実験体ー2 盗賊様との戦闘
「セバス!! 覚悟でござる!」
またも数本のナイフが私の急所めがけて飛んでくる。そして私はそれを後方に回避する。
「盗賊様、お止め下さい。このようなことをしても何の利益もないでしょう?」
「ふん! 其方に利益がなくとも積年の恨み、ここで晴らすでござる!」
「仕方ないですねぇ……」
またも数本飛んでくるナイフをかわし私は前進する。しかしマスクで覆われていてもわかるような笑みを盗賊様はうかべ、
「<リバース>」
私はすぐさま前方へとでんぐり返しをする……やはりというべきか、後ろを見ると避けたはずのナイフが反転し先程まで私がいたところへと飛んでいた。
「新しい技ですか……昔から本当に器用ですね、あなたは」
「黙るでござる! <インテリジェンス・クナイ>!」
数十本のナイフが私めがけて飛んでくる……いやクナイと言っていることから東方に伝わるナイフとは別のものであろう。私が回避すると同時、クナイがクルリと身を翻し私へと向かってくる。
「ふむ」
仕方ないので一本一本指で挟み受け止めていく。
「くっ! さすがはセバスでござるな! なれば!」
天井から急降下し地面すれすれに私へと向かってくる。この状態ですと持っている武器はクナイですかな? そんな事を考え防御態勢をとると意外にも盗賊様の右手から短刀が顔を表し私へと向かってきました。全く……予想外です。どこに隠し持っていたのやら――、
「チェックメイトです」
私は短刀が私の首に届く前に盗賊様の右手を受け止める。
「それで勝ったつもりでござるか!」
「む」
盗賊様の左手が振り下ろされる――瞬時に半身を後方にずらし躱すとキンと綺麗な音が鳴り響き盗賊様の奥の手が姿を現した。
「これは――刀?」
確か東方で剣の代わりに普及していると聞いていましたが本物を見るのは初めてですね。
「喰らえ! 村正!!」
刀からズズッと黒い靄が私めがけて向かってくる。仕方ないので短刀を持っている右手を離し半歩前進し盗賊様に密着し零距離での掌底をお見舞いする。
「ぐふぅ!!」
死なない程度には加減したつもりですが幾分咄嗟の判断だったので急所の心臓を射抜いてしまいました。私もまだまだ修行不足ですね。
「大丈夫ですか?」
「う、うるさい! お前の心配などいらないでござる!」
「一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「ぐぅ、煮くなり焼くなり好きにするでござる!」
痛みのためか動けないでいる盗賊様にただ尋ねたいだけなのに私も随分と嫌われましたね。
「どうしてそこまで私を嫌うのか教えてもらえますか?」
「……わからないのか?」
「さっぱりです」
「私が勇者に何回も会いに行ってお前に撃退されたからに決まっているでござる!!」
「それは神様の指示ですので……何度もお答えしましたが?」
「そんな指示など無視して私を勇者に合わせればよかったでござろう!」
「神の指示を無視するなど私にはできません」
「くっ!! この石頭め!」
石頭と言われようがなにせ神の指示ですので……まぁ魔王様の指示でしたら私は魔王様を優先するわけですが……それと同じでしょうか? それとも盗賊様は勇者様を恋慕していたのでしょうか? いや、確か勇者様いわくプリースト様と恋仲のはず……いやいや、その前に盗賊様は男のはず……
私はハッと気づく。
「まさか複雑な三角関係?」
「何を言っている!?」
「いえ、こちらの話です」
そんな会話をしていると急にサイレンが鳴り響き「これから研究を再開する」という男の声がスピーカーから響き渡る。
次の瞬間電気が一瞬切れる――と、
「勝機! 覚悟するでござる! セバス!」
そんな声がしたので咄嗟に後ろへとバックステップを数度繰り返しどんな攻撃でも当たらないように回避する。
そして電気がつき周囲を確認する――刀を片手に何か攻撃したのか下段の構えになっている盗賊様が目の前にいました。
「盗賊様、どうやら戦闘はここまでのようです」
「何を! これからでござる!」
「いい加減にしてください。こんな事をしている暇なんて私にはないのです。それにあなたも薄々……というより何か目的があってここに来たのでしょう? そしてその目的がとても危険な事も知っていて今の停電もその危険な研究によるものと気づいているはずです。先に進み研究を止めませんか? その後ならいくらでも相手しますから」
数秒の沈黙の後、
「…………わかったでござる。だが! この施設で行われている事を阻止した後は決着をつけるでござる!」
「はい、その時はお相手いたしましょう」
一時休戦をした私と盗賊様は走りながら研究施設の奥へと進みつつお互いの知っている情報を交換する。しかしどれも私の知っているものばかり、そして私の知っている情報もどうやら盗賊様も知っているようでそれ以上の情報は得られなかった。




