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戦争準備-5 ダメな魔王を池ポチャに!

「ふん!」


 俺はまーちゃんにすぐさまラリアットを食らわせる。

 「うぎゃ」という鳴き声と共に地面に叩きつけられるまーちゃん。

 これから戦争だってのに何してんだこいつは……。


「おい、まー……王の盾よ。なにしてんだ?」

「あ~、ヒック……ここはいい酒がおおいのら~」


 寝転びながらまだ離さないでいる酒瓶をラッパのみし始める。

 俺はイラつき寝たままのマーちゃんの腹へとエルボーを食らわす。

 「ぶぎゅ」と、くの字に曲がり口に含んだ酒が天へと帰される。

 そしてそのまままーちゃんの耳元で、


「お前本当にいい加減にしろよ?」

「だっれここのおしゃけおいしいんらもん!」

「これから戦争なんだよ! わかってんのか?」

「あ~そういへばそうら」

「ちっ」


 俺は舌打ちしすぐさままーちゃんを抱える。


「貴族の皆様、先に戦場に行っててください。王の盾を正常に戻して私たちも向かいますので」

「は……はぁ……」


 貴族の面々が引きつった顔になっている。当たり前だろう。主戦力の一人が戦争前に酔い潰れているのだから……。


「あ、あの……私は……」

「リスティ王女は私たちと行きましょう。クリス様は……」

「私はリスティ王女の傍にいるに決まっているだろう」

「わかりました。では行きましょうか」

「あの……どこへ?」

「池とかありませんかね?」

「ええと……庭に一応小さい池はありますが……」

「ではそちらへ行きましょう」


 リスティに案内を任せ小さい池へと移動する。

 到着するまでの間クリスからは「そらみたことか!」「やはり私たちだけで戦争はどうにかしましょう。リスティ王女」等色々と言われる。

 そして到着してすぐ――俺はまーちゃんを池へと放り投げる。

 綺麗な放物線を描きまーちゃんは小さな池の中央へと着水した。


「な、なにを!」

「気にするなリスティ、すぐに目を覚まして出てくるだろう」

「で、ですが……これはあまりにも……」

「これくらいしないといけないんだよ! あいつは……」


 池の中央からはブクブクと空気が浮いてくる。

 三十秒経ち空気が浮いてこなくなる――そして一分経ち、二分経ち……。


「あ、あの……これはまずいんじゃ!」


 リスティが焦る。だがまだ大丈夫だろう、なにせまーちゃんは魔王、魔族なのだから。


「溺れているかもしれません! 助けましょう!」

「ほおっておけ」

「ですが!」

「ほおっておけ」

「!……私が助けます!」

「リスティ王女! いけません! せっかくのドレスが濡れてしまいます!」

「ですがまーちゃんが!」

「案ずるな、まだ生きている」

「なぜそのように安心できるのですか!」

「一応あいつは神話級魔王だぞ? これくらいで死ぬわけないだろ」

「そ、そんな……」


 疑いの目で見るリスティ……しかしその疑いはすぐに晴れる。


「プハー!」


 ザバァと池の中央からまーちゃんが飛び出てくる。


「目が覚めたわー!」

「お目覚めか?」

「ふー、いい酒飲んだわ」

「さいでっか、はよこっちこい」


 俺はスマイルを絶やさず手のひらを上下に軽く振り「おいで」の仕草をする。

 それにつられてまーちゃんが池から上がってくる。

 そして――ゴツン!


「あいたぁ!」


 俺の拳がまーちゃんの頭に突き刺さる。


「なにすんのよ!」

「それはこっちのセリフだ! お前はなにをやってるんだ! これから戦争なんだぞ」

「知ってるわよ! でも酒のいい香りがしたんだから仕方ないじゃない! 極上物よ! 極上物!」

「知らんわ! とにかくフェリスに魔法で乾かしてもらって戦場に行くぞ!」

「えーめんどくさーい」


 ゴツン!


「あいたぁ!!」


 またも俺の拳がまーちゃんの頭に突き刺さる。


「これ以上俺を怒らせるな! 全く……」

「ちょっと! 私は主戦力でしょ! もっと大事にしてよ!」

「お前がいけないんだろ! とにかく行くぞ!」


 俺たちは早歩きで戦場へと向かう。といっても俺はどこが戦場なのか知らなのでリスティに案内を任せているのだが。




 戦場に到着すると大勢の兵士、冒険者がいた。

 そしてそこかしこに冒険者組合員がベルトを腕に垂らしながら「まだ受け取ってない人いますかー? いたら受け取ってください」と言いながらウロウロしていた。

 その中に俺たちのよく知る冒険者組合の受付嬢もいた。

 そしてこちらに気づくや否や走ってくる。


「勇者様!! どうぞこれを!」

「おい、ここでは「王の剣」と呼べよ」

「あっ! そうでした! すみません」

「まぁいい、それで? これを腰にまけばいいのか?」

「はい」


 俺は赤いベルトをもらい腰に巻く。

 横を見るとリスティも巻いている。なんで?


「おい、リスティ。お前は巻く必要ないだろ?」

「何を言ってるんですか? 私も参加するんですよ?」

「おいおい、王女が前線なんて出ないだろ」

「そ、そうですよ! 王女様が巻く必要は……」

「いえ! 絶対に巻きます! 参加します!」

「なんでそんなに前線にこだわるんだ。お前はドシッと腰を据えて後ろで待機してりゃいいんだよ」

「そんな事できません! 我が国の戦争ですよ! 王女が前に出ないでどうするんですか!」

「うーん、まいりましたね……そうだ! 少し待っててください」


 そう言うと受付嬢はパタパタとどこかへ走り去っていく。


「王女が前に出ても役に立たないだろ」

「そうです! リスティ王女にもしものことがあれば我が国の損失です!」

「そうだ! もっと言ってやれ、クリス」

「何と言われようと私は前線にでます!」

「リスティ王女! いい加減にしてください!」

「クリス! これは王女の命令です! 私に何かあれば貴方が私を守るのです! 騎士として!!」

「はぁっ!! き、き、き、騎士として! 任せてください! リスティ王女!」

「うーわっ、うーわっ、やり方が汚ねぇわ。この王女」

「何か言いましたか? 我が臣下「王の剣」よ」

「お前の臣下じゃねぇし」

「でも表向きにはそうでしょ? 違うなら我が父にそう報告しましょう」

「汚ねぇ!! 王女の特権利用してきやがった!」

「当たり前です! 今回こそは前線にでるのです!」

「「今回こそ」ってどういう意味だ? まさか前の戦争でもこんな会話をしてたのか?」

「そ、それは……」

「はぁ……お前ってやつは……」

「だって!! 私も戦争にじかに参加したかったんです! 一度でもいいから!」

「まぁ遊びみたいなもんだしいいか……」


 その言葉を聞きリスティの顔が明るくなる。

 そしてどこかへ行っていた受付嬢がトタトタとこちらに戻ってくる。


「あ、あの……王女にはこれを――」


 そう言って差し出したのは金色に輝くベルトだった。


「なにこれ」

「大将用のベルトです。主に王族や身分の高い貴族が着用なされるベルトです」

「高ポイントってことか?」

「はい、ですので絶対に取られないでくださいね」

「えー、それじゃ守りながら戦わないといけないじゃん」

「リスティ王女は私が守る! お前の助けなどいらん」

「さいでっか、それじゃ任せますわ」

「ちょ、それでも「王の剣」ですか! 私を守りなさい!」

「嫌だよ。今回参加したのはお前のお守りをするためじゃないんだよ。俺には俺の理由があるんだよ」

「ドワーフの盾……ですか」

「分かってるならそれでいい。というわけでクリスに守ってもらえ」

「く……!! そんなにドワーフ産の盾が欲しいのですか!?」

「当たり前だ! そのためにこんな格好までして参加したんだからな!」

「そこまで言いますか……」

「もちろんだとも! だからお前は適当に前線に出てクリスに守ってもらえ。俺は俺で適当にやるさ」

「分かりました! 分かりましたよ! もう!!」

「分かればよろしい」


 悔しそうなリスティ、自信満々にリスティを守る心意気のクリス。そして俺は自分のために戦うことを決意し戦場の幕開けである笛が鳴らされる。

 さぁ、始めようか!! 待ちに待った戦争を!

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