戦争準備-3 最強の魔王について
俺とまーちゃん、リンが仮面を携え冒険者組合の裏口から出る。
そして正面に回りフェリス達と合流を果たす。
「待たせたな」
「うい」
「誰じゃ?」
「シロ、俺だよ。俺」
「誰じゃ?」
「ゆーくんなのん」
「なに? なぜそんな珍妙な格好をしておる?」
「これはまぁなんだ……仮の姿というやつだ」
「仮の? 意味が分からんのぉ」
「この格好で戦争に出ると国の兵士の士気があがるんだ」
「魔法か何かかのぉ?」
「実績だ」
「わからんのぉ……人間というやつは」
「まぁいい。さっさと王城に向かうぞ」
「あいなのん!」
フェリスの元気な相槌とともに俺たちは都心中央部にそびえ立つ王城へと向かう。
もちろん道などわからない。しかし見えてる以上そこに向かって歩いていけばいずれは到着するだろう。それより問題なのは……
「おお! あれは王の剣! なぜこんなところに!」
「キャーーー! 素敵! 抱いてぇ!」
「見ろよ! 王の剣が王城に向かってるぞ!」
などと多種多様様々な声が四方八方から聞こえてくる。
それもそのはずだ。
黒いタキシードの姿に顔を仮面で上半分と左頬を隠し左肩にはマントを装着している。
それだけでも「私は変人ですよ」アピールなのにまーちゃんは俺とは正反対に純白のドレス、顔には上半分と右頬を隠す仮面、右肩にマントを羽織らせ「変人二人がここにいますよ」宣言を公にアピールしているのだから。
それだけではない。トレジャー・キーパーの活躍以来、尾びれ背びれがついた噂も飛び交って今や「王の剣」は神からの使者などともてはやされる始末にまで発展しようとしていたのだ。
「すごい人気じゃのぉ、わしも変装したかったのぉ……」
少し羨ましそうにシロが言う。
「次があったら考えるよ。それよりさっさとこの群衆を抜けて王城に到達しよう。いつ群衆に取り囲まれるかわからん」
「はいなのん!」
そう、俺達だけではない。群衆の中から聞こえてくる声の中には
「あの子供がドラゴンスレイヤー! トレジャー・キーパーの時も王の剣の傍にいたと聞くぞ!」
「ならその隣にいる謎のメイド服幼女はなんだ? 仮面を被っているから新しい仲間なのか?」
「というか今回人数多くないか? あれ全員相当な強者なのでは?」
という声が耳に飛び込んでくる。まぁ合ってはいるがいかんせん目立ちすぎだ。
俺たちは少し早歩きで王城へと向かう……が見えている王城はなかなか大きくならない。
「迷ったか?」
ボソリと俺がつぶやくとルーナが横に来て囁く。
「案内しましょうか?」
「道知ってるのか?」
「ええ、多少はこの世界に干渉していますので」
「最初から言えよ!」
「お、怒らないでくださいよ! 自信満々に先頭歩いてたじゃありませんか!」
「く……まぁいい案内してくれ」
「はい」
ルーナがニコリと笑い先頭を歩きだす。
「それにしてもトレジャー・キーパーの時はすごかったですね」
「なに? 見てたのか?」
「ええ、全部丸っと天界から見ていましたよ」
「覗き魔ならぬ覗き女神だな」
「そ、そんな失礼な!」
「まぁあれはぬるすぎたな」
「ええ! 相当手ごわいはずなのに?」
「まーちゃんはもっと手ごわかったぞ?」
「それは……まーちゃんはかなり強い部類の魔王ですから……」
「他の世界と比べてどれくらいなんだ? まーちゃんの戦闘能力は」
「そうですね……個の戦闘能力でもずば抜けていますが装備もあわされば下手をするとアルテミス様と対等に戦える程かと」
「アルテミス?」
「はい、オリュンポス十二神のお一人です」
「神と対等に戦えると?」
「はい」
「そんな相手に聖剣一本与えて「お前が勇者だ、魔王倒してこい」と言ったのか?」
「まぁそうなりますね」
「あほか!」
俺はつい大声を出してしまう。
ルーナがギョっと目を丸くし立ち止まる。
「そんな相手に剣一本だけとかどんなブラック企業だよ! お前ら舐めてんのか!」
「そそそ、そんなに怒らないでくださいよ! こっちだって事情が――」
「うるせぇ! 事情もへったくれもあるか!」
「ですがあなたはそんな魔王と対等に戦ったじゃありませんか!」
「おま、ふざけんじゃねぇぞ! どれだけ苦労したと思ってんだ!」
「しゅ、修行も勇者の務めです!」
「まじないわー、お前ら神々の考えまじ理解できないわー」
俺は怒りを通り過ぎあきれ果てる。
それを見てルーナが再び歩を進める。
「で? 今回の最強の魔王様はどれくらい強いんだ?」
「ええ……そのことなんですが……はっきり言って未知数です」
「は?」
「プロメテウス様が未来を見たのが事の発端なのですが……そこには闇しかなかったと聞いております」
「闇?」
「はい。そこしれぬ闇だそうです」
「意味がわからん」
「神界でもそれほど力を持たない神の戯言でしたらここまでの騒ぎにはならなかったのですが……プロメテウス様の予知はほぼ確定した未来。それを無視できる神は存在しないのです」
「ふーん、そのプロメなんたらは相当偉いんだな」
「な……失礼な! プ・ロ・メ・テ・ウ・ス様です!」
「そんなこたぁどうでもいんだよ。先を話せ」
ルーナの顔が苦虫を噛みつぶしたような顔になる。
「プロメテウス様は相当な発言力を有していらっしゃいましたのですぐさま神々の中で会議が行われました。ですがその会議中もプロメテウス様は予知を続けたのですが……全て悪い予知ばかりで神界は混乱に陥ったのです」
「そんな占い話さなきゃいいだろ」
「う……占い? ゴホン……まぁすぐにプロメテウス様の予知には戒厳令がしかれましたがもう時はすでに遅しというところで……」
「結局混乱した神々が一斉に神器を送ったと?」
「ええ……しかも転生者も大量に送り込んだのです」
「そして俺もその一人というわけか……」
「はい」
「ふー……」
俺はポケットにしまってあった煙草を久しぶりに口にくわえる。
「めんどくせぇ……」
「そ……そんな事言わないでくださいよ!」
「だってそうだろ? 敵の力量もわからないわ、神々は好き放題するわ……めんどくせぇ……」
「プ……プロメテウス様の最後の予言が他の世界をも滅ぼす闇だったそうなんですよ! 非常にまずいことなんですよ!」
「知らねぇよ、神でばってこいよ! なに人間に倒させようとしてんだよ」
「それは……相手も元人間だからですよ!」
「なに?」
「ですから……最強の魔王は元人間……しかも転生者らしいんです。ですので神々が自ら力を振るうことができないのです。人間同士の争いに神々が出向く事は厳禁ですので……」
「まぁ魔王退治ですら出てこないもんな。神様ってやつは……」
「神同士の争いならよかったのですが……」
「本当にめんどくせぇな……もう一層のこと放っておいていいんじゃないか?」
「え?」
「だってそうだろ? そんな力量もわからない途方もない魔王退治なんかするよりは世界が滅ぶまで気楽に遊んで暮らしたほうがよさそうだ」
「そ、そんな無責任な! それでも勇者ですか!」
「それでもと言われても……もう魔王退治めんどくさいんだもん」
「「だもん」じゃありませんよ! 勇者としての責務を果たしてください!」
「前の世界で果たしましたー。もう果たす責務なんてありませーん」
「この……私は! あなたが! ゆーくんだけが討伐できると信じているんです!」
「その根拠は?」
「私が見込んだ勇者だからです」
「あほらし」
「あ、あほらしい……そんなことはありません! ゆーくんなら絶対討伐できます! きっとです!」
「俺は絶対魔王討伐なんでしない! 絶対にだ!」
「そ、そんな~」
そんな会話をしていると城門が見えてくる。
俺は煙草をルーナに弾くと「ぴゃう」と小さくうめき声をあげながら煙草が命中する。
そして城門前の兵士に話しかける。
「俺は王の剣。この度は戦争の件にてリスティ女王に面会しに来た」
「はっ! そのお姿はまごうことなき王の剣! リスティ女王より話は伺っております。しばしお待ちください」
そういうと城門にいた二人の兵士の一人が駆け足で城へと走っていく。
そして数分後……ここ数日顔を見なかった奴がズカズカと奥から歩いてくる。
「貴様の助力などいらん! 帰れ!」
「えー!」
クリスが怒鳴り、俺が叫び、そして城門の兵士は驚く。
せっかく城まで来たのにそりゃないぜ。




