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ウォー・タイフーン-2

 冒険者組合についた俺達はいつも通りコカ肉にリンゴ酒を昼間から飲みつつ受付嬢が机の上に乗り「緊急!」と叫んでいるのを横目にのんびりとしていた。

 時折冒険者達が「うぉぉぉ!」と新鮮な海鮮が手に入る事に雄叫びをあげていた。

 それほどまでに新鮮な海鮮が嬉しいのだろう。

 少したった頃誰かが後ろから迫ってくる気配がする。


「よぉ兄ちゃん! 元気にしてるか?」


 この声はガストだ。

 後ろを振り返り――


「よぉガスト! お前の姉妹も元気にしてるか?」

「ハハッ! 中々言うようになったじゃねぇか」

「用件はなんだ? もうパーティに空きはねぇぞ。姉妹と組むんだな」

「ハハッ! 今回の緊急はそうも言ってられんだろう。冒険者全員で取り掛かるような緊急クエストだ!」

(うお)・タイフーンか?」

「ああ、ウォー・タイフーンはこの国にとって重要なクエストだ。年に数回しかこないからな!」

「数回も来るのかよ!」

「数回しか来ないの間違いだろ! こんなチャンスは滅多にねぇ! 稼ぎ時だ!」

「稼ぎ時? どういうこった」

「ハハッ! なに言ってやがる。新鮮な海の幸は冒険者組合が高額で買い取ってくれるんだよ」

「まじか!」

「物にもよるが結構いい値で買い取ってくれるんだぜ」

「ふむ……軽く自分たちの分だけ獲るつもりだったが少しがんばるか」

「ハハッ! そうするといい。お互い頑張ろうや」

「ああ、少しやる気が湧いたぜ! ありがとな」

「おうよ! じゃあな」


 そう言うとガストは二階にある席――ディアナとスカーレットが座っている――に歩いて行く。

 顔を戻し全員の顔をグルリと見渡し先程の他愛無い会話を聞いている事を確認しつつ――


「よし! がんばるぞ!」

「はい!」

「リスティががんばるなら私も……」

「がんばるのん!」

「リンゴ酒追加!」


 まーちゃんだけが理解していなかった。




 受付嬢が説明を開始しそれを聞き、まとめるとこうだ。

 第一に魚タイフーンから噴射される海鮮は人めがけて攻撃するかのように飛んでくるらしい。

 そして冒険者である俺達はそれをキャッチし、後ろで控えている冒険者組合の組合員へと渡し、組合員が持っている紙に獲った海鮮の情報を記入し、その紙を貰い後日報酬を受け取ると。

 ちなみにキャッチできず避けたりすると傷がつき売り物にならないので無効だそうだ。




 すでに俺達は準備万端で壁外に出ていた。

 目の前には確かに竜巻が巻き起こっている。

 海水を巻きつけながら……。

 改めてみると異様な光景だ。

 まるで水魔法で渦を作ったと言われた方が納得がいく光景だ。


「それではみなさーん! そろそろ飛ばしてくるんで準備お願いしまーす」


 冒険者組合の組合員が冒険者へと言葉かけを行う。

 それに反応し、それぞれが少し離れた距離をとりつつ腰を少し落とし準備をする。

 まるで元いた世界で流行っていた「やきう」とかいうスポーツのようだ。

 あれは「ぼーる」とかいう球を「ぐろーぶ」とやらで取る球技だが興味がなかったので見てなかった。

 少し見ておけばよかったかと後悔していると魚タイフーンから「シュバッ」という音が聞こえた。


「ふん! ハハッ楽勝だな」


 すぐに横を見るとガストが両手で魚を抱えていた。

 なるほど……両手で抱えればいいのか。

 俺もがんばらないといけないな……。

 そんな事を考えているとまたしても魚タイフーンから音が聞こえ俺に向けて何かが飛んでくる。

 俺は危険を感じ一歩後ろに下がりながらその魚らしき生き物を脇で抱える。


「あぶねぇ」


 よくみるとそれはカジキらしき魚で真正面から受け止めていれば角が刺さるところだった。


「す……凄いです! さすがゆーくん!」

「ん?」

「ハハッ! 兄ちゃん凄いじゃねぇか! 人刺しカジキを捕まえるなんてな!」

「そ、そうか?」

「そうです! 普通なら避けちゃいますよ!」

「まぁ俺だから受け止められたんだな! ハハッ」


 猿もおだてりゃなんとやら……少し気分が良くなった俺はその人刺しカジキとやらを組合員に渡しに行く。




 組合員に渡すと驚愕の顔を浮かべながら、なにやら紙に書いている。

 その横で木製のでかい生け簀(いけす)に人刺しカジキを入れるとビチャビチャと跳ねながら必死の抵抗を見せていた。

 組合員の横にいたディアナがすぐに魔法で水を人刺しカジキが泳げるくらいまで入れ、泳ぎ始めたと思ったら氷結魔法で人刺しカジキを凍らせる。

 人刺しカジキはプカプカと浮かびそれを組合員が必死に取り出しどこかへと搬送していく。


「ディアナはなにしてるんだ?」

「ん? 後方支援よ」


 そう言いながら無くなった水の分を魔法で補給する。

 なるほど……確かに後方支援だ。


「雇われたのか?」

「臨時だけどね。結構いい値段で楽に儲けられるのよ」

「なるほどな……ところで凍らせた人刺しカジキはどこへ運んだんだ?」

「王国の地下冷凍庫よ」

「へーそんなとこがあるんだ」

「まぁね、それにしても一匹目から人刺しカジキって凄いじゃない」

「だろ?」

「よく刺されなかったわね。兄さんなんて昔あれに足を刺されて悲惨だったわよ」

「ガストが? まじか……」

「特に人刺しカジキは飛んでくるスピードが速いからなかなか受け止められないのよ」

「そうなのか……特に速いとは感じなかったけど……」

「反射神経がいいのね」


 ディアナのウィンクに少し鼻の下が伸びてしまう。

 そんな事をしていると横から組合員が紙を渡してくる。

 それを鞄に仕舞い――


「もう少しがんばってみるよ。またすぐ来るぜ!」

「ふふっ、いってらっしゃい」


 ディアナの笑顔のために少しがんばってみるか!




 元いた位置に戻ると、所々で魚を獲った冒険者達が嬉しそうな声を上げていた。

 横を見るとリスティも真剣な眼差しでいまかいまかと腰を軽く落とし魚が飛んでくるのを待ち構えていた。

 王女なんだからもう少ししおらしくしてほしいものだ。

 そんな事を思っていると、まーちゃんに向かってなにかが飛んでいった。


「いたぁ!」


 キャッチしたはずのまーちゃんが痛みで手を上げていた。

 なにが飛んで来たんだ?

 少し近づいてみるとそこには黒いトゲが大量にあるウニらしきものだった。


「大丈夫か? まーちゃん」

「痛いわよ! なんでウニなのよ!」


 またしてもまーちゃん目がけて何かが飛んでくる――そして受け止め……。


「いたぁ!」


 …………またしてもウニだった。


「フェリース! 来てくれ」

「はいなのん」


 トタトタと走ってくる可愛らしい小兎ちゃんにまーちゃんの回復を頼む。

 半端な回復魔法では指や手に刺さったトゲが抜けないと判断したからだ。

 その間にも、またまーちゃん目がけてなにかが飛んでくる。

 それを顔も向けずにまーちゃんは片手で受け止める。


「いたぁ!」


 ウニだ。


「なんで私のところにはウニしか来ないのよぉ!」

「日頃の行いなのん」

「なんですって!」


 そんな会話を聞きながらフェリスに回復をお願いして俺は自分の位置へと戻る。

 その間にもまーちゃんの悲鳴が幾度となく聞こえる。


「よし! 俺は俺でがんばるか!」


 腰を下ろし次の獲物が来るのを待ち構える。

 その後も結構な数の魚を獲りつつディアナの所へと持って行き冷凍してもらう。

 組合員から貰った紙はバッグにしまいつつ元の位置に戻る。

 それを何回も繰り返す。

 まーちゃんは絶賛ウニをぶつけられているのか悲鳴が木霊(こだま)する。

 そんな事を幾度繰り返しただろうか?

 ため息まじりに周りを見渡すと既にへたりこむ人も出てきている。

 最初は魚を受け止めるだけの簡単なクエストだと思ったが、運搬もしなければならないため結構な重労働だ。

 



 数時間経ち、魚タイフーンは魚を全て吐き出したのか、最後には海水をぶちまけ消え去った。

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