戦争準備-1
外に出た俺達を待ち受けていたのはまるで祭りが開催されているかのような街並みだった。
噴水広場まで行くとさらに激しく店の看板にはファルス王国の旗が掲げられ、いたる所に紙吹雪を撒いている兵士が多数いる。
そして店先では客引き合戦が行われていた。
「そこの兄ちゃん! 愛人いっぱい連れてどこに行くんだい? 当ててやろうか? 戦争だろ。さぁ見てくれ見てくれ! 今なら全商品三割引きだよ!」
「ちょっと! そこのかわいい親子のパパさん! このパン屋ならお嬢ちゃんの好きなパンが一杯ありますよ! 寄ってかないかい?」
「そこのあんちゃん! この装備を付けて戦争に行かないかい!」
多種多様な客引きが俺達をひたすらに追い回す。
それに呼応してついていこうとするまーちゃんを引きずりながら冒険者組合へやっとのことで着く。
「ふぅ……それにしてもここに来るまでに疲れたな……」
「同意なのん」
「ゆーくんは情けないのぉ……それでも勇者か?」
「シロは疲れなかったのか?」
「わしは森に棲んでおったからのぉ。むしろ新鮮で楽しかったわい」
「さいでっか」
俺達は冒険者組合につくやいなや冒険者組合受付嬢から渡された戦争のルールについて読み返していた。
1、救護場所に運ばれた冒険者を攻撃してはならない。
2、相手のベルトを取った後には追撃をしない。
3、リタイヤしたければ自軍、もしくは相手軍の審判員(冒険者組合から派遣)に報告すること。なお、リタイヤしたものには追撃禁止
4、リタイヤしたものはそれまでの報酬を会得し無事に帰還できる。
5、ベルトの複製、譲渡を禁じる。
6、これに反したものには重い罰則が加えられる。
ざっと見た感じこんなところだ。
「フェリスどう思う?」
「まるで運動会なのん」
「だよなぁ」
俺は紙を天井に向けてヒラヒラとなびかせていた。
こんな戦争がずっとくりかえしているのか……なんて平和な世の中だ。
そんな事を考えているとまーちゃんがコカ肉をウェイトレスに頼む声が聞こえ俺とフェリスの分も注文する。
それと同時にシロ、リン、リスティも各々に頼みだす。
唯一ルーナだけがどう反応していいかわからないようで戸惑っている。
俺は仕方なくルーナの分のコカ肉を頼み話を戻す。
「こんな戦争でいいのか? 全く……」
「いつもこんな感じですよ?」
「リスティ……これは戦争とは言わないぞ」
「そうですか? ならなんと呼ぶのです?」
「競技大会……だな」
「競技大会……ですか」
「だってそうだろ? 命の危険がないじゃん!」
「あったら困りますよ! 何を言ってるんですか!」
「こっちが言いたいよ! 「何をいってるんだ?」と……。まぁいい、これなら楽にドワーフの盾が手に入るな」
「じふぃんふぁんふぁんめ」
「まーちゃんはハムスターが餌を頬袋に入れたかのようなその頬を何とかしてから喋ろうな」
まーちゃんはすでにコカ肉をたらふく口の中に入れていた。
「はぁ……それで? 俺は本当に「王の剣」として参加するのか?」
「はい! お願いします! まーちゃんにはもちろん「王の盾」として参加していただきます!」
「嫌よ」
「ええ! でもそうしないと兵士の士気が!」
「なんで私まで仮装しないといけないのよ!」
「まーちゃんにはリスティから後で高級酒が振舞われるそうだ」
「本当に!」
まーちゃんがガタリと席を立ちリスティを見つめる。
そんなまーちゃんにリスティが少し笑顔を引きつりながら、
「わ、わかりました。最上級のお酒を用意させます」
「乗った!」
まーちゃんはすぐに席に戻りコカ肉を頬張る。
「それで他のやつらはどうする?」
「ゆーくんのそばにいるのん」
「もちろん主殿についていくさ」
「わしもゆーくんについていくかな」
「ええと……私はどうしましょう……」
「ルーナも来いよ」
横にいたルーナに耳打ちする。
「もし相手に神器使いがいたら教えてくれ」
「なるほど……ですが「王の剣」とはなんですか?」
「それはおいおいわかる」
「わかりました。共に行動しましょう」
「なにをコソコソ話されているんですか?」
「「なんでもないよ」」
リスティの言葉にルーナとハモってしまう。
「それじゃ支度でもしますか……お前も王女の姿になるんだろ? どこで合流する?」
「そうですね……王城に来ていただければお通ししますよ」
「王城か。行ったことがないな」
「大丈夫です。迷うことはないかと……もし迷うと思うならここの受付嬢に案内してもらえればいいと思います」
「でもさっきから忙しそうだが?」
「きっと協力してくれますよ。なにせ「王の剣」が戦争に参加してくれるのですから!」
「分かった。先に王城に行っててくれ」
「はい。それでは失礼しますね」
そういうとリスティが席を立ち冒険者組合を後にする。
それを見送りコカ肉を食べどういう戦略を使うか考えてる最中――
「よぉ! 兄弟! お前たちも戦争に参加するだろ?」
陽気な声が後ろから聞こえてくる。
振り返るとガストとディアナ、それにスカーレットの三兄弟がいた。
「お前たちも戦争に参加するのか?」
「あったりまえだろ? こんな楽しい戦争ねぇよ!」
「楽しい戦争?」
「ああ、勝っても負けても奪ったベルトの数だけ冒険者組合から報酬を頂けるんだぜ?」
「なに!」
俺はガタッと席を立つ。
「どういう事だ?」
「あ? 聞いてねぇのか? ベルト一本につき一金貨もらえるんだぜ?」
「うほっ! まじかよ!」
「まじもまじ! これは祭りだ! 俺なんて去年四十本も取ったんだぜ?」
「四十本……つまりは四十金貨、四十万か……やるじゃねぇか」
「ディアナもスカーレットもすごかったぜ! 特にスカーレットは盗賊、その技術によって二百もの金貨を手にしている」
「に!……ひゃく……まじかよ」
俺がスカーレットのほうに視線を向けると右手を背中に回し左指で鼻先をこすりながら「にしし」と笑うスカーレットがいた。
「私にかかれば結構簡単だったよ」
俺は席に座り直し考える……リスティが俺に「王の剣」になれといったのはこの報酬をよこさないためか? いや……だとしても俺は確実にもらう。もしもらえなくても横にいるまーちゃんが絶対に駄々をこねるだろう。その時は俺も一緒に駄々をこねよう。
「まーちゃん! 聞いたか?」
「ひいへる、ひいへる」
だめだ、こいつコカ肉にしか興味がねぇ! 後で話しておかなくては……。
「で? 参加するんだろ?」
「ああ、もちろんだとも」
「パーティは……っていつの間にか結構増えてるな」
「ああ、ここの所居候が増えてな……金に困ってたんで丁度いい」
「ハハッ! がんばれよ! じゃあな」
「またね! ゆーくん」
そういうとガスト兄弟が去っていく。
それにしてもなんという破格な報酬……美味すぎる!
これは期待せざるを得ない!
俺は胸に期待を膨らませながら叫ぶ。
「よし! おまえら! 行くぞ!」




