実験体ー1 お母さん
「ねぇお母さん、お話しして!!」
「もうこの子ったら、寝る時間でしょ?」
「えーお願いお願い! いつものお話して!」
「一回だけよ。ふふっ」
「やったー!」
「それじゃ始めからいくわよ? 昔々――四百年前に勇者として生まれた子は厳しい訓練をし勇者になるべくがんばりました。そして成人になると勇者は女神から聖剣を授けられたのです」
「わー! すごいがんばったんだ!」
「そうね。すごい頑張ったと思うわ、きっと……。それで勇者は聖剣を携え仲間を探す旅に出ました」
「私も四百年前に生まれたら仲間になれたかなぁ?」
「ええ、きっと仲間になれたでしょうね」
「それでそれで? 続きー!」
「ふふっ、この子ったら……その後勇者は途方もない任務をこなし名実共に勇者として世界に認められたのです。そして仲間と共に世界の問題を解決し最後に魔王城へとむかったのです」
「魔王!! 倒せるよね!」
「さぁ? どうかしら……。その後魔王城へと向かった勇者は仲間を振り切り魔王と対峙したのです」
「いつも思うんだけどなんで一人で行っちゃったの?」
「そうね……仲間を危険に晒したくなかったんじゃないかしら? きっと優しい勇者だったのね」
「ふーん」
「勇者は魔王と戦いそこに神様が降り立ちました。そしてこう言ったのです。「戦いはやめよ」と……。そして一時勇者と魔王が平和条約を結びました」
「なんで神様はそんな事をしたの?」
「なんででしょうね。もしかしたら神様も争いごとが嫌いだったのかもしれないわね。ふふっ……その後人間と魔族の間に神様からの神託がありました。そして人間と魔族は共に暮らすことになったのです」
「わーめでたしめでたしだー!」
「そうね。そろそろ寝る時間よ」
「ねーねーお母さん」
「なぁに?」
「勇者と魔王はその後どうなったの?」
「さぁ、どうなったのかしらね。さぁ慈悲の女神エイル様にお祈りして寝なさい。電気切るわよ?」
「はぁい、おやすみなさーい。そして慈悲の女神様エイル様、私に導きがあらんことを」
「おやすみ。マリア」
私はゆっくりと目を開ける。お母さんがやさしかった時の夢だ。
ああ、また目の前でお母さんとお父さんが何か言いあいしてる。
私は今日もポッドの中で実験されてるんだ。
……まだ眠い。もう少し寝ようかしら?
「いい加減にして! 私の娘を実験に使わないで!
「何を言っている! このためにお前に産ませたのだぞ! これをどう使おうと儂の勝手だ! お前は黙っとれ!」
「なっ!! そのために私と結婚したの!? ふざけないで!」
「ふん! そうでなければ誰が好き好んで魔族との間に子供を作るか!」
「なんて人なの! とにかくあの子を自由にして!」
「うるさい女だ! 警備兵! こいつを連れていけ」
母さんが兵士に連れていかれる。
もうどうでもいい……。とにかく眠りたい。また夢の中で母さんに物語を読んでもらおう。




