様のお役に立っていることに私は喜びで身を震わせる。

 まさか魔王様にこうしてまたお会いすることができるとは――運命とはわからないものですね。

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