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ウォー・タイフーン-3

 俺は魚を数十匹、そして開始前に冒険者組合の組合員が配っていた貝類を入れるための網で作られた袋を腰にぶら下げていたのだが、それもすでに満杯だ。


「ふぅ……なかかな獲れたな」

「さすがです! ゆーくん」


 そう言いながら俺の方へと駆けてくるリスティ。

 腰にぶら下げた袋にはそこそこの量の貝類が入っていた。


「そっちも健闘したようじゃないか」

「ええ! ウォー・タイフーンは初めて見ました! とても楽しかったです!」

「そうか……そりゃよかったな」

「ええ! ええ! とてもいい経験です!」

「こちらはリスティが怪我しないかとヒヤヒヤしてましたよ」


 そう言ってリスティの後ろに駆けてきたクリスの腰にぶらさげられた袋はあまり成果が無かったようだ。


「なにを言ってるのです! 私はこう見えてもすでに立派な冒険者ですよ!」

「そんな……まだ冒険なんて数回しか行ってないじゃないですか」

「数ではありません! 質です!」

「はぁ……」


 俺はその会話を聞きつつまーちゃんの方向に顔を向ける。

 まーちゃんも少しは獲れていたようだが「ウニ」の度重なる攻撃に手を常に負傷している状態だった。

 そしてそれを治癒するフェリスは全然と言っていい程成果が無かった。

 まーちゃんとフェリスがこちらの視線に気付いたのか歩いてくる。


「もう二度とごめんよ! こんなクソクエスト!」

「全くなのん! 全然獲れなかったのん!」

「フェリスは仕方ないだろう、治癒魔法を使ってたんだから。まーちゃんから報酬分けてもらいな」

「嫌よ! なんで私の報酬から分けないといけないのよ!」

「回復してもらってただろ! そのせいでフェリスは獲り損ねたんだぞ?」

「知らないわ、そんな事!」

「ッ――、仕方ない。俺の報酬をあげるよフェリス」

「さすがゆーくんなのん! この魔王ダメダメなのん」

「なんですって!」

「それじゃ冒険者組合に帰るか」

「「「「おー」」」」


 その場にいた全員が了承した。




 冒険者組合に帰ってきた俺達を出迎えたのは新鮮な海の幸だった。

 ガストが言うには今回は大漁らしく冒険者への(ねぎら)いの意味を込めて大盤振る舞いらしい。

 リンゴ酒を片手に運ばれてくる海の幸を眺めつつ――


「乾杯!」


 腕を大きく上げる。

 それに呼応し、


「「乾杯!」」

「乾杯なのん」

「うまー!」


 すでにまーちゃんは飲んでいた。


「さて、どれから食べるか……」


 テーブルの真ん中で大皿で置かれた白身の刺身もいいが、目の前に置かれたサザエらしき物の焼いた料理の香ばしい匂いが俺の脳を刺激する。

 それに加え、小さな鍋に入れられた魚と貝殻の甘い匂いも鼻腔をくすぐり涎が条件反射で出てくる始末だ。

 刺身、焼き料理、鍋料理その他諸々(もろもろ)……確かに大盤振る舞いだ。

 どれから手を付けるか……そんな事を迷っていると――


「いただきぃ!」


 大皿に盛られた刺身が半分ほど一気になくなる。


「てめぇ! なにしてんだ!」


 まーちゃんが箸を巧みに使い、一気に刺身を掴み醤油につけ口へと運んでいた。


「うもうもうもも」

「なに言ってるかわかんねぇよ! ぶっとばすぞ!」


 まーちゃんの喉からゴクリという音が聞こえ、口の中がパンパンに膨らんでいたのが一気に胃へと流されていく。


「遅いのが悪いのよ! 早く食べないと!」

「こんの馬鹿が! 追加は料金が発生するんだぞ!」

「知らないわよ! そんなの」


 そう、大盤振る舞いとはいえ追加注文は金額が発生する。

 無料なのは今出されているものだけだ。

 冒険者の数を考えれば当たり前だ。

 それをこいつは……。


「まーちゃん刺身もう食うなよ!」

「ひゃっほう!」


 まーちゃんが刺身へと箸を伸ばすのを俺は見逃さない!

 まーちゃんから伸ばされた箸を俺の箸で捕まえる。


「まーちゃんはもう食うなっつうの!」

「なんでよ! これは私のよ!」

「みんなのだ!」

「ぐぬぬ」


 まーちゃんは箸に力を入れどうしても刺身を食べたいらしい。


「せい!」


 俺は捕まえた箸を折れるように力を誘導する。

 パキンと木の箸が折れ――


「いたぁぁぁ!」


 折れた箸がまーちゃんの目へと直撃する。


「自業自得だ、みんなも刺身食えよ」


 俺は刺身の一切れを醤油につけ口に運ぶ。

 甘い! そしてプリプリしていて新鮮だ。


「これは……うまい! フェリスも食べてみろ」

「わかったのん」


 横にいたフェリスとリスティ、対面のまーちゃんの横に座るクリスも刺身に手を付ける。

 俺ももう一切れと刺身を醤油をつけ口に運ぶ。


「美味しいです! 特にクエストに参加した後となるといつもより美味しく感じます!」

「確かに……これはいけますね」

「うまいのん! うまいのん!」


 次はサザエらしきものを爪楊枝(つまようじ)らしきものでくりぬいて口に運ぶ。

 うまい! 焼いた香ばしい香りに磯の香りがからみついてなんとも言えないおいしさを醸し出す!

 コリコリとした食感も美味しさをより一層高めている。

 フェリスを見るとサザエを口にして苦そうな顔をしていた。

 どうやらフェリスにはまだ早かったようだ。

 刺身を取りフェリスの口元に運んでやる。

 すると、ひな鳥の様にパクリと刺身に食らいつく。


「どうだ?」

「サザエより刺身の方がいいのん」

「そうか。大人になったらサザエも美味しく味わえるようになるから期待しとけ」

「わかったのん」


 リンゴ酒で喉を潤し刺身を食べようと皿を見ると――


「ひゃっはー!」


 まーちゃんが復活し残りの刺身を全て取っていった。


「てんめぇ! 表に出ろ!」

「私の物をどうしようとゆーくんには関係ないじゃない!」

「みんなのだって言っただろ!」

「まぁまぁ、落ち着いて下さい」

「リスティは黙ってろ! こいつはぶん殴らなきゃわかんねぇんだよ!」

「リスティに対してなんだその口の利き方は! 表に出ろ!」


 余計な奴が割り込んできながらも俺はまーちゃんの頭に鉄槌を食らわす。


「いったぁ!」

「うるさい!」

「表に出ろ! 勝負だ!」

「クリスはもういいよ! 仕方ない……すいませーん、刺身もう一皿追加で!」


 クリスを落ち着かせ俺はもう一皿刺身を追加注文する。

 嬉々とした顔でウェイトレスが追加の刺身を運んでくる。

 今日はよくがんばったしこれくらいの贅沢はいいだろう。


「それそれ! みんなたらふく食え! 追加料金は俺が出してやる」

「さすがゆーくん! 太っ腹です!」

「さすがなのん!」

「それではお言葉に甘えさせてもらいます」

「ひゃっはー!」


 またも刺身を一気に取ろうとするまーちゃんの頭に鉄拳を食らわす。


「なにするのよ!」

「お前はもうたらふく食っただろ!」

「まだ足りないわよ!」

「我慢しろよ!」


 そんな会話をしていると突然テーブルの上に画面が浮かびだす。


「なんだ? これ……」

「ひゃっはー!」

「あっ! お前!」


 まーちゃんは急に映し出された画面よりも刺身を優先し口へと運び去った。


「くそっ! なんなんだ! この画面は……」

「テレビなのん?」


 元いた世界の薄型テレビ……にしては枠がない。

 魔法を使った通信と考えた方がしっくりくる。


「フェリス、これは通信魔法かなにかか?」

「通信魔法にしては数が多いのん」


 俺は周囲を見渡す。

 ガストの席や他の席にも映し出されている。

 席を立ち冒険者組合を出る。

 カランという音とともに扉を開け外を見るが、商店街は閉まっていて当然通りがかる人も少ない……にもかかわらず、そこかしこにその画面は映し出されていた。

 冒険者組合の中に戻り元いた席へと戻る。

 当然周囲も祝勝ムードから異様な雰囲気へと変わる。

 それを肌で感じながら嫌な予感を残し自分が座っていた席へと足を進める。

 なにも起こらなければいいが、きっとなにかが起こるだろう。

 こういう時の勘だけは何故かよく当たるのだ……。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

よろしければブクマや最新話の一番下にある評価をしてもらえると原動力になります!

感想も受付中です!(これも最新話の一番下から書けます)

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