↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
52/84

52話

険しい山々を縫うように歩き続けること数日、目の前に目的地のドワーフの村が姿を現した。

山間部の冷涼な空気の中に、どこか力強い熱気を含んだその村は、一見するとごく普通の穏やかな山里のように見える。だが、村の奥へと足を踏み入れるにつれて、その印象は大きく覆ることになった。何基もの巨大な高炉が立ち並ぶ製鉄所が稼働しており、まだ遠く離れているというのに、肌を焦がすような激しい熱気と、金属を叩きつけるリズミカルな鍛造音が絶え間なく響き渡っている。


「なんじゃ、お前たちは? こんな山奥に、まさか道に迷ってでもきたのか?」


ゴツゴツとした手で大きなハンマーを担いだ、いかにも頑丈そうな体格のドワーフの男が、怪訝そうな顔をしながら声をかけてきた。


「突然すみません。実は旅で使う自分に合った武器を探していまして……この村に素晴らしい職人さんがいると聞いてやってきたんです」


シンが丁寧な物腰で頭を下げると、ドワーフの男はふんと鼻を鳴らし、あごで村の奥をしゃくってみせた。


「ふーむ、武器を探しにきたのか。なら、あそこの奥にある古びた一軒家に行くといいぞ」


男が指し示した先には、他の工房とは違い、ひっそりと佇む古びた小さな家があった。


「あそこには、この村でも随一の腕を持つ凄腕の名工が住んでおる。ただ、とにかく頑固者でね、自分が気に入った相手じゃないと、どんなに金を積まれても絶対に武器を売らん男なのだよ」


「頑固ね……」


その説明を聞いたセレネは、誰にも聞こえないほどの小さな声でぽつりと呟き、やれやれといった風にため息をついた。だが、シンはむしろその言葉に目を輝かせ、早く行ってみましょうと言わんばかりにワクワクした視線をセレネに向ける。

その少年のような期待に満ちたシンの様子を見て、セレネは思わずくすりと上品な笑みをこぼした。


「本当に楽しそうね。まだ買えるかも分からないのに…、分かったわよ、行くだけ行ってみましょう」


セレネが呆れたように微笑みながらうなずくと、シンは嬉しそうに頷き、その古びた一軒家へと足を進めた。


ギイィ……と、年季の入った木製のドアを押し開けると、店内にはむせ返るような鉄と油の匂いが立ち込めていた。壁や棚には、短剣から槍、無骨な大剣に至るまで、多種多様な武器が無造作に、しかしどこか誇らしげに並べられている。


「すごい数ですね……。どれも丁寧に作られているのが分かります」


シンはきょろきょろと目を巡らせながら店内に足を踏み入れ、店主の姿を探した。


「おい、勝手に触るんじゃないぞ」


低い、地底から響くようなしわがれた声とともに、店の奥に続くカーテンの向こうから、一人の老ドワーフが姿を現した。深い皺の刻まれた顔に、鋭い眼光。ただ者ではない職人の雰囲気が全身から漂っている。

シンは背筋を伸ばし、丁寧に頭を下げた。


「突然お邪魔してすみません。自分たちは旅の途中で、このお店の噂を聞きつけてやってきました。並んでいる武器を、少し見させてもらってもよろしいでしょうか?」


丁寧すぎるほどのシンの挨拶に、老ドワーフはふんと顔を背け、ぶっきらぼうに吐き捨てた。


「勝手に見るだけなら勝手だ。だが、どうせ冷やかしだろ。俺の打った武器は、お前のようなひよっこに扱える代物じゃないがな」


その露骨に不親切な態度に、セレネはわずかに眉をひそめ、すっと顔をしかめた。しかし、シンはまったく気にした様子もなく、「ありがとうございます」と穏やかに微笑むと、気を取り直して並べられた様々な武器の数々へと歩み寄り、一振り一振りの状態を真剣なまなざしで見つめ始めたのだった。

読んでいただきありがとうございます!

この作品が「面白い」「続きが気になる」と思った方はぜひ評価をいただけますと執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。