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第97話 ゼロピアス

村へ入り込んだ魔物を外へ誘導し、避難は続いていた。

群れの大部分は東側へ流れている。


残った問題は1体だった。


大型の牙猪が荷車へ身体をぶつけ、車輪を壊した。

その向こうには、逃げ遅れた親子がいる。


「ガルド!」


「間に合わねえ!」


距離がある。

ゼロスレッドで引いても、止めきれない。


レオンは走った。


右手首には、先ほどの失敗の痛みが残っている。

それでも、失敗した理由は分かっていた。


魔力を押し込もうとしていた。

広がった力を、そのまま相手へぶつけていた。


必要なのは押すことではない。


一点に集めたまま、触れた瞬間に内部へ通す。


右手の人差し指と中指へ魔力を集める。

手のひらへ逃げようとする魔力を抑える。


熟練加速アクセラレートが、先ほどまでの失敗を繰り返さないよう修正を早めていく。


それでも完全ではない。

指先が痺れる。


牙猪が親子へ迫る。


レオンはゼロステップで踏み込んだ。

足裏で受けた力を、そのまま前へつなげる。


左手のゼロスレッドを牙へ巻きつけ、一瞬だけ頭を横へずらす。


右肩が開いた。


狙うのは、ミナが先ほど見つけた位置。

肩と前脚の境目。


指先が触れる。


「――ゼロピアス!」


圧縮した無属性魔力を撃ち込んだ。


鈍い感触のあと、指先が一気に沈む。

魔力が皮膚を広く破壊するのではなく、細い一点を通って内部へ抜けた。


牙猪の前脚が崩れた。


血が傷口から流れ、巨体が地面へ倒れる。

勢いのまま数メートル滑ったが、親子までは届かなかった。


レオンも片膝をついた。

右手首から肘まで、痺れるような痛みが走る。


「レオン!」


ユリアが駆け寄る。


「動く。でも、もう使わない」


牙猪は生きていた。

前脚を動かそうとするが、力が入らない。

ガルドが盾を使って進路を変え、セイルとともに村の外へ追い出した。


戦闘が落ち着いたあと、担任がレオンの右腕を確認する。


「折れてはいない」


「反動です」


「分かっているなら繰り返すな」


「はい」


ミナが傷を負った牙猪の後ろ姿を見る。


「さっきの、何?」


「一点だけに魔力を集めて、中へ通した」


レオンは痛む右手を見た。


「ゼロエッジが切るなら、こっちは貫く」


初めて成功した。

だが、右腕は1回で限界に近い。


使えることと、使い続けられることは違う。


無属性魔法ゼロピアス


新しい魔法は完成した。


まだ、実戦で自由に使えるほどではなかった。

26/08/30~26/08/31で合計20話アップします。

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