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サラマンダーー2

「それで? クエストの内容はなんですか?」


 何もなかったかのようにリスティが俺の右横に座る。

 左横で朝食を頬張っているフェリスの頬をさすりながら俺は淡々と説明する。


「今回はサラマンダーの捕獲だ。まぁ子供のサラマンダーを瓶に入れるだけの簡単な仕事だよ」

「なるほど、確かに運動にはいいですね」

「でもどうせ報酬が低いんでしょ! 却下よ! 却下!」

「一匹一金貨なんだけどなー」


 俺の言葉に反応し、まーちゃんが朝食を食べる手を止める。


「それ本当? ちょっといい値段じゃない! もっと早く言いなさいよ!」

「俺が儲けにもならないクエストを受けると思ったか?」

「それで? いつから行きますか?」

「リスティは朝食は食べたのか?」

「はい、食べてきました。あっ、もちろんクリスもです」

「ならみんなが朝食を食べたら行こうか……ああ、インムちゃんとロレンスは寝てていいよ」

「「そうさせてもらいます」」

「あの……この方達は?」

「ああ、リスティは知らなかったっけ? 今度同居人になったインムちゃんとロレンスだ」

「はぁ、私はリスティ。冒険者です」

「私はクリスだ」

「いや、クリスはロレンスの事知ってるだろ?」

「む?」

「なんでもないです」


 クリスの鋭い眼光が突き刺さって自分が口を滑らせたことに気付く。


「それよりも早く食べて行こうぜ」

「ゆーくん、今日は積極的ですね。何かあったんですか?」

「いやな、リスティよ……俺は家が欲しくて金が要るんだよ」

「家……ですか?」

「ああ、そろそろ部屋も狭くなってきたことだしこのファルス王国で家でも構えようかと……」

「それは! それはいい事です! なんて言う事でしょう、ゆーくん一行がこの国に腰を下ろし落ち着こうとは! これは応援しなければなりませんね」

「お……おぅ」


 「腰を下ろす」とか「落ち着く」とかは考えてなかったな。

 何かあれば違う街に引っ越すつもりだったんだが、結果的にはこのファルス王国に根を下ろし落ち着くとも言えるのか?


「それではお金が貯まるまで私の別宅を貸してあげましょうか?」

「え……まじ?」

「はい、少し狭いですがそれでも三人なら広いと思いますよ」

「リスティ! こんな男にそこまで……」

「クリス! 私とゆーくんは仲間です。仲間に親切にするのは当り前です」

「ですが……」

「クリス、もう決めた事です」

「リスティがそう言うのであれば」

「それで? その屋敷は何処にあるんだ?」

「クエストを終えてから案内しますね」

「ふむ……クエスト後でも遅くはないか……」

「ところで……もう仲間になって結構経つのですがフレンド登録しませんか?」

「フレンド……何?」

「フレンド登録です」


 俺は聞き覚えのない「フレンド登録」なるものに興味を抱く。


「なんなんだ? そのフレンド登録って」

「え? 知らないんですか?」


 かくかくしかじか――


 どうやらリスティの言う事の要点をまとめるとこうだ……。

 勇者免許を互いに見せ合い互いの存在を登録しておくと、いつでも「メッセージ」という電話なるものを勇者免許から使えると……。

 なんていう便利道具! 勇者免許はなんでもありか?


「よし、今すぐやろうか」

「はい!」


 互いに勇者免許を見せ合い登録する。

 すると勇者免許が光を放ち右上にフレンドという項目が小さく表れた。


「凄いな」

「これで登録はできました。いつでも連絡できますね」


 ガスト達ともしといたほうがいいのかもしれない。

 そんな事を思いつつガストが座っている席に足を運ぶ。


「ハハッ、兄ちゃんどうしたんだ?」

「フレンド登録しようぜ!」

「は? いつもここで顔を合わせているんだ。今更いらないだろ?」

「確かに……」


 俺は渋々元いた席に帰ってくる。


「どうかしました?」

「フレンド登録断られたよ。いつもここで会ってるだろって……少し寂しいな」

「ま……まぁ、ガストさん達とはここでいつでも会えますし……クリス、あなたも登録を」

「嫌ですよ、こんな奴とフレンドになるなんて」

「えぇ……」


 ここまで正面きって拒否されるとさすがにへこむな……。


「まーちゃんとフェリスはフレンド登録してくれるよね?」

「ゆーくんとはもうフレンドどころか家族なのん、そんな「メッセージ」なんて使わなくても心で通じ合ってるのん」

「結構無茶言うよな、フェリスは……」

「そうよ! ゆーくんとは心臓を取り換えた私なら念じるだけで意思疎通が――」

「それはできないとおもうよ、まーちゃん。むしろできたら怖い」

「冗談が通じないわね」

「とにかく二人とも免許出して! 早く!」


 俺達は互いの免許を重なり合わせ無事フレンド登録を済ませる。

 その横ではリスティが何やらモジモジとしていた。


「もしかしてリスティもみんなとフレンド登録したいの?」

「あ……お願いしてもいいんでしょうか……」

「だってさ、二人ともしてあげてよ」

「仕方ないわね」

「別にいいのん」


 リスティの顔色が一気に明るくなる。

 そしてピョンピョンと跳ねながらリスティが免許を上に乗せてくる。

 合計四枚の免許カードが机に乗せられる。

 二人は「神話級の勇者と魔王」、一人は「ドラゴン殺し」の異名を持つ幼女、もう一人はこのファルス王国の第一王女……。

 ある意味凄い事だなと思いつつ自分の免許を取り上げフレンド欄を見る。

 そしてそこに記された名前を指で擦るように撫でる。

 トゥルル、トゥルルと音を立てる。

 そしてその相手は……リスティの免許がブルブルと小刻みに震えていた。


「ちょっと待ってくださいね」


 リスティが免許を覗き込むと「出る」と「出ない」が表示されていた。

 リスティが「出る」の所を指で擦る。


「はい、こちらリスティ」

「あ……すいません間違えました」

「ちょっと! 間違えてませんよ!」


 俺はすぐさま「メッセージ」を切る。

 もちろん確認できたからだ。

 プンスカと怒っているリスティを無視し、まーちゃんとフェリスを見渡す。

 どうやら朝食を食べ終えたようだ。


「よし! クエストに行くか! 受付に行って瓶を借りてこようか」


 俺の言葉に待ってましたと言わんばかりにまーちゃんが立ち上がる。


「仕方ないわね! 私達の家のためにお金を稼ぎましょう!」

「それはもう解決したよ?」

「へ?」

「リスティが家を貸してくれるらしい。あとは雑貨代かな」

「なるほど」

「基本的な家具や調理道具も一式揃えてありますのでそこまで必要ないかと……」

「む、なら装備を強化したいからその代金を取りに行くって事でいいかな?」

「装備? ああゆーくん何も持ってないもんね。プークスクスー勇者のくせに剣一本とか!」

「お前がフル装備なのが驚きだよ、セバスに感謝しろよな」

「何言ってるの、セバスは私の執事で当たり前の行動をしただけよ」

「ふぅ……セバス、優秀で実に惜しい男だった……」

「うちがセバスのかわりになるのん!」

「ああ、がんばってくれフェリス……とにかくだ、盾くらいはそろそろ必要かとも思うんだ」

「盾……ですか?」


 キョトンとした顔でリスティが聞き返してくる。


「俺は一応盾持ち片手剣なんだよ、前衛だからな」

「なるほど、身を軽くするために持たない主義かと思いました」

「ブレスとかだと剣じゃ防げないからな」

「なるほど、そうなればゆーくんを前衛として色々な陣形が組めますね」

「ああ、その通りだ。さて――」


 俺は席を立ち上がり腕を大きく上げる。


「サラマンダー討伐いきますか!」

「「はい」」

「おー」

「行くのん」


 様々な同意の声を聞きながら受付嬢の所にサラマンダーの子供を入れる瓶を取りに行く。

 そして街を後にした。

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