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戦争準備-4 戦争のための会議、もちろん俺が先陣切るよ?

「落ち着けよ、クリス」

「黙れ! 貴様の手など借りるか!」

「俺はリスティ王女に呼ばれたんだ」

「知っている! だが貴様の手はいらん!」


 リスティ……ちゃんとクリスをなだめておけよ……。

 そう思っていると城から護衛らしき兵士を数人連れたドレスを着た女性がパタパタと走ってくる。


「クリス! 何をしているのですか!」

「今ゴミを追い返しているところです」

「な――あなたは一体何を言っているのですか!」

「ですからゴミを――」

「リスティ~早くこいつをなんとかしてくれ~」

「貴様ぁ!」

「クリス! いい加減になさい!」

「ですが! こいつに頼らなくとも我々は戦争に負けません!」

「だめです! ゆー……王の剣(キングス・グレイブ)の実力は知っているでしょう。参加してもらえるのですよ? 歓迎しないと!」

「私は断固反対です!」

「もう! あなたはあっちに行ってなさい! これは王女の命令です!」

「なっ、リスティ王女!」


 クリスが振り返り、リスティの顔をみて怒っていることに気づいたのだろう。すぐに黙り込み速足で城へと駆けていく。


「ふぅ……すいませんでした王の剣よ。よく参られました」

「ああ、リスティ王女の呼び出しとあれば何処へでも参上しますとも」


 周りの兵士から「おおっ」とリスティ王女に向けて尊敬の眼差しが降り注がれる。


「それで、私はどうすればいいのかな? リスティ王女様」

「ええ、それでは中に入りましょう。作戦会議が始まっている頃合いです」

「仰せのままに」


 俺はリスティ王女に連れられ城の中へと招かれる。

 そして作戦会議室とやらに通される。

 そこには老人風の貴族や中年の貴族が多く、一番若くても三十台の貴族しかいない。おそらく威厳のもつ有力貴族だけが招かれ会議をしていたのだろう。ただ唯一リスティが座る上座の横に鎮座しているクリスを除けば……だが。


「おお、ようこそ参られた「王の剣」よ。ささ! こちらへ」

「はい、それでは失礼します」


 老人風の貴族が横へと誘ってきたのでそこへと歩を進める。

 横幅二メートル縦幅五メートルはある大きな机……そこには大きな地図が敷かれている。

 そして三角の陣形を示す駒が置かれ貴族がそれぞれにその駒を柄の長い棒の先に付けられた平らな面で押し引きし戦争のシュミレートをしていた。


「ううむ、王の剣よ……あなた様の意見はどうかな?」


 四十台の貴族が話しかけてくる。


「私は……冒険者を前に出し兵士は温存、そして冒険者が三割をきるくらいで兵士を左右から展開、挟撃の後正面から私が切り込みます」


 息を吐くが如く俺は饒舌(じょうぜつ)に話始める。

 俺はこれでも前の世界ではちゃんと勇者をしていた。

 当然軍隊戦の経験もあり、その指揮の指南も当然のごとく教育プログラムとしてきっちり頭に入っている。そして魔王城での四百年の間にまーちゃんとやったチェス、セバスとの戦争を前提とした盤上ゲーム……フェリスの家でやらせてもらったシヴィという名のシュミレーションゲーム等――俺は確実に成長していた。

 俺の意見にそこにいたクリスを除く全員が「おおっ」と感嘆の声を上げる。


「そして私は神話級、そして横にいる王の盾も神話級。正面突破は楽勝です」


 俺は堂々と胸に拳を当てる。

 だが貴族たちの反応があまりよくない。

 俺はチラリと横を見る……あれ? まーちゃんは?

 すぐさま反対にいるルーナを見ると首を振るばかりだ。


「王の盾ならこの城に入っていつのまにか姿を消してたのん」

「え?」


 フェリスの意外な回答に俺は疑問符を浮かべる……まさか、な……。

 俺は咳ばらいを一つし、貴族に向き直る。


「とにかく、私と王の盾が前線を押し上げさらに仲間達が敵陣へと切り込みます」


 その言葉に「おおっ」と感嘆の声が上がる。


「リスティ王女、これでいかがですか?」

「はい、ではそのよ――」


 言いかけて待ったをかけたのはリスティの横にいたクリスだ。


「お前の実力は信用ならない、それに王の盾はどうした?」

「こ、こら! クリス!」

「王の盾は……少し腹が痛いと言ってな……」

「ふん、信用できんな。どうせ城を散策して金目の物を盗んでいるんだろう」

「クリス! いい加減にしなさい!」

「いいえ! 言わせてもらいます! このような訳の分からない仮面を被った素性の知れない者を主力に考えるのは賛成いたしかねます」

「で、ですがトレジャー・キーパーの時の活躍を忘れたのですか!」

「なら顔を見せてもらいましょう! 最低限それくらいはしてもらわないと」


 くっ、こいつ……俺が正体隠してるのを逆手にとって調子に乗りやがって!

 しかも貴族どもが「そうだ!」「それはいい!」とか各々に口にしている。

 こうなれば……


「それでは仕方ありません……私たちは帰りますね」

「そうしろそうしろ!」


 だが貴族たちがギョッと目を丸くする。


「ま……待ちたまえ! 帰られると非常に困る」

「しかしそこの騎士殿は私の助力は不要と申しておられる」

「ク……クリス様、ここは素性など気にせず王の剣に助力を仰ぎましょう」


 慌てて俺を引きとめる貴族。それにフンと鼻を鳴らすクリス。そしてクリスの横でなにやら決断した顔をするリスティ。


「クリス、これ以上王の剣に失礼をはたらけばあなたを戦争不参加にしないといけませんね」

「へ?」


 リスティの言葉にすっとんきょうな声をあげ顔を向けるクリス。


「ななな、なにを言ってるんですか? リスティ王女……」

「いい加減にしなさいと何度も言っています。これ以上は言わなくてもわかりますよね?」

「で、ですが私はこの国のために――」

「わ・か・り・ま・す・よ・ね?」

「う、うう……」


 リスティの強い言葉に気圧されるクリス。仕方のないことだ。


「さて、方針は決まりましたな。そろそろ戦場にいきますか」

「そうですね、そろそろ頃合いですし向かいましょうか」


 リスティ王女がニコリと笑い席を立つ。

 そして俺たちは戦場へと向かうべく扉へと進む。話が一段落し、貴族達も一安心したのか各々に話しながら笑いあったりしている。

 そして扉に手をかけようとした瞬間、扉がバタンと大きな音を立て開かれる。

 開けた人物――それは酒瓶片手にめっちゃ酔って千鳥足決めてるまーちゃんだった。

 ほんとなにしてんのこいつ――。

 後ろをそろりと見ると、当然後ろの貴族。そしてリスティも驚愕の表情をしている。

 一人だけ「だろうな」という顔をしフンと鼻を鳴らすクリス。

 せっかく纏まった話がこれでまたややこしくなる。

 本当にダメな魔王だこいつは……。

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