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セバスの日常-2 研究施設

 私と賢者殿は寿司屋でランチをし、店から出る。

 寿司を食べている間は色々と話し合った。昔の事、四百年過ごしてた時の勇者様の話題、そのほか色々と話し最後はやはり「今勇者様は元気にしてるかのぉ」で締めくくられた。

 店を出て旧王国研究所に車を向かわせる。その間中もやはり話の中心は勇者様と魔王様の話だ。

 話のネタは尽きず、つい熱中してしまう。

 そうしているといつの間にか魔法学院へと到着していた。


「ふぅ……少々熱が入りすぎましたね。いつの間にか到着していました。それでは行きましょうか」

「うんむ……わしが学長にあっている間に研究所に忍び込むのじゃな?」

「ええ、その通りです。正面から研究所に行ってもきっと何も得られないでしょう」

「それでは行くかのぉ」


 そう言いながら私と賢者様は車から出る。

 魔法学院を眺めながら賢者様の後を追う。


「ここには来たことがあるのですか?」

「ああ、特別講習に何度かかのぉ。あと王国があったころには研究のためこの場所に出入りしていたんじゃ」

「なるほど……しかしここの地下にいつの間に研究所ができたのやら……企業が大きくなると全てを把握するのは中々に面倒で見落としがいくつかあるのですよ」

「さすが世界でもトップクラスの大企業家。大変じゃのぉ」

「私は大企業よりも魔王様の「よくやったわね、セバス」というお言葉の方がほしいですよ」

「ふぉっふぉっふぉっ、お主らしいのぉ」


 魔法学院の門をくぐるとざわりと周囲がざわつく。コソコソと耳打ちする学生達。


「なぁ、あのご老人って……」

「ああ、賢者様だよな」

「なんであの人が?」

「わかんない。何か特別な授業あったっけ?」

「私その授業出たい! ちょっと調べてくる!」」


 耳をすませば様々な声が飛んでいることが分かる。さすがは賢者様、かなりの人気です。


「その隣にいるのってまさか……セバスグループの役員の……どうしてここに?」

「賢者様とお知り合いだったのか」

「経済学とか今日あったっけ?」

「帝王学じゃね?」


 おっと、これはいけません。何故か私にも注目が集まってしまっています。


「先を急ぎましょうか」

「そうじゃの。学長室に行くかの」


 学長室に到着し扉を開ける。


「よ、ようこそいらっしゃいました!! 賢者様にセバスグループの役員である――」

「いえ、建前は結構です。この度は賢者様が特別に講義をされたいという事なのですが……

「ええ、ええ。いつでも結構です。校内放送でも呼びかけます」

「私は少しこの学園を見て回りたいのですが……」

「へ? な、なにかご不満でも……」

「いえ、ただ魔法学院を見ておきたいのですよ。親戚の子がそろそろ受験の歳なのでここも候補に挙がっておりまして」

「な、なら私が案内を――」

「それには及びません。私はこの学園の自然な風景を見ておきたいのです」

「ふぉっふぉっふぉっ。好きにさせてやってはくれんかのぉ?」

「はっ、賢者様がそういうなら!」

「それでは賢者様、後は頼みます」

「うむ、任せるがよい」


 私は学長室を出て廊下を歩きながら研究所の入り口を考える。


「さてさて、研究所の入り口は基本一つ……ですが何かあった時用に非常口や隠し通路があるのが碇石ですね」


 窓の外をチラリと見て、噴水が目に入る。


「ふふっ、いい造形の女神像が壺を両手で持ち水を注ぐ噴水。ベターですね。行ってみますか」


 噴水へと向かう。そして到着し、噴水を一周する。

 いたって変なところはない。勘違いでしょうか?

 私は女神像の説明文が書かれた石板を見つめる。

 石板を指でトントンと軽くたたきながら、


「<シーイング・アイ(見通す目)>」


 魔法が起動し石板の文字が所々光出す。

 私が光っている部分だけをなぞっていくと噴水の像が九十度動き扉が現れる。


「ふむ、私の直感はまだ鈍っていないようですね」


 私は水に濡れる事を気にせずその扉を目指す。そして扉を開き中へと入る。


「鬼が出るか蛇が出るか――」


 扉が閉まりエレベーター式の空間が何も押さずとも下へと私を案内する。

 ゴゥンと止まる音と共に扉が開き倉庫らしき場所に到着した。

 私は倉庫の物品を軽く見つつこの研究所について考える。


「魔力鉱石、魔力回復薬、その他にも様々ありますが――研究所の倉庫にしては一つ足りませんね」


 そう、研究員が疲労した時用に使う体力回復薬系の物がない。


「残業のない研究所なのでしょうか? 普通は研究員は自分の研究のために残って研究するのですが……」


 私は倉庫から出て気配を消しながら廊下を進む。曲がり角で人の気配を感じすぐさま――


「<インビジブル(透明化)>」


 こうしてしまえば気配も消しているので普通の人間にはわからないはず。

 研究員らしき白衣の男性達とすれ違う。


「おい、聞いたか? 今から研究再開するってよ」

「なんでまた?」

「なんでもセバスグループの役員が上の学院に来てるらしくてもしかしたらこの研究所を嗅ぎまわってるかもって話だぜ?」

「なんでまた? この研究所はセバスグループでもかなり上の研究だって所長が言ってたのに」

「さぁな、セバスグループのお偉いさんの考えはわからんよ。ハハッ」


 ふぅむ……どうやら所長は研究員に嘘を教え込んでいるのですか。きな臭いですね。

 すぐさま私は小走りになる。研究の再開というのはどういう事でしょうか? 確か深夜に膨大なエネルギーを周囲から奪っていると聞きましたがそれを真昼間からやるのでしょうか。

 そんな事を考えていると後ろから微かな殺気を感じすぐさま振り返る。

 そして本能的に私に飛んでくる数本のナイフらしきものを私は指で受け止める。

 まさか護衛? そう思いながらナイフが飛んできた方向――天井へと目を向けると黒い衣装に身を纏い灰色のマントを羽織った人物を視認する。


「護衛――ではなさそうですね。この殺気、覚えがあります」

「ああ、こちらも覚えているでござるよ。セバス!!」


 かつて勇者様の仲間として幾度となく魔王城に来訪された盗賊(ローグ)様と奇妙な再開を果たしてしまいました。

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