幕間の物語ー五人衆
円卓の机が一つ中央に置かれた薄暗い部屋に、円卓の机を囲むように五つの椅子があり、その一つに一人の男が座っていた。
長い銀髪に銀色の瞳、身長は百七十センチ程だろうか。
顔立ちはよく白いタキシードに白いマントがとても似合っている。
その男が片足を揺さぶり始める。
「ちっ、遅いな。あいつら……」
その男の半歩右後ろに黒い髪を腰まで垂らした武具も着ていない女性が佇む。
「あんたの人徳のなさじゃないの?」
男はすぐに後ろを振り返るが、女性の顔をチラリと見て舌打ちし、また机の方へと顔を向ける。
数分した後ドアが開かれる。
「ちゅーっす! あれれー、わっちが一人目ですかー?」
意気揚々と入ってきたのは、赤毛のロングで先の方を結んでいて金色の瞳に短パン、胸元を紐で縛り谷間が見える皮製の鎧に黒いマントと腕にクロスボウをつけている女性だった。
「遅いぞレディ・アン!」
「へへっ、すんません」
「わしもおるのだがのぉ」
レディの後ろにはちょこんと隠れている年老いた男がいた。
額から頭頂にかけて禿げているが残った髪を後ろで束ねていて緑色の瞳をし、民族衣装に緑のマントを羽織っている。
「おお、ジアンもいたか、まぁ椅子に掛けてくれ」
「あいよー」
「わかった」
二人が椅子にもたれかけレディに関しては足を机の上に放り投げる始末だ。
「それにしても大将、一体なんの集まりなんすか?」
「それは全員揃ってから話す」
「ふむふむ……先の神獣での連携の試し、そして神器の使い慣らしからして考えていたんじゃが今度の戦争でなにかとんでもないことをしよる気じゃな?」
男はその回答に返事をしない。
揃ってから話す気だからだ。
(それにしても遅いな、まだ二人か……はぁ……俺のパーティはなんでこうも時間厳守ができないのだろうか? 俺って舐められてるのか?)
男がそんな事を考えていると開けられた扉からの光がほぼ遮断される。
「お待たせしました」
扉の前にはオークのような屈強な肉体を持つ身長二メートル程で短髪黒髪の青色の瞳、服装はハーネスに黒いマントを携えた戦士風の男が立っていた。
「狭い扉だ」
そう言いながら扉をくぐるように入る男、そしてぐるりと周りを見渡し空いている席へと座る。
「神獣の時はご苦労だったなゴウル、神器の具合はどうだ?」
「はぁ……まだ使いこなせていないのは事実です」
「そうか……」
ゴウルと呼ばれた男が片腕を背中の剣に、もう片方の腕で頬をポリポリと掻きだす。
「お待たせしました」
空いていた椅子にはいつの間にか座っている男がいた。
黒い衣装で身を包み目だけが確認でき、黒色の瞳そして目立つように青色のマントを巻いていた。
「お前も来たか、グレイ」
「ルークに呼ばれたら来るさ」
一番最初に部屋にいた男、ルークが全員の顔をグルリと見渡し肘を机につき話を切り出す。
「戦争をしよう」
その言葉にレディが鼻で笑い、ゴウルは腕を組み顎をさする。
ジアンという初老の男が杖を前後に振り「ほー」と唸る。
グレイに至っては目を瞑り首を少し下に下げただけだ。
誰もなにも言わない
(やっぱり俺って舐められてるのかな?)
ルークはパーティメンバーがなにも言わずしまいには鼻で笑われた事に対して不満を持つ。
「それで……なにがお主を戦争に駆り立てたのじゃ?」
沈黙を破ったのはこの中では一番年配に見えるジアンだ。
「うむ、みんな今の戦争をどう思っている?」
「あたしゃ好きっすけどね! 人死にもでないしお祭り騒ぎがいいじゃないっすか! 屋台もおいしいものばかり並ぶし!」
レディが身を乗り出し恍惚の表情を浮かべる。
「で? 主殿は何を考えておるのですか?」
巨大な体躯の割に腰が低いゴウルがルークへと尋ねる。
「お前ら、何もわかっていない……」
クヒヒと笑いながらグレイが周りを見渡す。
「どういう事だ? グレイ」
「隊長が俺達に戦争をさせようってんだ。今までのお気楽な戦争じゃないはずだ。違うかい? ルーク」
「グレイの言うとおりだ」
ルークは全員を見渡し、そして後ろにいる女を紹介する。
「この女はかの初代アーガスティン家の右腕だった黒龍の末裔だ」
その場に感嘆のため息が渦巻く。
「そんな化け物よく仲間にできましたな」
「ジレンよ、この女は今回だけだ。仲間じゃない」
「どういう事です?」
「今回の戦争で少しばかり働いてもらう」
「ふむふむ……よくそんな交渉がかわせましたな。相手は黒龍ですぞ?」
「ああ……少し値は張ったが引き受けてくれたよ」
「それで? 戦争をどうするつもりですかな?」
「ククッ、人死にのない戦争なんて戦争じゃない。俺は本物の戦争がしたいんだよ」
ルークがニヤリと笑う。
そして後ろの女が一歩前に出てルークの肩に腕を乗せる。
「任せてもらおうか。今回の戦争、楽しくしてやるさ」
その女の笑みにそこにいたルーク以外は背筋が凍る。
そして戦争は幕を下ろす。
誰も死なないはずの年に数度あるお祭り気分の戦争。
それが人が死ぬ戦争に変わる……誰が予想しただろうか?
そしてそこに異分子が入り込むことを……絶望が姿を現し、新たな絶望が誕生する事を……。




