36
「ごはんできたよ」
「はぁい」
元気な声で返事をした洋子が、賢治の手を引いた。
「早くはやく! 今日はハンバーグなんだよ」
「おっ! 良いねぇ」
二人は並んで座った。
「ワインを冷やしておいたの」
頷いた賢治が、勝手知ったるとばかりに、ワイングラスを四つ棚から出す。
「洋子ちゃんはぶどうジュースな」
「うん」
「あ、私もそっちにするわ」
「どうした? 調子悪いのか?」
「そうじゃないけれど、なんとなくお酒は良いかなって感じ」
頷いた賢治が、洋子と美弥子のグラスにぶどうジュースを注いだ。
「カンパーイ! 二年生おめでとう」
四人が声を揃えた。
「早く食べて? 中に秘密があるんだよ?」
洋子がワクワクしながら賢治を急かす。
「秘密? あっ! チーズだ!」
「パパもチーズ好き? 洋子も大好きよ」
「え……」
賢治が箸を止めた。
「洋子ちゃん?」
「あのね、今日から賢治くんはパパで、美弥子ちゃんはママって呼ぶの。お母さんはお母さんのままよ」
賢治が目を見開いて和音を見た。
「呼ばせてやってくれない? ほら、この子。呼んだことがないから」
「そりゃ……大歓迎だけれど……」
賢治が今度は美弥子を見た。
美弥子が涙を浮かべながら頷いて見せる。
賢治が洋子を抱きしめた。
「ありがとう……ありがとうね、洋子ちゃん」
「パパ? 泣き虫さん?」
「うん。泣き虫さんになっちゃった」
「よしよししてあげようね」
洋子が賢治の頭を撫でる。
美弥子が和音に顔を向けた。
「ありがとう、和音。賢治も……ごめんね、産んであげられなくて」
賢治が洋子を抱きしめたまま首を横に振る。
「俺は美弥子が元気ならそれで良いんだ。それに、洋子ちゃんが……パパって……」
涙声のまま、賢治がもう一度洋子を抱きしめた。
洋子がくすぐったいと言いながら笑い声を出した。
「さあ、冷めちゃうよ。早く食べようよ」
和音の声に頷きながらも、賢治は洋子を離さない。
「パパ? ハンバーグ食べよう? 洋子、お腹が空いちゃったの」
「ああ、ごめん。そうだね、熱いうちに食べようね」
洋子が頷いた。
真っ赤な目をした二人を交互に見ながら、洋子がハンバーグを頬張った。
「熱いっ!」
「ほらほら、気を付けなきゃ。火傷したら大変だ」
賢治が慌てて洋子の口をナプキンで拭う。
「良いパパだわ」
「ホントね」
和音と美弥子が顔を見合わせて笑った。




