第99話 何もいない場所
翌日。
村の安全が確認されたあと、学院の調査隊は魔物が来た方向を調べることになった。
今回は無断の追跡ではない。
複数班と担任たちが同行し、撤退条件も決められている。
森の西側へ進むほど、魔物の痕跡が増えた。
足跡。
折れた枝。
血の跡。
しかし、襲った側の痕跡は見つからない。
「大型魔物が追い立てたなら、そいつの足跡もあるはずだ」
ガルドが地面を見る。
「空を飛ぶ魔物か?」
セイルが上を見る。
「枝が折れてない。上から追った感じもしない」
さらに奥へ進む。
やがて、足跡が不自然に分かれ始めた。
すべてが、中央の一帯を避けている。
円を描くように。
「ここ」
ミナが立ち止まった。
「魔力が切れてる」
レオンには何も見えない。
地面も木々も普通だった。
焦げ跡も、魔法陣も、大型魔物の巣もない。
ノアが携帯用測定器を設置する。
「数値は……正常」
「でも見える」
ミナは中央へ近づかず、周囲を歩いた。
「ずっと薄いんじゃない。流れて、切れて、また流れてる」
「間隔は?」
レオンが尋ねる。
ミナが数える。
「だいたい同じ」
魔力が一定間隔で途切れている。
自然に薄い場所とは違う。
レオンはゼロスレッドを複数方向へ伸ばした。
木。
地面。
岩。
触れた感触に異常はない。
線では、範囲全体を一度に調べられない。
「何もないのか?」
ガルドが尋ねる。
「見える範囲には」
レオンは答えた。
ミナが首を振る。
「でも、魔力だけはおかしい」
担任が周囲を確認する。
「深入りしない。位置と範囲を測れ」
レオンたちは異常が見える境界を歩き、地図へ印を付けていく。
ほぼ一定の間隔で、魔力の流れが途切れている。
途中、レオンは地下施設で見た魔力装置を思い出した。
装置内部には、魔力を流す場所と止める場所が明確に分かれていた。
同じものだとは言えない。
だが、自然に乱れているというより、区切られているように見える。
「人工的に見える」
レオンが言う。
担任は否定も肯定もしなかった。
「そう考えた理由も書け」
レオンは記録した。
一定の間隔。
一定の範囲。
測定器には異常なし。
ミナの視認では、魔力流が周期的に断絶。
その中央には、何もなかった。
少なくとも、目に見えるものは。
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